25話 生まれながらにして世界を震撼(王は踊る1)「悲劇と役目」
フェンリルと妖狐のサンドで寝るとか主人公が血涙流して羨ましがるよね。
あぁ~、この世界にフェンリルや妖狐はまだいないのかしら。
トラとかライオンを倍にした生き物でももちろん可。
日は万人に対して昇る、昇ってしまうのだ。
王宮では王を含め大臣達が仮眠室を急遽設け、そこで寝ていた。
そこへ飛竜部隊達が帰ってきたと聞き、全員が急ぎ起きて、侍従より渡された水桶で顔だけ洗って飛び出した。
いつもの威厳などそこにはない。疲れと不安とがあるだけだ。ヒゲも剃らない。
日が昇り始めたと同時のことである。
夜明けと言っても良い時間だ。
飛竜部隊の長が直立して会議室で待っていた。
王と大臣達の問う時の顔といったら、不安を表情のみで表したようなものだった。
正しくそのような気持ちなのだろう。
「して!どうじゃった!?」
「被害はあったか!??」
「一体何が起きているのだ!?」
「王都は、村に影響はありそうか!!??」
飛竜部隊の長は直立したまま、答える
「部下達より集めた情報をお伝えします。
1:被害は第4の村のみであります。被害規模は分かりませんが、そこのみ特殊な魔物達が集中しております。
2:魔物が人を助けたケースは確かに認められました。ここ1週間ほどからです。
また第4の村以外では魔物が人を襲うことも減っており、というよりなくなっているようです。
これも同じような期間からです。
3:魔物の行動に異変が起きた理由は噂でしか分かりません。
4:追加いたしますと、第4の村がかすかにでも見える村々では特殊な魔物達を見たがゆえに混乱に陥っているとのことでした。
急ぎ概略をお伝えします。」
王が思案してから尋ねる。
「第4の村の集まった特殊な魔物とやらを具体的に申せ」
「はい!各魔物はそれぞれの地域にいるような魔物だったようで1種類ずつだったようです。しかし、砂漠に暮らすような種もいれば雪山で暮らすような種もいたとのこと。この世界の魔物のほとんどがいたと思える種類の多さとのことでした。
また、この2点こそが重要なのですが、それらの魔物類は全て通常の3~4倍は大きいとのこと、そして龍が、ワイバーンではない龍が9匹もいたとのことです!!」
王が笑う、泣きそうな顔で
「報告した者から酒の匂いはしておるまいな?魔物の変異体だけでも厄介なのに龍じゃと?」
「残念ながら!」
「そうか・・・そうかぁ・・・」
ふらりと椅子に倒れこむ王。
大臣達も天を仰ぐ者、早速妻への今までの感謝の手紙を綴る者、笑い出す者、泣き出す者。
様々である。
「恐れながら王よ、ここの王宮の一番高い塔から第4の村の方面をご覧いただくのが一番かと存じます!」
もはや考える気力もないのか、言われるがままに先導される王と大臣達。
案内されて見えたのは、村に転々と、あるいはごろごろと転がっている大きな物があるということだけだ。
「それで、あれがなんじゃ?」
「先にご報告した特殊な魔物でございます、報告の際には一列に並んでいたとのことでしたが、今は眠っているのか、散らばっているようです」
「ここから見えるのが魔物じゃと?家ですら見づらいというのに?そりゃ特殊な魔物じゃわぃ」
突如笑い出す王。
誰もが同じ思いであった。
5000人どころか、この世界の人間全てを束ねても勝てぬだろうと。
笑いがおさまると、自身の顔を思い切り王がはたいた。
後がくっきりと残るほどである。
そうして、周りを睥睨して
「会議室へ戻るぞ」
会議室に全員が集まると、王が切り出した。
「さて、何故第4の村のみが特殊な事態に襲われているのか。考えがあるものは申してみよ」
顔を見合わせる大臣達。
魔物の考えることなど分からない。
しかも多種多様な魔物、雪山の魔物までいるなど信じられた話ではない。
「誰もいないか。それもそうじゃな、わしも欠片も思いつかん」
「王よ!これはあくまでも噂です、しかし、気になるところがあるものでもあります。申し上げてもよろしいでしょうか」
飛竜部隊の長が言う。
「もちろんじゃ、実際に見て来た者達の言葉ほど重いものはない」
「では、申し上げます。ゴブリンの変異種や巨大な狼が人間を助けたことがあるらしく・・・」
「あぁ、そんな話もあったのう」
官僚を叱り飛ばしたので印象も強い。
「我等もその噂を知っておりましたので、そこの者達から話を聞いた者がいます。なんでも人間を襲わなくなったり、助けたのは愛し子が生まれたからだと言っていたと、めでたき日だからだと」
「愛し子?魔物か?」
「いえ、それが人間らしく。ゴブリンの変異種の兄はその愛し子に会いに行くと言っていたとのことです」
「すると、なんじゃ?あの中にはゴブリンの変異種の兄もおり、魔物達はその愛し子が生まれたから第4の村に集結しておると?」
「可能性はあるかと」
「ふむ」
思案する王。
「そうであれば、平和に終わるやもしれぬが」
王は能面のような、真顔になり、皆に告げた。
「皆のもの、今考えられる最悪の事態を申してみよ」
第4の村の村人の全滅?
