103話 頑張る日々 37「罪には罰を」
「では、店主も含めて、あの円の中のもの全てをいただきます」
「・・・んぅん!?店主は違うだろう、あくまで魔物と馬車だろう!?」
と騎士団長が目を向く。
「いいえ、騎士団長様、私は確かに円の中にあるものを全て、と言いました。ですよね!?皆さん!!」
おぉ!
確かに!
言ってた!!
言ってたよ、おい!
これ狙ってたのか!凄ぇガキだな!?
あいつ確かに円の中にいたわ
団長さん、言ってたし、あんたも確かめてるぜ!
確かに入ってたぞ!
「書面にもそう書かれていましたよね、もし魔物と馬車だけならそう書きます。書面には?」
「・・・円の中にあるもの全て、となっているな」
「では、これは有効ですか、無効ですか、彼の署名もありますが」
「・・・有効だな。あいつも見て署名をしている。商道徳的にも気づかないあいつが悪い。確かに、あいつも円の中にいたことを確認している。そなたの言う通りだ」
「ありがとうございます!さて、目覚める前に♪」
と馬車の中を荒らす。
欲しい物は・・・あった!
トロールに潰された店主を引きずりだし、首輪をはめてやる。
うん、似合っているんじゃない?知らないけど。
親指の腹の部分を軽く噛み千切り、首輪に血を垂らす。
「いまこれより、この者の所有権は私にある。」
ここからはこいつにも聞いてもらわないといけない。
「おい、起きろ」
と頬をはたく。首が180度回転せんばかりに思い切り。
「おい、まだ起きないのか」
と往復ビンタになっていく。
途中から、起きた、とか止めてくれとか、痛い、とか声が聞こえたが無視をする。
上下関係は大事です☆
「ようやく起きたか、この外道が。今よりお前は俺の所有物だ、首を触ってみろ」
顔が膨れあがった店主は首を触り、何が起きたかを悟ったようだ。顔が真っ青になっている。
「な、ぜ・・・何故!?私が!!」
「何故?これはおかしいな。円のなかにあるもの全てと言ったし、書いた。そしてお前はそれに署名もしている。お前が円の中にいたことはこの場の全ての人間と、騎士団長が確認している。自身が含まれていると気づかなかったお前が全面的に悪い」
「・・・」
さぁっと血の気が引く音が聞こえる。
もう青ではなく、白だな。
土下座をする店主。土下座文化はあるのか。まぁ、どこの地域でも額を地面につける風習はあった気がするし、そこまでおかしいことではないのか?
「お、お許しを!私はそのようなつもりでなく!!!!ウグギャ!」
とりあえず、踏みやすいから踏んでやる。
汚物を踏んでからやりたいところだが。
まぁ、どうせこの靴も綺麗じゃないから良いか。
というか、こいつより汚物の方が役に立つし、綺麗だ。
・・・この靴は買い換えようかな。
「うるさい、黙れ、外道。貴様は神の忠告を無視した。貴様は我等が神に求められた愛を踏みにじった。それだけで私のこの心は憤怒に満ちている。お前を百度殺しても足りないくらいにな」
足に更に力を込める。
頭蓋が軋むのを感触で感じる。
「人間が人間を奴隷にする、それは構わない。両者の合意があればな。積もった借金によって貧した生活にあるより、いっそ奴隷になった方が良い暮らしができる者もいよう。獣人も亜人も然り。人間が人間をどうしようと、種族の勝手である。それこそ自身の快楽のために楽しみのために尊厳を踏みにじろうと、傷をつけようと。だがな、魔物は違うだろう?魔物は悦楽のために人間を傷つけるか?否!!彼等はそう見えたとしても、それは子どもに狩りを教えるためだ、人間を孕ませるのは種の繁栄のためだ。捕まった女性はいわゆる奴隷のようなものだろう。しかし、彼等は苗床になった女性をむやみに傷つけたりしない。大事な母体だ、大切にしている、彼等なりにな」
更に足に力を込めようとしてしまうのを必死に我慢する。
「しかし、お前はどうだ、自らの鬱憤を晴らすため何をした?お前が右腕を切ったゴブリンは何をした?
