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6、改約聖書

受胎告知、処女懐胎、降誕(聖夜)、東方の三賢者の祝福、

洗礼、説教、ヒーラー、預言、十字架刑(受難、贖罪)、

復活、昇天、天都即位、再臨、


  1、受胎告知


 十五歳の美少女マリアは、部屋で休んでいると、そこに聖霊が訪れた。

「マリアよ、あれから二千年の時がたった。再び、わたしと契約を結ぶつもりはあるか」

 マリアは答えていった。

「もう一度、わたしの長男に死刑になれというのですか」

「そうだ」

「そんなことできるわけがないじゃないですか。せっかくの申し出ですが、お断りします」

「そうだろう。あなたがそういうだろうことはわかっていた。もし、気が変わったら呼んでくれ。郵便で手紙を出してくれれば、答えることができる」

 そして、聖霊は帰っていった。

 戦争が起き、疫病が流行り、天候不順がつづいた。

 近所の村人は「もしかしたら、マリアさんは聖霊の申し出を受けるのでは」と噂しあった。今時、そんな神秘主義では事態は解決しないことはわかっているのだが、もしかしたらと考える人たちもいた。

「マリアさん、やめた方がいいよ。息子を死刑になんて」

 そういう者たちこそ多かったが、一部には、マリアの長男を再び死刑にしようというものもいた。

 マリアはいった。

「聖霊の力など借りるつもりはありません」

 そして、マリアは、ガボという男の子と結婚した。


  2、処女懐胎


 マリアはガボに体をなすがままにされて、処女を捨てて懐妊した。


  3、降誕(聖夜)


 マリアは、ガボとともに、聖霊の血を継がない子供をもうけた。決して死刑にはさせない。そう若い夫婦は話し合った。

 産まれた男の子には、ロゴスという名前をつけた。


  4、東方の三賢者の祝福


 ロゴスが生まれると、東方の三賢者がやってきて、「この子供は救世主になるでしょう」と予言して祝福した。


  5、洗礼


 ロゴスは、教会の洗礼は断った。

「何も減るものではない。湖の浅瀬に沈み、十まで数えたら起き上がってくれればいい」

 と神父はいったが、ロゴスは断った。ロゴスは洗礼を受けなかった。


  6、説教


 ロゴスは青年になると、大勢を前にしていった。

「おれは世界を救わない。救われたいなら、おまえたちが自分でやれよ」

 確かにな、と観客は思った。


  7、ヒーラー


 ロゴスは、ある時、床に伏したけが人に会った。

「ロゴスくん。ものは試しですから、わたしの腕に触ってくれませんか。ひょっとしたら、このけがが治るかもしれませんから」

 ロゴスは、

「いいですよ。治るわけないじゃないですか」

 といって、けが人の腕に触れた。

 三日たって、ロゴスが再びそのけが人の家を訪れた時、そのけが人のけがは治っていた。

 ロゴスは思った。

 まずい。死刑にされる。


  8、預言




  9、十字架刑(受難、贖罪)


「聖霊の血を継がなかったロゴスよ。我々は今から、あなたを十字架刑にする。安心するがいい。ロゴスよ、あなたは救世主だ。必ず、死刑の十字架から復活するだろう」

 そして、ロゴスは十字架にかけられて、槍で胸をつらぬかれた。


  10、復活


 ロゴスの体は、路上で大事に寝かしつけられていた。

「たぶん、復活する」

 神父たちはいった。

 民衆は、復活するわけがないと思っていた。

「だが、もし、復活したらどうするんだ。それでどうなる。我々が救われるのか。我々は本当にそれでよいのか」

 混乱する大衆だった。

 そして、死んだはずのロゴスが目を覚まして起き上がった。

 民衆は「伝承のとおりだが、感想はない。好きにしてくれ」といって立ちすくんだ。


  11、昇天


「海の上を歩けるか試してくれ」

 といわれたが、ロゴスは海の上は歩けなかった。どぼんと沈んだ。

 そのまま陸地に戻ったロゴスは、

「複雑な気持ちだ。古い神話や伝承はどうでもいいが、おれは世界を救う方法はひとつも思いつかない」

 といった。

 まわりの大人は、

「気にするな。きみのせいじゃない」

 といった。


  12、天都即位


 ロゴスは、仮にだとはいえ、死刑になった代償に、自分の住んでる土地を「天の都」と呼ばせ、自分のことを「天の都の王」と呼ばせた。

「せめて村長くらいの権限は与えてくれ」

 と、ロゴスはいったが、

「それは困る。きみは平民の一人だ」

 と断られた。

「まあ、ちょっと人気は出たかもしれないぞ」

 とまわりの大人は慰めた。


  13、再臨


 ロゴスはその後、幸せに暮らしましたとさ。、めでたし、めでたし。


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