41話 もっふもふとしたもふもふな日々 4「魔王なお話」
さて、フェンリル達が変身するようになってから、
家に居つくことも多くなってきた。
どれくらいかというと週の内5日は家の中で過ごしている。
最初は着替えなどに気恥ずかしさもあったイリスも、もはや軽くペット感覚になっている。
それくらい居ついている。
フェンリルに抱きつきながら起きているトールに、今日も物語を聞かせてあげるアーノルド
「~ということで魔王は倒され、世界は平和になりました。皆は勇者をすごいすごいと褒めました、やがて勇者は皆を守るために王様になったのです。そして、王国はずっと、ず~っと平和であったとさ、めでたしめでたし」
トールに尻尾を掴まれている龍皇が口を出す。
「父君よ、よくするその話は有名なのか?」
「有名ですよ、子供に聞かせる物語としては一番じゃないかなぁ?」
「なんと、あやつがそんなに有名になっておったとはのぅ」
「え、知り合いで?」
「うむ、魔王の方だな。あやつはサモナーでな。しかし、特殊な種族しか呼べなかったのよ。それが話にも出てきた悪魔だな。悪魔だけならば何百だろうと呼べた。どうもそれが原因で村で迫害されておったようでの、龍を倒せば皆が認めるからと挑んできたことがあった。まぁ、軽く返り討ちにしてやったがの」
と笑う龍皇
「それで話を聞けばそんな理由よ。であれば、そんな村を飛び出せば良い、悪魔をそれだけ大群で呼べる人間などそうはいないのだから自分で集落を切り開くが良いと言った覚えがあるが、まさか国を乗っ取ろうとはのぅ、まぁあるものを使うほうが便利ではあるか」
うんうんと頷く龍皇
言い聞かせの物語の悪役を奮い立たせた張本人ということだ。
しかし、それを聞くと一番悪いのは村人じゃね?とも思う。
トールには力の使い方をよく教えこもうと決心するアーノルド。
「いないいない、、、ばぁ~」とアーノルドがあやすとキャッキャッと笑うトール
試しに龍皇もしてみた
「いないいない、、、ばぁ~」キャッキャッと笑うトール
トールの下敷きになっているフェンリルは笑うトールの顔が見れなくて悔しそうだ。
「しかし、こんなので笑うとはのぅ、何故だろうな」
「目の前からあるものが突然消え、また突然表れるように見えるんじゃないですか?小さい子は絵を描くときに人の顔で目や口などのパーツを大きく描くから、人間のことをそこで認識しているという学説を聞いたことがあります。目や口が隠れる=その人がいなくなるなんですよ、そしてまた現れる。隠れた時にどきどきして、現れたときにやっぱりいたぁと安心する、そんな感じじゃないですかね」
とリッチロード
「「へぇ~」」
感心する一匹と一人
「しかし、トールはちょっと成長が早いようですね、「祝福と加護」の為でしょうが。父君はもっと母君とトールの成長の一瞬一瞬を見た方が良いように思いますね」
「あと、皆さんに伝えておきますが、赤子は何でも口に入れようとします。フェンリルや龍皇の尾も入れられそうになったでしょう?口に入れてはダメな釘とか木片とかには気をつけてくださいよ?
あとうつ伏せで寝るのも窒息死の原因です。よくよく見るようにしてください。
また、あと少しでハイハイできるようになりますが、初めての時はベビーベッドから落ちないように龍皇やフェンリル殿は特に気をつけて見て下さい!