近隣の村も含めての全滅?
人間の絶滅?
「人間の絶滅か、確かに。そうじゃな。わしが思うに、とりあえずは王都まで侵攻されることじゃ。他国も含めてな。最悪の事態に備えるのもわし等の役目じゃ。王都に侵攻されればこの国の基盤が崩壊する。王宮を攻撃されれば指揮をとるものがいなくなる。そうなれば、村などよりも多くの人間があっという間に狩られるじゃろう」
王が告げる。
「愛し子のため、人間を助ける、襲わない。ならば結構。しかし、あくまで噂にすぎぬし、魔物のことゆえいつ暴れ出すか分からん」
苦い顔で続ける。
「そもそも何故国ができたのか、魔物の脅威から逃れるために村々が手をとりあったのが始めとされる。故に国は国民を魔物から守る必要がある、それが存在意義じゃ。第4の村だとて国民よ、生きておれば守らねばならぬ。しかし、そのためにより多くの犠牲を出してはならないのじゃ。助けに行く騎士団だとて国民よ。討伐となれば死人の方が多くでようぞ」
更に苦い、苦しい顔で続ける王。
「故に、先の会議の人員は変えず、目的を変更する。騎士団全員に馬を与え、歩兵はなしとする。また、魔術士もなしじゃ。馬が足りなければ行く団員の方を減らせ。まず騎士団には途中まで編成した状態で動いてもらう。その後、決死の覚悟がある者が第4の村で死傷者が出ていないかを確認しにいく。
死傷者がいるならば、やはり魔物故に暴れるものとして、騎士団には魔物の近くまで走り、そのまま西の森の方へ駆け抜けてもらう。村人よりも人数が多く、馬も付いてくればそっちを追うだろう。」
「それはつまり・・・」
「人間の社会を守るため、餌に、いや囮になってもらうということよ」
「それはあまりにも、騎士団が・・・いえ、何でもございません」
「人間の社会を守るため、他に目を向けさせる。それがわしの思いつく方法じゃ。他に案はあるか!?軍務大臣よ、これ以上の策があるか!?」
「王よ、それ以上の上策は某には思いつきませぬ。ただし、暴れだした魔物から騎士団が助かる確率をあげる方法はあります」
「申してみよ」
「この案の弱点となるのは馬です。馬も走れば疲れるのが道理。そうなれば捕まるでしょう。ですから、第三陣まで作ります。第一陣は魔物を森へおびき出す役、第二陣はおびき出された魔物を第一陣から受け継ぐ役。矢でも射れば注意が向くでしょう、第一陣はここで第二陣と交代します。連携が鍵になりますな。第三陣は更に第二陣から魔物を受け継ぐ役。そして、第三陣が疲れるだろう所で魔術士達が彼等の匂いと姿を隠す魔法を一斉に遠くからかけるのです。かなりの距離を人里からかせぐことができましょう」
「予め、第2陣、第3陣を森の中に隠しておくのだな。よし、討議する時間ももったいない。それで行こう。では魔術士も森に必要じゃな。先の言葉を撤回する。必要な人員はそなたが決めてよい、飛竜部隊も好きに使え。先に魔術士を森の奥深くに配置するようにでも伝えろ。どれくらいのところが良いか、そなたが指揮を執れ、予算は気にする必要はない」
「はっ!飛竜部隊がいれば万が一捕まりそうになっても助かる者も多いでしょう」
「急げよ、時間との勝負じゃ。奴等の目が他を向かん内に頼むぞ!騎士団への伝令やらなにやらに官僚達を使っても良い、行け!それと各国に1匹ずつ飛竜を出す、奴等を刺激せんようにとの。急ぎ飛竜部隊から各国分の人数をこちらへ寄こせ。侍従達よ、そなた等は今の話を各国向けの書状にせい。時間がないゆえ、書名と印だけわしのものにする。その非礼についても危急ゆえ許すように記載せよ」
「それでは急ぐゆえ失礼いたします!」
軍務大臣が出て行く。
「出番がない方が良いがの、武運を祈る。そなたならば大丈夫だろうが龍もいることを忘れるな」
王が答える
「しかし、愛し子か」
呟く王。
「愛しいどころか、なんとはた迷惑な」
彼はこの後自分の身に降りかかる災難を知らない。
それが良いことなのか、悪いことなのかは誰にも分からない。
一方、村ではそろそろ皆が起き出す時間になっていた。
やっぱり水曜中ではかけなかったけど、なんとか日が昇る前に書けた!
眠いけど、キャラが動きたいと言ってくる~




