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29話 生まれながらにして世界を震撼(王は踊る5)「以下略と意外な優しさ」

騎士団長は目を疑っている!

騎士団員1は唖然としている。

騎士団員2は呆然としている。

騎士団員3は呆気に取られている。


騎士団長は目を疑っている!

騎士団員1は唖然としている。

騎士団員2は呆然としている。

騎士団員3は呆気に取られている。



と主人公が元いた世界のゲームならばNPCにでもなってそうなほど、固まっている騎士団員達。


無理もないことだろう。

村のあちこちに血の湖ができ、四肢がそこらに転がり、頭も中身を・・・(以下略)生き残っている者も自分の番を思い絶望すれども怪我で動けず、目の前では親兄弟が身体の端から生きたまま(以下略)な姿を見て絶叫している。

という地獄絵図を最悪ありうるものと想定していたのだ。

下手をすれば作戦成功後、助かる見込みがないものは我等の手で命を絶ってやるのも慈悲とも。


少なくとも地獄絵図ほどでなくとも、家畜程度の扱いで怪我人多数、食われる順番待ちで生き残っていれば御の字。

村人が全滅していても、生き残って下手な地獄を見るよりはマシという考えのもと。

王都や他の村々を救わん!と息込んできたのだ。



だが、目の前に広がるのは

村のあちこちに牛や馬の骨が転がり、酒の匂いがし、元気に駆ける子供達がおり、親は仕事に精を出しており、どこかの家庭の父親が明らかに狐に、妻はどういう時にどうして欲しいものか、どういうことが夫はできるのかを懇々と説教している。


赤子が無造作に外にベビーベッドごと出され、龍達が覗いては、「人間の赤子はやわらかそうだの、怪我はせんのか」、「こんなにしょっちゅう泣いてたりしたら親は辛いね」、「小さくて可愛いんだねぇ」、「赤子は皆可愛いものよ、しかし・・・可愛いのぅ」など明らかにデレデレしている。顔でもう分かる。


また、首を回して、別場面を見ると

ドワーフが怒声を出しながら、木材を加工して、それを一人の人間が一瞬たりとも見逃さんと目を血走らせている。どっちが魔物か分からない。というか、ドワーフがいる意味が分からない。村人にいたと報告があっただろうか。

そして、怒声通りに巨人やオーガ、ゴブリンの明らかに突然変異種が木材を支え、人間がハンマーで木材同士を結合させるために叩いている。

魔物と共同作業を行っている。


また、別場面を見ると、のんきに空を見上げ「群れに戻るのかぁ、楽しかったのになぁ」、「分かるよ、その気持ち、またやんねぇかなぁ」、「龍皇様に頼もうか」、「良いねぇ」と老人のように、疲れた社会人のように将来に希望を持つことで現実逃避をしている者達もいる。


魔物と共同作業を行っている!!

気づけばほとんどの魔物が人間の言葉を話している!


騎士団員達は崩れ落ちた。

涙も出ていた。

自分達の意気込みが無駄になったことにか、

村人が安全だったのが嬉しかったのか、

自分達も良く分からない。


そんななか龍皇が言う。

「そこの婦人よ、村長を呼んできてくれんか」

はーい、と元気に返事をして村長を探しにいく女性。

もはや恐れなど一片も感じられない。


やがて村長が来ると

「どうされましたかの?」


「いや、こやつ等は騎士団らしくてな。我等の様子が遠くから見えて、村を襲っていると思っていたようでな」


「あぁ、龍皇様達は大きいですからのぅ、王都からでも見えたんですなぁ。騎士団の方々よ、わしがこの第4の村の長ですじゃ。誰も傷ついていないどころか、怪我人を治してもらい、お土産もいただき、地震で壊れた家よりも多くの家を1日もかけず作ってくださるなど大変良くしていただいております。最初は確かにもう終わりかと、皆が思いましたがの」

ほっほっと笑う。


「こんなにも早くに助けに来ていただいたこと誠に感謝しておりますが、村人は全員元気ですじゃ。どうか安心してくだされ」


そっちに目をやると、後ろで

大きい狼のお腹に顔をうずめている子供がいた。

もふもふ~、良い匂い~

そうかそうか、鼻をかむでないぞ


騎士団長が現実に戻って来る

「私は夢を見ているのだろうか、何か催眠魔法でも既に?」

やっぱり戻ってきていなかった。


龍皇が本当に細心の注意を払い、頭をちょこんと爪の腹で叩いた。

「馬鹿者」

叩かれた方はそれでも相当痛かったらしく、頭を抑えてしばらく声も発せなかった。


「ぬぅ、これでもそんなに痛いか。気をつけたのだが、すまんの。だが夢かどうかは分かったろう」


「・・・え、ぇ、分かり、ました。次の際にはもう少しゆっくりでお願いします」


「次も呆ける気か」

呆れる龍皇

「ほれ、お主の仲間も現実に戻してやれ、稀有な光景なのでそうなるのも分からんでもないからの」

我だとてここまで大規模な魔物と人間の平和な光景など初めてだからの、と笑う


騎士団長が全員の頬にビンタを2・3発ずつかましていると、


龍皇から

「それで?これで懸念は完全に晴れたかの?だったら、お主の置いてきた部下達に知らせてやれぃ、お主達の不安は奴等の不安でもあろうよ」


「そうでした、ありがとうございます」

予定通りに狼煙を上げる。

『村は安全、そのまま待機』


「ふむ、色つきの煙で知らせるか、遠くの者にも有効じゃな。良く考えるものよ」

他の魔物の長もなるほど、と関心を寄せている。


「これでお主等の仕事は終わりか?」


「いいえ、竜の王様や他の魔物の方々が皆様が帰られるまで待機となります、その後幾つか調べ物と王に村の完全な無事を報告するまでが仕事になります」

この一言がまずかった。


「なんじゃ、もう我等も帰るが、ちと時間はかかる。あのように龍達が愛し子を見ているからの。それまで待機組もあのまま待機か?」


「はい、王の命ですので文句を言う者もおりません。」


「飯は?持っているようには見えんようだったが」


「携帯食を持っております」


「ほぅ、そんなのがあるのか見せてくれんか」


「これです」

硬いことが見てとれるパンと、塩の匂いがきつい肉、チーズなどをポケットから出す。


「・・・これが飯か?」


「はい!一応戦闘というか、村人の為の囮が予定にありましたから、戦時の携帯食です、慣れれば大丈夫ですよ。また3日程度ならば食べずとも動けるように訓練をしております!」

胸を張る騎士団長


顔をどんどんとしかめていく龍皇

「完全な魔物の退去を見届けるまでが王の命令とな」


「魔物の皆様が大変理知的であったため、そうなります!」


「調べ物もあると」


「はい!」


「飯はそれで、待機組みはそれが終わるまで待機と」


「はい!」


「王も報告があるまでは不安があると」


「狼煙を上げたので大丈夫かと思いますが、多少の不安はありましょう」


「では、王が完全にこの村が安全と確認をし、調べ物もその場で報告したら、待機組は帰れて、王の不安はなくなるということよな」


「は?・・・い??そうなりますね?それが・・・」


「では王を連れてくれば良いではないか」


地獄絵図辺りを詳しく書いたら、ちょっとガイドラインに引っかかるかもしれなかったので、略しちゃいました。

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