表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/219

35話 生まれながらにして世界を震撼(世界は踊る2)「予想外と子育て」

生後まもないトールの身体を借りた者が言う。

『身体を借りているんだよ、一番話すことができない者が話した方が信憑性が高いでしょう?魔物は流石に分かっているね、では人間達よ自己紹介といこう。僕は神様、イネガルだよ』


人間達はどう反応すれば良いのか分からない。

とりあえず跪く者。

半信半疑の者。

信じていない者。

信じる者。

そんな有様だ。


『さて、このまま話しても良いけれど、役者が足らないね。はい!』

トールが手を叩くと、目の空いているスペースにおっさん達が出現した。


王冠と豪奢な服にマントで一目で王と分かる者。

目が据わりながらもペンを持っている、明らかに貴族と分かる服を着た者。

朗らかそうな表情で誰かと話していたような、貴族と分かる服を着た者。

バスローブのみを羽織っている変態じみた者。


基本的には貴族であることが伺える。

それが3組出現した。


「ここは?グレン王?」

「計算が合っていない書類をだすんじゃねぇ、あぁ?書類が消えた?じゃあ仕事も消えたわ、ははははは」

「ということで、次の夜会では・・・あれ?いない?」

「なんじゃ!?なんじゃ!??風呂に入っていたら、何!!?何でバスローブのみ!?」


こんな混乱が3組出現した。


『さて、仕事だとか風呂の最中にすまないね、人間の王よ、大臣達よ。ここはグレン王の領土、オーガスタ国の街道沿い村、第4の村。話を集めるのが好きな人は名前を聞いたことがあるんじゃないかな?ちなみにバスローブは慈悲みたいなものだよ、いきなり裸は哀れにも過ぎる』


村の名前を聞いて、明らかに表情を変えた者がそれぞれの国の集団の中にいた。


『んじゃ、話すのは時間もないし、神様パワーで、はいっ!』


「「「「「「んがっ!」」」」」」」


と呼ばれた者達は頭を抑える。


「イネガル神よ、何を?」

と龍皇


『今までここであった事を知ってもらったのさ、唐突に知らない事がどばっと頭に情報として来たから驚いているだけで、痛みとかはないよ。愛し子が産まれた、魔物の長が土産を持参してきた、人間と宴をしたり共同作業をした、人間を魔物が襲わなくなった理由、愛し子とは何か、「祝福と加護」、ジョブは進化する、龍皇は調停者であるとか。まぁグレン王が知った事を大体ね。後は僕が神だとか。』


「本当に神・・・なのか?」

と一人の出現した大臣が疑問の声をあげた

「グレン王が新しく魔法の術式を作り、我等を呼び、催眠にかけているのでは?」


『ここまで奇跡の大安売りをさせておいて、酷いことを言うね、君は。じゃあ、グレン王も知らないことを言おうか、例えば君は自室のクローゼットの底を二重底にしておいて、そのな』


「わーーーーーーーー!」


『神の言葉を遮るのは良くないな、まだ信じられない?じゃあ、君が視察のために必要とする日数が必要数よりも1日多くして、ブラ』


「わーーーーーーーーー!!信じます、信じます!!信じさせてください!!」

と懇願に変わる大臣。


「お主の視察日数を後で改めるからの」

とそこの王様が睨む。


『さて、いじわるが過ぎたかな。まぁ信じるも信じないも君等次第だ。強制はしないよ』

脅しはするのか、と察する人間。


『今のは脅しじゃなくて、いじわるだよ。そうそう君等と話す機会がないんだ、許しておくれ、今の大臣も奥さんが子供を産む時はするりと産めるようにしてあげるよ、いじわるの代価だ』



『さて、くだらない話をしてしまったが、魔物の長達よ、人間達よ。ここからは真面目な話になる。龍皇、つまりは調停者の不安につながる』


『改めて前提条件を確認しよう、知らない村人もいるだろうし。

今、この世界の主な国と言えば、君達4つの国だ。北西のサジウルス、北東のシャルマ、南東のオーガスタ、南西のナルニス。上から見れば四角形の角をそれぞれが治め、街道で結んでいる形だね。間には砦が途中途中作られている。うん、良いんじゃないかな?村が手を取り合い、国になった割には良い形だ』


『その周りは森がある、魔物が住んでいるね。だから人間は開拓したくてもなかなかできない。だから国が広がらない。魔物の侵攻で人数もそんなに一度には増えないし、仮に増やしても養える量の麦も家畜もいない。国としては停滞している』


『一方、魔物は魔物同士で争うより、街道沿いの村や国から出てきた人間を餌にするのが最も安全で効率が良い。だから国周辺の森に住まう。そうすれば、人間がいなくても他の魔物を餌にできる』


『分かるね?魔物が周りを囲むから、国が拡大しない。魔物は餌のある場所から離れない。ある意味で調和が取れている、いや取れていた』


『しかし、愛し子が産まれたことにより情勢が変わってしまうんだよ。魔物がなるべく人間を襲わなくなった、すると国の拡大が目指せる。人口も戦うのに消極的な魔物に奇襲することで肉が手に入るから養える。街道沿いの村々も安心して今まで以上に麦とか育てられるしね。既にここまで考えていた者もいるんじゃないかな?』