先ほど右目を切られた者は何をした?四肢を切って笑っていたのはお前だろう。人間が人間と定義されるのに必要なものはなんだと思う?俺は少なくともその中には想像力の有無、共感性の有無があると考える。それこそが神が授けた本当の人間の強さの源なのだからな。では、お前は人間か?違うな、お前は人間ではない、魔物ですらない、異端だ、外道だ」
軽く頭を蹴り起こす。
勢いがあまったようで、仰向けで倒れてしまった。
これは好都合。
腹を思い切り踏む。
「だが、私も愛を信奉する一人である。お前が百人いようが殺せるが、お前が真摯に罪を償うならお前を許そう。奴隷からも解放してやろう」
「ほ・・・・本当に!?」
といかにも媚びた笑顔を浮かべる店主。
「あぁ、本当だとも」
とにっこり笑ってみせたが、被り物のせいで見えないか。
気づけば群集はどうなるかを見守っているらしい。
騎士団長も。
「とりあえず、買ってきたよ!」
とスコールの声がした。
束にして、強靭な糸で結んでたくさんの鉄の棒を買ってきてくれた。
スロールはスコールの上の荷物のバランスをとっている。
「ありがとう、名前を呼ばなかったのも良かったよ」
と二人の頭を撫でる。
そうして、一本の棒を取り出す。
「龍よ、この棒を斜めに切ってくれ。刃のように薄く」
「うむ」
とハーヴィが一瞬手を振るえば、刃物もどきができあがる。
群集がどよめく。
あぁ、ハーヴィが喋ったから、真竜とバレたか。
まぁ、良い。
今はこの汚泥よりもなおも汚らしい下衆の浄化が先だ。
「ご、ご主人様、それで何を?」
「決まっているだろう?罪を雪ぐには罰が必要だ。動くなよ、殺しかねん。皆は後ろにいな、ヴィト結界を、血が飛ぶからな」
そうして、鉄の刃もどきを下衆の右腕に突き刺す。
「ぎゃあああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」
「あぁ、すまん。切り落とすつもりが刺してしまったよ。大丈夫、あと何回か刺せば右腕を切り離せよう」
1回、2回、3回、4回、5回
ぐりぐりぐりぐりぐりぐり、
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ、
それぞれ傷をかき回す。ステーキをよく切れない刃物で切り離すように。
ずっと、泣き叫んでいたが、動き回るのでやりにくい。
仕方ないから、切ってない棒で両の太ももを突き刺した。
地面に留められた下衆の標本だ。
「ひぃぃぃぎぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいい!!いたいいたいいたいいいいいいたいいたいいたいいたいいいいいいいいたい!!ごしゅじんざま、おおゆしを、おゆりゅしを!」
「許すためにやっているんだ、我慢しなさい?次は左腕だ、その前に出血を止めなくてはね」
右腕の付け根に鉄の棒を幾つか重ねて、それに手を添えて魔法で熱してやる。
五芒星に配するは熱、記述は熱は最大に。ただ、それだけ。
そうして鉄と男が熱される。
匂いがする、これが人の焼ける臭いか。
「あづぅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい、溶ける、溶ける、溶けるぅぅぅ、お許しを!神よお許しを!!」
「神は仰った。全ては自由だと。貴様の自由の結果と知れ、さぁ、左腕だ」
可哀想だからこっちはスパッと切ってやる。
鉄の棒で熱して止血もしてやる。
気絶したから水を魔法で精製し、ぶっかける。
「まだ、終わりじゃないだろう?次は両の足だ。何でも鈍らでわざと切ったことがあるようだね。じゃあ、右腕と同じようにしなければならないね」
「お許しをお許しをお許しをお許しをおゆるしをおゆるしをおゆりゅしを」
失禁までして、泣いている。
あぁ、みっともない、情けない。これが群集の前だから可哀想に、場所を考えてやればよかった。
・・・嘘だけど。
「あははははっ!許すためだ、受け入れろ、お前も奴隷達に受け入れさせたのだろう?因果は回るのさ」
