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風魔の誘降と挑戦状

相模の国 風魔谷



風魔小太郎は幾度となく、北條氏政に情報か齎したが、以前にも増してとり合わなくなっていた。

そんな中、少しずつ北條の中で、風魔の取り巻く環境が悪くなりつつあるのを自覚した。

小太郎『どうしたものかな。

氏政様に幾度となく情報を齎したが、真剣に取り合わない。

情報そのものが何者かに早く、氏政様の家臣に知らされている。

それの真偽を気にしてない。

危険と言うしかあるまい。」

報われない情報収集に疲れを覚え始めていた。

一人の忍びがやってきて、密書を渡した。


小太郎は開いて読んでみた。


『これは、真田からか。

どうやら、我々に誘いをかけているな。

しかし、誰だ。

我々を召し抱えたいと言うのは。

真田安房守に出来る芸当ではあるまい、まさか、信勝が、あり得ない。

しかし、魅力的ではある。

他の上忍達を集めてみるか。」


結果は、小太郎があることを決意するに十分なものだった。

何人かの上忍を連れて上州に旅立った。



上野国 岩櫃城



深夜遅く、信勝と昌幸は北條との戦いを始める準備をしていた。

信勝「数で劣る以上、上手く、利根川の上流に堰を作り、利根川を渡っているところを見計らって堰を落とし、北條軍を水死させる。

渡ってきたものは利根川に追い落とせ。

もう一隊は僅かな兵で、忍城の周りに巻き藁を置き、火を付けさせ、上州に攻めてきた北條軍を誤認させる。

出来れば、撹乱させたい。」

昌幸「悪くないですな、少ない兵力でやるには。

一つ間違えば全滅しますが、賭けるしかありませぬな。」


その時、外に気配がした。


信勝「来たか。入ってくるがいい」


2メートル近い身長の男が入ってきて、座った。


「風魔小太郎にございます」


信勝「改めて、よく来てくれた。」


小太郎「あの書状に書かれた条件は誠にございますか、我々は野盗とも足軽以下とあからさまに蔑視するものも多いのに」


信勝「私が欲しいのは御主らが持つ技術だ。

その技術は武士が持つもの以上に重要だ。

それを疎かにしたら、我々は生きてはいけぬ、ましてや、この戦国の世だ。

命取りになる。

身分そんなものは関係ない。

確かに私は武士だが、滅びた家の遺児、大名ですらないのだ。

盛り立てくれた安房守がいなければ、首と胴が離れていただろう。」


小太郎は昌幸を見て、頷く。


昌幸「古い武田家は滅びた。

新しい武田家には、身分上下は関係ないのだ。

それに御主らに信勝様の生存を知られた以上、逃げも隠れもせぬ。

戦うのみよ。

刀折れ、矢が尽きるまでの」


小太郎は身分上下に関係ないという言葉を聴き、考えながら「我々の境遇を変えていただけますか、日陰から日向に出る、我々の一族が人として恥じぬ境遇に」


信勝「無論だ。

それにもう一つ加えて欲しいことがある。

御主らの一族でどうしても忍びに向かない者もいよう。

彼らには文字や数字、経理を教え、文官として育成したい。

使える者は育成しなくてはな、織田も相手にする以上はな。」


小太郎は頷き、忍び以外にも新しい道を切り拓く可能性に賭けた。

「信勝様、我々風魔を召し抱えていただきたく存じます。」


信勝「よろしく頼む。

至らぬ身だが。」


信勝は北條の耳目を奪うことに成功した。


昌幸「先程の策、小太郎殿から見たらどうだ。」

小太郎「撹乱させるには我々の手の者が使えます。

我々風魔が北條勢の中にいても怪しまれませぬ。

疑う余地がありまぬ。

気候や利根川を利用した策、上手くいけば、

北條勢は生きて相模の地には帰れませぬ」


信勝「小太郎の見立てで、北條の大将は誰になるかな」


小太郎「鉢形城主、北條氏邦殿でしょうか。

北條の一族が総大将になりますゆえ」


信勝は思案しながら、「近々、北條は真田や内藤に調略をかけてくる。

幕下に入れと言うだろうから、上手く挑発して、上州攻めを誘引させるか。

準備が整い次第、実行しよう。」



それからしばらくして、北條から、幕下に入るよう、書状が来たが、昌幸は使者を上手く持ち上げ、戦書を持たせ、帰らせた。



相模の国 小田原城



上州の真田から書状を持った使者が帰還してきた。

氏政は書状を開いて読んだ。


氏政「何だこれは、戦書ではないか」


書状を握りつぶし、投げつけた。

帰ってきた使者は震え上がり、氏直は書状を手に取り、読んだ。

氏直「これは」

氏政「弱小の大名達の分際で、我らを愚弄しておる。

打ち滅ぼしてくれるわ、氏直、氏邦と共に上州を切り取れ、よいな」

氏政は出て行った。


氏直は改めて、戦書を読んだ。

『真田は弱小の大名とはいえ、長らく武田家に仕えてきた家だし、内藤も同じだ、それに真田当主の昌幸は信玄より薫陶を受けた人物、あなどるのは危険ではないか。

内藤は武田の副将、昌豊の子だ。

何かしらの薫陶を受けていよう。

舐めてかかると危険ではないか。』


大道寺政繁「確かに、ですが、攻めない理由には」


氏直は溜息をつき、「兵力は2万で行こう、

出来るだけ、規模を少なくしておきたい、

これからの季節、雨が多くなる。

利根川は危険だ。」


家臣達は頷いた。


氏直「ところで風魔はどうした。最近、姿を見せぬが」


松田憲秀「何処を探っているのでござろう。

気にすることはありますまい」


氏直は不安を覚えてたが、慌て打ち消した。

この不安が現実になる日は近いうちに訪れることになる。


氏直は大道寺、猪俣らを擁して出陣した。

未曾有の大敗北を喫し、武田家の上州での復興を全国に知らしめることになる。

信勝としては予想より早くなったとボヤくことになるが。





















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