とイネガル神は周りの人間の数人を見る。


『これで、人口が増えたらどうなるか、魔物はあっという間に数が減るだろう。人間の強みはその数と知恵だ。長がでない限りは、魔物の集落は潰されていく。しかし、長が出れば退却するのみ。人間は傷つかない。しかも魔物は餌としていた人間を食べなくなるから飢えて数も更に減る。』


『その魔物の食糧難と人間の台頭が龍皇の悩みだろう?』


「仰る通りです」

と伏したまま龍皇が答える。


『本来であれば、「自由が一番」と僕も放置するけどね。今回のは僕が関わっているから、龍皇任せは悪いと思ってね。龍皇が言っていたように愛し子にこのジョブを授けたのは僕さ。この子と約束をしてね、愛し子がこの村に産まれたのはアーノルドが「何でもする」と言っていたし、人口も少なく地震で建物が減って広くなっていたからだね。王都には産まさせられないだろう?』


王や大臣から冷や汗が止まらなくなる。

ある日、竜王が王都に他の竜も連れてくるのだ。

「愛し子に会いに来た、害意はないから安心するが良い」

安心なんてできないし、家が多いから誰のことを指しているかも分からない。

竜が建物を邪魔だと排除しかねない。

王都は「ゴチャゴチャしていて狭い」のだ。

他の長も入れない。

混乱で経済活動は確実に止まる、というか王都から人口の流出が止まらなくなる。

最悪、王も逃げなくてはならない。


神の気遣いに感謝するしかない。

もう皆が神と信じている。

信じたくなくてもその気遣いだけで、神扱いだ。


『さて、問題は魔物の食料難と人口の増加による人間の台頭の2つだ。より正確に言うならば、人口の増加による減少した魔物の駆逐かな』


『ということで僕の答えは「人間が増えるならば魔物も増えれば良い」というものだ。ならば今までと変わらないだろう?』


『これから1週間後に魔物用のダンジョンを各種族毎に作ろう。そこでは魔物が出現し、肉を得ることができる。宝箱も置いておこう。肉や酒が出る。たまに武具が出ることにしよう、人間と何か交換したいときに使うと良い。ダンジョンの中の死体の処理は気にしなくても良い、気づけば消えている。ダンジョンは各種族の過半数が決めた場所に移すことが何回でもできる。移動しながら暮らす魔物もいるからね。ただしダンジョンだ、罠もあるし、魔物もランダムだ、気をつけると良い。人間のように知恵を持って攻略したら良い』


『人口の増加は勝手に進めておくれ。国の拡大も自由だ。ただし、魔物を襲うのはなるべく無しにしてもらいたい。魔物の集落があって邪魔ならば交渉すると良い。ロードを呼べば話が通じるだろう。いたずらな暴力は禁止禁止。彼等は君等を襲わないのに君等だけが襲うのも不公平だろう?襲うならば名乗りをあげてから真っ向から。これをルールとしておくれ。ルールを守らなくても構わないが、その場合、帰りに奇襲を受けても文句を言わないように。あるいは奇襲時に他の魔物が逆に奇襲をかけたりね』


『正直ね、世界が広がっていかないのはつまらなかったんだよ。僕がせっかく作った世界だ、魔物も人間達も様々な場所に出かけて見ておくれ。人間もせっかく長と交流できたんだ、魔物用のダンジョンに入りたければお願いすると良い。使ってない時とかは使わせてくれるかもよ?宝は・・・期待しないでくれ、あくまで魔物のご飯用が主な用途だから。経験を積むとかにね』


『そうだ、ダンジョンを人間の王都の近くにそれぞれ幾つか設置しよう。ユニコーンの角とかが欲しければ運が良ければ手に入るように。魔物の素材が必要なのは変わらないだろうし、その素材の魔物が近くにいるとは限らないしね』


『ただし、全てのダンジョンの攻略の難易度は上げておくよ。サービスも過剰だとありがたみがなくなるからね。皆心して挑んでね』


『さて、龍皇よ、これで君の懸念事項は解決したかな?』


「はい、ありがとうございます。神よ」


『良いよ、君も不満を言いながらも良く頑張ってくれてるしね、それに今回のは僕の落度だ』


「いえ、不満など、そんな」

汗たらたらな龍皇


『知ってるから良いよ、大変な役回りだ。不満が出るのはしょうがないさ。けど、君に任せたかったんだ、僕はフェンリルでも四聖獣でもなく、君に。なんだかんだ思いやりがあって、どこか抜けている君にね』


「ありがとうございます」

じんわりきている龍皇


『それにしても、魔物の長が愛し子に「祝福と加護」を与えるくらいは予想していたけど、まさか愛し子のためにその同族を襲わないなんて、長だけでなく魔物の皆が考えるなんて思わなかったんだ。まさかそこまで想像力や共感する心、情愛が育まれているなんてね。僕の見立てより、成長しているんだね、皆。親が思うより子が育つのは早いものなのかな、アーノルド夫妻よ、君達も子が小さい時なんてあっという間だ、子育ては大変だろうが、楽しむと良い』


「「は、はいっ!」」

その子本人の口から言われた二人の心中や如何なるものか。

デウス・エクス・マキナ?

いえ、子が思ったより成長していたのが嬉しかった神のサービスです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