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49話 もっふもふとしたもふもふな日々 12「儲け話は厄介話」

ドワーフ達が来て一気に村が活気づいた!


・・・ということは特にない。


ただ、騒々しくはなった。


「どいつじゃ!こんな木の根っこから持って来たんは!?」

と一人の建築のためのドワーフが怒鳴る。


「俺、達だ。何か、問題か。木、持って来た」

とジャイアントロード


「根っこから持って来てどうするんじゃ、確かに加工はするが、面倒が増えるわ!!」


「だが、斧は合わん。木、抜いた方が早い」


「えぇい!じゃあジャイアントは半分こっちで手伝え、半分はオーガが切ったのを持ってくる係じゃ!」


「了解、した」


という一幕もあれば、


「馬鹿もんが!鉋もできんでどうする、薄く均一に、やってみろ!この辺りは良い感じじゃ、この時の力加減を覚えんかい!」

「はい、師匠!」


「うむ、これなら使ってもかまうまい、ようできたの、人間!」

「っしゃあ!あざっす!師匠!!」


という徒弟グループもいる。


とにかくドワーフは声がでかく、態度がでかい。

また、向こうの森ではバキバキ木が倒れる音とたまに咆哮が聞こえる。


しかし、もうそんなのに動じる村人はいない。

たまには手伝いに来る男達や子供達もいるし、差し入れを持ってくるおばさん達もいる。

大工を目指してなくても、多少の手伝い位はできるのだ。

この時代、日曜大工どころか日々大工もしているお父さんと子供達。

大工を本業でやっている者には及ばないが。


そんな風に村の日常に加わった教会建設。



「え゛、大理石をこんなに?しかも塊で?・・・ありますかねぇ?後は色つきのガラスたくさん、たくさんって何ですか、たくさんって。大理石は各寸法まで書いておいて」

とリッチロードがぶつぶつ言いつつ、領主の館へ向かう。

とりあえず、一口噛ませておけば何かあった時に助けになるだろうと下心と、自分が揃えるのが面倒という気持ちからである。

ジャイアントロードも連れて来た。

日々の肉と酒をもらいに来るのは彼に任せるためだ。

また、領地運営の相談がくるかもと憂鬱になりながらも、ジャイアントロードを外で待たせて領主の館へ。


「すみませーん」


「おぉ、リッチロード殿ですか、どうぞお入りください。・・・そちらの巨大な方は?」

と手馴れた門番


「あぁ、昔は巨人族と呼ばれていた、ジャイアントですよ。その長ですからジャイアントロードですね」


「よろしく、頼む」

とジャイアントロードが屈伸でもするかのように膝を曲げて言う。

それでも見下ろしているのにはかわりないが。


「え、えぇ、よろしくお願いします。館には入れませんねぇ、物理的に」


「彼は外で待っていてもらいますよ、前に牛とか酒とかを買うという話をしていまして、持ち運び要員として来てもらいました。これから毎日彼が取りに来ますから、お願いしますね」


