48話 もっふもふとしたもふもふな日々 11「建築と彫刻」
「流石は龍皇、ちゃんと揃えられましたね」
と頷くリッチロード。
「もちろんだ、我を誰だと思っておる」
「龍族の長、世界の調停者、始まりの生物、龍皇殿ですよ。じゃあ、ここからは私が説明するので龍皇はトールのところで遊んでくるなりしていて良いですよ」
「・・・前から思っていたが、お主、段々と我への扱いがぞんざいになっておらんか?昔は殿をつけておったよなぁ」
「さぁ、気のせいでしょう、さぁ工事の邪魔です、行った行った」
と追い出しにかかるリッチロードと何か腑に落ちない龍皇。
あんな親馬鹿なところばっかり見せていれば、かつては感じていた多少の威厳も消えるのだ。
そして村や王都での登場で威厳株は下がる一方である。
ただ、あの洞窟の日々よりも密度の濃い生活で気の置けない仲によりなれたと感じているところもある。
自分から言うつもりはないが。
「さて、皆さん、まずは3匹に聞きましょう。あなた方が来て群れは大丈夫ですか?」
オーガ10匹、ジャイアント10匹、ドワーフ10匹
それぞれに長を含む。
それぞれに長を含む。
「大丈夫だ、そこまで柔じゃない」
とオーガロード
「そうだ、柔じゃない」
とジャイアントロード
「知るか、酒がもらえるならわしが来て当然じゃ」
とドワーフロード
「まぁ、良いならこちらも何も言いませんが。今日集まってもらったのは、将来愛し子が文字の読み書きを習うことになる場所であり、唯一神イネガルを祀る場所でもあります。皆さんの本気を見せてください。特にドワーフの皆さん、信頼していますよ?オーガロードはオーガ達の統率を、ジャイアントロードはジャイアントの統率を。皆さんには木の伐採や工事の時に木を支えてもらったりします。木材を持っている時や、刃物を持っている時は近くの人間にぶつからないように細心の注意を払ってください」
「当然じゃ、そんな大切な所をわし等以外の誰が担えるというのか、本気でやるわ」
とドワーフロードも他のドワーフも合わせたように鼻息を鳴らす。
「前の祭りの時のようにやれば良いのだな」
とオーガロード
「うむ、見てたから、大丈夫」
とジャイアントロード
「さて、建物ですが基本はお任せします。祈るための部屋、定員は・・・村人分より多めで。後はそこで暮らす神父の部屋を4つもあれば大丈夫でしょう。そして大きめの部屋、同じく村人が全員入っても余裕な感じで。大きめの部屋は赤子が動く練習に使うので防音でささくれ等ないように細心の注意を払って、祈りの部屋も同じく防音で。どれが防音に適しているかなど木材の種類の案内にはドライアドをつけましょう」
「他は?建てる場所は?」
とドワーフロード
「できる限り他の家々の近くで、ん~、あの辺の角っことかでどう思います?」
「建てる面積が多少足りないが、祈りの場も神父とやらの部屋も2階建てでも良いか?」
「えぇ。後はお任せしますよ。私最近の教会見たことないですから。ドワーフロード殿はありますか?」
「うむ、王都に酒を買いに行く時にな。ただ、一体感がなかったわ。金を投じました、これで良いだろ?みたいに感じたわ。わしが本当の教会を作ってやろう」
「心強い、じゃあ木を切る所も地図を渡したので大丈夫ですね。何かあれば呼んでください。後、人間の大工達もドワーフの技量を盗みたいとのことで、学ばせてあげてください」
「「「「「「お願いします!!」」」」」
「構わんが、わしが認めるまではお主等の作品は置かせんからの、覚悟せい」
「「「「「はい!」」」」」
「どれ位でできますかね?」
「ちょっと本気で行くでな、1ヶ月はもらおう」
「え、そんなに!?」
とちょっと慌てるリッチロード。
「うむ、ところどころの細工やイネガル神の彫刻に時間がかかる。こればかりはわしでないといかん」
と真剣な目つきのドワーフロード。
「それを言われると納得しないわけにはいきませんね、材料で足りないのがあれば買ってきますから言ってください、イネガル神の彫刻も木造でやるわけではないでしょうから」
