時間稼ぎ
上野国 岩櫃城
昌幸は信勝から受けた相談を、自身の部屋に戻って考えていた。
『信勝様、変わられた。
変わられたことで殻を自身で破られたか。』
フッと笑みが溢れた。
『面白い』
佐助が現れた。
「殿、私を呼ぶとは、如何なされました」
昌幸「御主らの力を借りて、やって貰いたいことがある。
若殿に似た背格好で亡くなった年端の若者の死体に細工をせよ。
これで噂を広めよ。
敵を欺くにはまず味方からよ」
佐助「甲斐、信濃、越後に流れますが」
昌幸「ふむ、信用出来る者には流す、出来る限り、今回の噂は北條の目の信用を失くすために計るの同時に、遺臣の動きを探るいや試すための物になる、あるいは、徳川や織田の忍びすらも調略にかける物にもなる。
情報の真偽に時間がかかればかかるほど時間を費やす、時間稼ぎにはなる。
戦力の回復は測れる」
佐助は頷き、昌幸の元を離れた。
程なく、噂が流れ、それと同時に死体が上がり、武田氏の滅亡を信じる者が増えた。
相模の国 小田原城
北條氏の居城、北條氏政はとある報告を重臣から受けていた。
武田信勝が亡くなったと言う。
確認したところ、死体も上がり、信憑性は高い。
そんな中、北條の忍び集団の頭領、風魔小太郎が現れていた。
氏政「信勝の死は本当のようだ。」
小太郎「しかし、死体におかしな点と何故今になって上がったのか、不明な点がありますれば、確認しては、上州で生きていると言う話もありますれば」
氏政「匿ってたものも撃たれた、確認出来た間違いない、退がれ」
小太郎が退がらざるを得なかった。
氏政「あのような者ら、何故早雲玄瑞様は用いたのか、今後、取り継ぐ必要はない。」
と近臣に告げた
小太郎の情報は何度か齎されたが、今後取り上げることはなかった。