「あぁ、公爵様からお話はうかがってますよ、じゃあそちらの方は今揃えさせましょう」


「お願いします、私はガイル殿と商談をしてきます」


「行ってらっしゃいませ」

と送り出す門番。


その後少しして、ジャイアントロードに席を外すことを伝えて、同僚に豚や牛や酒の引取り人が来たから準備をさせるように各方面に伝えてくれるように頼む。

むやみに大声は出さない、それが公爵家の門番なのだ。


「ガイル殿?リッチロードです。入ってよろしいでしょうか?」

とノックしてから告げる。


「ん?どうぞ入ってくれ」

と答える声。


「どうした?あぁ、牛とかなら揃えてあるぞ」

と筆を持ってだるそうに顔を上げるガイル。

もう客として出迎えているというより、友人を出迎えているという風だ。


「・・・公爵たる者、人を出迎えるのにそれはいかがなものです?」


「なに、友人なら問題ない、そうだろ?」


「そうですね、仰る通りです。そんな友人が儲け話と厄介な話を持ってきましたが、聞く気力はありますか?」


「儲けのためなら気力もでよう、少し待っていてくれ、顔を洗ってくる。呆けた頭だと儲けのつもりが赤字になるかもしれんからな、特に骸骨の友人との儲け話では」

と笑って出て行くガイル。


「・・・友人ですか、光栄ですね。しかし、公爵たる者、友人にも資料は見せないべきですよ。後でお父上にご報告ですね」

と独りごちる。



「さて、どんな話しだ?聞くだけならタダだろう?」


「あなたでなければ聞くのにも金をとる話ですよ。今建設中の教会をドワーフが作っているのですが・・・」


「あぁ、アレか。良いよなぁ、ドワーフ作の教会。王都の教会では何か怒らせたらしくてやってくれなかったって話だぞ」


「え?そうなんですか?彼等そんなこと言ってませんでしたよ、それ、長のところまで報告いってませんね」


「おおぅ、本当かよ」


「怒らせた理由に心当たりは?」


「心当たりというか、そのものずばり、造る時は断酒して身を清めて、清廉な教会を造ってほしいと頼んだらいきなり怒鳴られて叩き出されたと。凄い剣幕だったって聞いてるぜ」


「・・・長のところに報告がいかないのも納得です、長も同じ答えを出すだろうくらいにドワーフにとってはふざけたリクエストですから。長なら侮辱されたとでも言って斧を持ち出すレベルですよ。断酒って、ドワーフに死にながら教会を作れって言っているのに等しいですよ。彼等は酒のために生きると言って憚らない者も多い種族ですよ?それをまた・・・」


「酒好きは知っていたが、そんなにか。今度グレンの叔父にも伝えておこう。酒で釣れって」


「量によっては簡単に釣れますよ、彼等は造るのは趣味というか本能に近いところにあるから苦ではないんです、あとはご飯と酒があれば話も通じやすい」


「なんというか、扱いやすいのかにくいのか」


「ただ、怒鳴り声で話すので近隣からは苦情がでるかもですね、王都だと」


「扱いにくい部類と覚えておこう、話を遮って悪かった、それでドワーフが?」


「こんな注文を出して来ましてね」

と紙を見せる。


「大理石が・・・うわ。色つきのガラス・・・大量、具体的には?あとは釘と何でも良いから鉄をたくさん」


「ね?厄介な儲け話でしょう?」


「厄介な話と儲け話と聞いたんだがな、混ざっているならそう言えよ。個々に対応する方が楽なんだよ」


「おや、言い間違いましたね、申し訳ありません」


「絶対に思ってないだろ、どうせ混ざっていると話を聞かずに追い返されるかもと思ったんだろ。あぁ、面倒だ、面倒だが、料金は弾んでくれるな?」


「えぇ、大理石はたぶん神の像を彫刻するためでしょうから、最上級品で。他のも上質なものでお願いします。色つきのガラスは割れていても良いということですが、いっそ割れていないのをたくさんの種類買ったほうが楽でしょう。鉄も元は武具とかでなく、もう純粋に鉄で、加工前の。釘も腕の良いのから仕入れてください」