「やっても良いがな、木は時間の経過で深みがでる。しかし、保管が難しいからの。他のでいくわ、後でリストを作る、それを買ってきてもらいたい」
「分かりました、では皆さん、よろしくお願いします。1時間毎に休憩を挟んでくださいね、人間がいますから」
「おう!忘れてたわ!よし人間達は基本建てる場所辺りで待機じゃ。木はオーガ達が持ってくる。鉋がけから見てやろう。ビシバシいくでな、根性見せろ!」
「「「「「応!」」」」」
「と、これで教会は良いとして、公爵家に行きますか」
と、考えながら歩くリッチロード。
「あ、誕生祝いは必ずもらえますね、公爵と王達ですし。まずは父君や母君の意見も聞いてからにしましょう。プレゼントはリクエストがあった方が先方も楽ですし、父君も楽でしょう。そうすると、他の魔物の群れにもそうした方が良いですかね・・・」
気が利く骸骨殿である。
その後、夫妻からリクエストを聞き、公爵家へ赴いたリッチロード。
ちなみに、本当に顔パスで通されたのには驚いた。
さらには領地経営についての相談をされたのには呆れた。
余談だが、その受け答えで更に骸骨は株を上げていく。
「おうおう、皆よく働くねぇ、お姉さんはお日様に負けちゃったよぉ」
と元の九尾の姿で太陽の下、縦に伸びている狐が一匹。両手足もぴんと伸ばしている。
「おや、妖狐さん、どうしたんだい?」
と通りすがりのおばさんが尋ねるも
「見ての通りの日向ぼっこさぁ~、良い天気じゃないかぁ」
と目を細める狐さん。
神秘的な要素など皆無である。
「良いねぇ、今度私もしようかねぇ」
「するがいいさ、人間なら森の先の湖近くが良いよ、寝っ転がっても草が受け止めてくれるし、湖が光を反射して綺麗だよ」
「おや、良い事を聞いたよ、今度旦那と子供とで行くとしようかね。御礼にリンゴなんかいかがかね?」
「良いねぇ、あ~ん」
と口を怠惰に開ける狐。
「ほれ、いくっよ」
と投げるおばさん
タイミングよく、もしゃり、もしゃり。
「おぉ、良いねぇ水がなんとも、新鮮だぁ、幸せだぁ」
「あっははは、じゃあね」
「あい、じゃあ」
とのんびりしていると、何かが背中にぼふっと来た。
「なんだい、なんだい?」
「よー、よー!」
「トールかい、自由に遊ぶがいいさ、落ちないように見張りは任せたよ、フェンリルさん」
「むぅ、我の上でないのが納得いかんが、こう金色の毛皮の上で幸せそうなトールを見るのも良いものである」
「そうかい、そうかい、良かったねぇ」
「だらけ過ぎだぞお主、そういえば最初に来たときは銀色の毛であったような?なんぞ変身でもしておるのか?」
「いやぁ、肩肘張らなくても良くて、敵もいない。ご飯は出てくるから狩りの心配はない、太陽がさんさん。堕落しちゃうよぉ、フェンリルさんも横になったら分かるって。毛並みはねぇ、元は雪が降るところにいたから保護色だっただけだよ、今はなんだろ?保護色じゃないから、これが地なのかねぇ」
「我が横になったらトールを見守れんからな、また今度そうしよう。なるほど、保護色だったのか、あれは」
くぁあ~と大きなあくびをする妖狐。
「あぁ、悪かった悪かった、寝るが良い、おやすみ」
「悪いねぇ、これも・・太・・よう・・が・・・ぐぅ」
「よー、よー!」
と毛皮の上をハイハイで行ったり来たり、たくさんの尻尾に包まれたりと、むふ~!と満足げな顔しているトール。
「あ、妖狐さんが寝てる」
「柔らかそう」
「俺もちょっとだけ」
と集まり出す子供達。
慌てたのがなんと、トール。
「よー!よー!よーー!トール!」
独占欲まで出てきたらしいが、相手はもう妖狐のわき腹辺りを枕に寝入っている。
「よー!トール!よー!トール!」
フェンリルが尻尾で涙を拭いてやる。
「皆にもたまには、な。分けてやるべきだぞ、そらコチョコチョ」
と尻尾でくすぐると途端に笑顔できゃっきゃ騒ぎ出すトール。
ちょろい主人公である。




