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臆病者の合心獣  作者: 天井舞夜
第一章 蘭鳴学園悪魔事件
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新たな悪魔

 真夜は地面に倒れたまま言う。


「ごめんね~、後でちゃんと生徒会のみんなは生き返らせるよ~。今はちょっと動けない」

「そうか、後で俺も一緒に謝ってあげるよ」

「ありがと~。騙し打ちとかだって考えないの~?」

「鉄が騙してない事くらい知ってる」

「もしかして私がリリンを学園中に放った理由とか生徒会の人達を襲撃した理由とかもわかってるのかな~?」


 錬は呆れた気味に言う。


「知ってるよ。かなり下らないけど、個人的には複雑な気分だ」

「うぅ~、やっぱり知られると恥ずかしいを通り過ぎて泣けて来る~」


 真夜は顔を赤らめて目をうるうるさせる。

 今の今まで錬も思いもしなかった。まさか自分が原因だなんて。正直とてもいたたまれない。錬は気を遣って他の話題に変える。


「そういえば旧校舎の天井画の意味がわかったよ。実に鉄好みの意味がね」

「銀君あの天井画、鉋君と一緒に貶してたよね~?」


 錬は無視して続ける。


「あの天井画はタロットカード――大アルカナの《ザ・ムーン(月)》だな」

「確かにあれは月だったけど、え~……意味がわからない」

「少なくともあれの作者はその程度の認識でしかあの天井画を作っていない。作者の考えは、月の視点から見ればつまりタロットカードにおける逆位置から見れば地球の周りを回ってる月という構図のギミックができてだな――」