「まぁ、そうやって指定してくれると楽だな。それで、それぞれ大量というのは?」


「そうですね、最大でこれくらいですかね?市場を混乱させないレベルがこういうのは分かりにくくて」


「まぁ市場の混乱は気にする必要はないだろう、専門的過ぎる。で、いつまでだ?」


「早ければ早いほど多く支払いますよ、最大でプラチナ硬貨1枚でどうです?」


「・・・足りないな、金貨もつけろ。大理石が困難だ。」


「じゃあ、それで。リミットは2週間で」


「お前、最大料金払う気ねぇじゃねぇか」


「いえ?公爵家たる者、ワイバーンとテイマー位いるでしょう?彼等を動かせば済む話でしょう」


「・・・あいつ等にも仕事は詰まってんだよ、リミットまでに用意するから「今」満額分置いていけ、でなければ釣りあわん」


「はい、お確かめを」

とプラチナ硬貨を2枚置く


「やっぱりか。最初から前払いで頼むつもりだったな、悪党め。引き受けたよ、この野郎。前払いがどれだけ価値があるか知ってる村人なんざ、どれだけいるか。しかも色つけて出すのがいやらしい。また今度仕事手伝うのも条件な」


「色つけたのに更に条件とかどうなんです?面倒なんで、どっかに橋を渡せとかにしてくださいよ、今なら腕の良い大工達がいるんで」


「それも良いな、1ヶ月はいるんだよな」


「予定では」


「じゃあ、考えとく、厄介な儲け話ありがとさん。ったく確かに普通の商人には無理な注文だろうさ」


「それでは、この辺で。あぁ、これからはジャイアントロードが牛とか酒を取りに来ますから皆にも伝えておいてください。それでは失礼しました、あまり無理をしませんように。今日はお父上に怒られないと良いですね」

と扉を閉めるリッチロード。


「おい!?なんで最後の台詞が出てくるんだ、おい!???」


彼等も仲良しになっているのである。

ガイルにも人間の友はたくさんいる。

しかし、その友人達でさえ、やはり身分差などがどうしても出てくるのが貴族社会である。


そんなガイルにとっては種族が違うので利害をそんなに気にしなくても良く、身分差も気にしないで良く、博識で知性があり、金払いも良いリッチロードはもう親友レベルである。

話す程に素が出てくる。そしてそれがまた心地良い。


しかし、ガイルは夕食時に父親に書類の扱いで怒られた。

親友の伝言の意味を悟ると同時に、誰が父に話したかまで悟る。

親友はたまに成長を促すかのごとく爆弾を置いていくのだ。



そんな教育担当のリッチロードは村に戻ってドワーフにあてがった家をノックもせずに開けた、

魔物同士はそんなに気にしないのである。

ただし、そこには村で唯一の鍛冶屋がいた。

「・・・失礼しました、ノックもせず。ドワーフに会いに来たのですが」


「あいつ等なら俺の家に今後教会完成まで住むってよ、窯だなんだ使うんだと」


「・・・はぃ?・・・・・・・・・失礼しました、ドワーフにちょっと言って聞かせるので。えぇ、これでも説教は得意なんですよ、魂を引っ張り出して直接するんです、心に響くらしいですよ、比喩ではなく」

首をかくんと横に倒しながら「ふふふっ」と笑う骸骨さん。


「あぁ、良い良い。教会のためならかまわねぇよ。俺一人じゃ直せねぇ窯も改良してくれんだとよ。最近、使い勝手が悪かったからな、まぁ汚さなきゃ構わないさ。俺もなんだかんだ色んな道具を使うんだ、仕事代わりに手伝いにでも行くさ。それに別にそれまで入るなって言われたわけでもなし、飯や金を盗んだりもしないだろ?家壊したりとかも」


「えぇ、酒を飲まなければ」


「・・・酒を飲むときは森で飲めってだけキツく言っといてくれ」


「分かりました、キツく言っておきます、えぇキツく、絶対に、その約束が破られることはないでしょう」


その後、ドワーフ達はしばらくリッチロードの前では大人しくなったという。

ただし、夜はオーガとジャイアントとドワーフの宴会で森はうるさくなった。

奥に行けば近隣被害がないのが森の良いところであろうか。

村や領主の館にも聞こえるほどだったが、騒音とまではいかなかった。


あるドワーフが昼に棟梁に言っていた。

「だから、木は音を吸収すんだよ、静かで厳か、それが教会だろうが!」

木の吸音性は流石であると実証されたわけである。


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