ハイハイできるようになったら家の中を大改造すると母君も仰っておりました、皆も手伝ってくださいね!」
「「「はい!」」」
「お主、詳しいのぅ?」
「村の人や他のリッチキング達にも聞きまして、特に怪我や死につながることは根掘り葉掘りと聞き出しましたよ、後はボール遊びも良いらしいですね、ということで、はいどうぞ」
とアーノルドに木の皮で編まれた芯のないボールが渡された。
「ドライアド殿に後でお礼を、幾つか作ってもらいました、それをトール殿にやさしく投げてみてください」
「こ、こうか?」
とふんわり投げる。
「う?」
とトールのお腹にボールが落ちた。
トールは眺めて、一生懸命触ったあと、口に入れてみようとするが入らない。
「熱湯で消毒してありますから安心してください」
ナイスプレーなリッチロード
トールがボールを投げた。
龍皇が地面に落ちる前に掴み、トールに返す。
トールがボールを投げた。
龍皇が地面に落ちる前に掴み、トールに返す。
トールがボールを投げた。
龍皇が地面に落ちる前に掴み、トールに返す。
トールがボールを投げた。
龍皇が地面に落ちる前に掴み、トールに返す。
トールがボールを投げた。
龍皇が地面に落ちる前に掴み、トールに返す。
トールが疲れた頃を見計らい、ボールを預かる。
「ほら、意外と良い遊びになりました。フェンリル殿は控えてくださいね、唾液がついたのを口に入れられると困るので」
「そんなっ!!??」
この世の終わりのような表情をするフェンリル。
次は我の番と楽しみにしていたのに。
目の前でボールが行き来するのに、参加はダメとか拷問か。
悲しみのあまりトールを舐めまくる。
トールは役得か、きゃっきゃっと笑っている。
「トールも汗をかいたでしょうし、お風呂に入れてきてはいかがですか?」
「あぁ、ありがとう。そうするよ、何もないがゆっくりしていってくれ」
とアーノルドはトールを連れて行く。
心なしかフェンリルから離されたが悲しいのか、トールの表情に悲哀が読み取れる・・・気がする。
アーノルド達から言われ、「尊父」「母堂」の呼び方は止めた。
曰く、自分達はそんな大層な者ではないからと。
また、龍皇達もアーノルド達に「様」などいらない、もっと村人に接するように接して欲しいと、
一種の協定ができている。
お互いトールが大きくなった時のことを考えていた。
トールが大きくなった時に「尊父」、「母堂」などと呼ばれていたら疑問に思われる。
そこで自分が特別な者だと変に思われても困る。
龍皇達もトールが大きくなった時に、自分の両親が「様」や「殿」を付けて呼んでいたら、変な関係性ができあがりそうだ、と。
ただ、この協定ができてから、より夫婦と魔物間で親密になったのは間違いない。
閑話休題
フェンリルは久しくトールを乗っけていないので、外に出て元の姿に戻ると丸くなった。
そこを狙ったかのように子供達が駆けてくる。
フェンリルさんだ~
今日は大きい~
ふかふかだ~
良い匂い~
お日様の匂い~
「おぉ。童達か、もう今日の仕事は終えたのか?」
うん!
なんか、だんだん早くできるようになってきた!
慣れたのかな!
皆もできるようになってきたの!
「成長しとるんじゃな、ほれどのポーズが良い?」
横になって~
横~
横!
お腹!
もふもふ!
「頑張った褒美じゃ、しばらく遊んでいくがいい」
と横になるフェンリル
やった~っとダイブしていく子供達。
何人かはそのまま即寝落ちコース行き。
「何故、我のところには来ないのだと思う?」
同じく元の大きさに戻った龍皇。
だが、子供達の中でもわんぱくな子が「登らせてください!」と数人、登りに来ただけである。
数が違う。
頭の上まで登れた子は
ほわぁああ!!
と叫んでいる。
龍の目線は小さい子にとっては大冒険のゴールにふさわしい。
「そりゃあ、毛並みでしょ?今度私も子供達を集めて元の姿になろうかなぁ」
とすれ違い様に妖狐がズバリと正解を突き刺していく。
「変身で・・・?」
「あなたの顔でもふもふですか?・・・・・・おやめなさい、泣く子がでます。しかし、段々と早くできるようになってきたですか、「祝福と加護」の成果ですかね」
とリッチロード
「まぁ、男の子には人気なんですから、トールからも好かれますよ」
「で、あれば良いが。既にトールはフェンリルに取られている気がしてならん」
「巻き返して見せるくらいのことを言ってのけなさいな、龍皇たる者がうじうじと」
と厳しい友であった。
あ、ランキングタブなるものを設置してみました!
よろしければ是非活用してみてください♪