「想像以上につまらなそうだがらもういいよ~」


 真夜は真顔で錬の高説を遮った。錬も別に不満はない。もともと話題を変えるための他愛もない話だ。


「しかし悪魔っていうのも人間と大して姿変わらないんだな」

「そうかも~、人間と悪魔の違いなんて魔力保有と寿命くらいだし」


 真夜は月を見上げて続ける。


「それにしても銀君って本当にお人好し~、人を殺したのに私を許すなんて」

「俺は許す側じゃなくて友人の間違った事を正して守ってあげる側だから」

「本当に銀君はかっこいいな~。そういえば銀君のキメラいないね~」

「月読は桜梅を助けに行ってるよ。桜梅は不死身で死なないから、だって串刺しって痛いと思うし」


 真夜は桜梅の名前が出た時一瞬だけ険しい顔になるがすぐに穏やかな顔になる。


「ねぇ、銀君」

「ん?」

「今言うのもあれだけど私も錬君って呼んでいい?」

「別にいいけど」

「うん、錬君。錬君錬君、錬君も私の事を真夜って呼んでよ~。鉋君や心花ちゃんや生徒会の人達ばっかりズルい~」

「真夜、これでいい?」

「錬君に名前呼ばれるの嬉しいな~」


 真夜は心底嬉しそうな笑みを浮かべる。


「やっぱり真夜は嬉しそうに笑う方が可愛いよ」

「へ?」


 真夜はリンゴのように真っ赤になり顔を腕で隠す。


「な、何でそういう事言うかな~! そういうの真正面から言われるの凄く恥ずかしいのに」

「昔から姉ちゃんに女の子が可愛いと思ったら誉めておけって言われたから」


 錬はさも当然のように答えた。


「錬君が女の子よく誉めるのはそういう事だったか~」


 そして真夜は腕で口元を隠して「じゃあやっぱり今の本心なんだ」と小声で続けたが錬には聞こえず。


「それじゃあそろそろ結凛達を生き返らせてもらおうか」

「うん、大分痛みも和らいだし~」


 錬が真夜の手を取り起こそうとした。


「おいおい鉄、お前という奴はもう少し錬さんを労れないのですか?」


 錬と真夜は予想外の声を聞いて思考が一瞬停止する。足音が近付くとともに声の主は続ける。


「錬さんは鉄のせいで肋骨と左腕が折れてるんですよ」


 錬と真夜が足音の方へ向くと悪人面の友人――鉋高貴がいた。


「高貴」

「こんばんは、錬さん」

「あ、はい、こんばんは?」


 悪人面にミスマッチしているような顔が良い爽やかな笑みの高貴に錬は何となく挨拶を返した。真夜は警戒を強めて問い質す。


「鉋君、あなたも悪魔だったの~? 全然気付かなかったな~」

「まあ、そういう事です」


 高貴は掌を錬に向けると掌が光り出す。


「鉋君、一体何を!?」


 真夜が激昂して止めようとするが痛みがまだ残り思い通りに体が動かない。錬は黙って高貴の行動を見ているだけ。すると錬は体の痛みが消え、怪我が治った。


「回復魔法って奴ですね」

「ああ、フルケアだ」


 錬と高貴はお互い顔を見合せてニヤリと笑った。高貴は周りの惨状を見渡す。


「それにしても鉄、派手にやりましたね。いや、リリスでしたっけ?」

「そういう鉋君は悪魔としての名前なに~? まさか高貴じゃないよね」

「俺はディアボロス、意味は《神を罵倒する者》です」


 高貴は真夜のお腹に手を回しぞんざいに脇腹で抱える。


「まったくお前という屑はよくもまあ滅茶苦茶にしたものだ。そのまま俺の人間生活も滅茶苦茶にする気ですか?」


 高貴は錬を指差し続ける。


「後、錬さんは早くキメラを戻した方がいいですよ。鰯な生徒会役員達は俺が蘇生しといたので大丈夫ですから。半真性ロリも一応助けてやってあげましたしね。それに頭痛が凄いでしょう? 錬さん」

「まあね、途中から骨折より頭痛の方がヤバかったくらいだった」

「でしょうね。錬さんのキメラの能力はおそらく《全知》、シンクロ率が高い錬さんではダイレクトに神の如く能力に人間の脳が耐えられなくて痛むと思いますから」


 真夜が月読玉兎の能力を聞いて驚いた声を上げる。


「はあ~、全知ぃ!? なるほど神か~」

「そう、全知です。神と同等の叡智、はっきり言って人間には負担が大きい能力です。まさか、俺の大嫌いな神と同等となる能力とは」


 高貴は不機嫌な様子でブツブツ神様に文句を言い始めた。


「まさか本当に悪魔だったなんて。真夜の占いは当たっていたわけだ」


 錬は神に罵詈雑言している高貴に言った。真夜のタロットカード占いで高貴が悪魔を引いたのは偶然でありながら偶然ではなかった。


「あの時はビックリしましたね。悪魔の鉄が俺の正体に感づいたかと思いましたから。まあ、この反応見る限り別に意図的に引かせたわけじゃないようですけど」


 高貴はバッグのように抱えている真夜を見下すように一瞥する。

 やがて月読玉兎が錬の元へ戻って来て消える。錬は頭の痛みが柔らぐ。


「危なかったですね錬君、このままキメラを出し続けて宇宙の地図でも知ってしまったら脳がオーバーヒートでブレイクしてたと思います」

「恐い事言わないでくれ」


 錬は心底ホッとした。


「それで高貴は真夜をどうするつもり?」

「どうもこうも悪魔の力を封印するつもりです。知り合いにそういう能力者がいますから。何代か前の蘭鳴学園の生徒会長なんですけどね。俺の悪魔の力もその能力者によって封印されたから鉄は俺を悪魔とわからなかったんです。もっとも俺も今はその能力者に頼んで一時的に封印を解いてもらってる状態だから再び封印してもらいますがね」


 真夜が高貴に激しく抗議する。


「何で私が悪魔の力を封印しなくちゃいけないの~!?」


 高貴はやれやれと面倒な面持ちで言う。


「罰だと思って受け入れてください。悪魔の力がなくても人間生活には大して問題ないから大丈夫です。後、錬さん」

「ん?」

「錬さんもキメラの能力に制限かけてもらった方がいい、シンクロ率が高い以上その能力は本体の肉体に害があります。まあ、キメラを出さなければ全知は発動しないから無理に今日とは言いませんけど」

「そうするよ」


 一通り話が終わると高貴は宙に浮いた。


「とりあえず俺はコイツの悪魔の力を封印しに行きます。錬さんは生徒会役員達に終わった事を報告でもしてください」

「わかった」


 高貴は真夜を抱えてそのまま校舎の方へ飛んでった。錬も旧校舎へ歩みを進めた。

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