右足を何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回もただただ刺す。
そして根元からようやく千切れる。
あまりぐりぐり、ぐちゅぐちゅは品が無いかなと思ったけど、これも品がないかな。
じゃあ左足はやっぱり傷口をかき混ぜてやろう。
そう思いながら右足を熱する。
そうして左足を、
刺して、ぐりぐりと、ぐちゅぐちゅと傷口を広げてゆく。
また、刺して、ぐりぐりと、ぐちゅぐちゅと傷口を広げてゆく。
また刺して、刺して、刺して、切り離す。
そうして左足を切り離す。
そしてまた鉄を使って熱する。
磁石の達磨に鉄の棒がくっついたようだ。
「おや、許しを乞わないと思えば、声が嗄れてしまったのかい?痛かったね、辛かったね。これが君のしてきたことの、まだ一部なんだよ。人間というのは罪深いね」
僕の言葉を聞いた店主の口が動いた。
こ・ろ・し・て・く・れ
「何を言ってるのか、分からないや、ごめんね?そうだ、さっき目を切っていたね。では切らなければ。目を開いてよく、この棒を見ててご覧」
ゆっくり、ゆっくり焦らすように棒を片目に近づけていく。
目に触れた。
まだ下ろす。
どこか固い感触がする。
まだ下ろす。
何かが破れたような音がした。
そのまま右へ凪いだ。
「うん、歴戦の戦士みたいになったよ、格好良い、格好良い!あははははっ!!」
広場には僕の声と、彼のうめき声、そして誰かが嘔吐する音しか聞こえなくなっていた。
「さて、兄よ、龍よ、魔物の彼等を治してあげてくれるかい?」
「トー」
ヴィトが危うく本名を漏らすところだったので一喝する。
「兄よ!!!!」
ヴィトは気づくと、微かにうなずき、
「ここまでする必要がありますか!?」
あえて大声で答える。
「兄よ!何を言っているのか!?あるさ!自身の享楽の為に他者を傷つける者がどういう末路になるのか、少なくとも今ここにいる人達には伝わった!やらなければならない、しなければならない!尊厳を冒した者の末路を知らしめねばならない、愛を持たない者の結末を知らしめねばならない!!」
「・・・・・・・・・・そうですか、龍よ、血を」
何を言っても無駄と思ったのか、治療にとりかかってくれた。
いつもよりたくさんの血を、ヴィトが造った水の塊に流すハーヴィ。
そうして、その水を魔物達にかければたちまち傷が治り、欠損も治る。
「兄よ、この者にもかけてくれるかい?」
と言うと、ヴィトが嬉しそうな顔を見せる。
ごめんね、君の気持ちも分かるつもりだけど、そうじゃないんだ。
水の魔法をかけて鉄を冷まし、皮膚とくっついた鉄を引き剥がす。
べりべりべりべり。
「ひぃぃぃぃぃぎゃぁぁぁあぁぁあぁあぁぁあぁあああああああああああああ!」
かすれた声が通りに響く。
鉄が皮膚にくっついてしまったものだから引き剥がすのも一苦労だ。
「罰はまだ、終わってないから」
ヴィトの顔は見ない。
そこには四肢が戻り土下座をしている外道の姿が。
「何でもします、何でもします、何でもします、お許しを、お許しを、お許しを、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「きっと、彼等も許しを乞うたことがあったかもしれないね。言葉が通じないから?だからこんなに酷いことができたのかな?君はまだ想像力と共感性を磨くべきだね。本当に悪いと思っているなら、そんな軽々しく言葉になんてできないと思うんだ。頑張りたまえ、君がしてきた分だけしかしないさ。耐えるが良い、彼等がそうしてきたように」
タイトルは近々、以下に変更します!
「動物好きが異世界に行くのならテイマーになるしか道はない!!もふもふもっふもふ)~やがて魔王へと至る道~」
以下いつもの!
皆さんからの後書き上の「勝手にランキング」の1日1回ぽちっと、感想、評価、いずれも楽しみにしております!読者の皆様からの反響はとてもモチべUP要因です☆
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