信勝の決意
上野 岩櫃城
昌幸が内藤昌月に面会している頃、信勝は一人思案にくれていた。
何故、武田家が滅びたのか。
武田家と織田家との違いは何なのか、を。
信勝は一人では埒があかないため、歳も近い、真田源三郎信幸と源次郎信繁を呼んだ。
信幸「信勝様、如何なされましたか」
信勝は座る様に促し、「少し相談と言うか、御主らの考えを聞きたいのだ」
信繁「兄上、とりあえず信勝様の話を聞いてみては如何ですか」
信幸は頷き、信勝「御主らに聞きたいのは、何故、武田家があのように坂道を転げ落ちていくかのように衰退したのか。
もう一つは武田家と織田家との違いは何かだ。
そこを反省材料として生かし、武田家復興をしないと、同じことを繰り返すだろう。
もう一つは織田家との違いた。
織田家という敵を知らなければ、どうにもならぬ。
一向宗を根切りにしているが、それ故、悪い印象を受けている。
何故、根切りを行なうのかを知らなければならない。
理由がある筈だ。」
信幸「確かに」
信繁も頷き、「信勝様、武田家と織田家との違いは、甲斐と尾張という地理的な要因もありました。
海があるとないとではやはり違います。
海があれば、他国との船を使った交易も可能です。
織田は多くの港を持ち、商業を発展させ、経済力を得ました。
多くの商人から銭を得て、軍事力の強化を図りました。」
信幸「兵と農民との分離を図り、経済力で兵を雇っている。
我々は戦は農繁期までと決められた期間で行なってきました。
織田はそれすら無視して、農繁期でも出征可能にしている。
一度、戦いになれば、結果は見るまでもありませぬ」
信勝「ムムム」
信繁「後は織田家の家臣について、武田家との違いは、信玄公が生きていた頃は他国が羨むほどの有能な武将がおりました。
現存する織田家の家臣に匹敵するか、それ以上の。
上杉や長篠で多くを失いました。
今回の滅亡で、ないに等しい。
若輩の私が言うことは、信勝様には耳が痛いことですが、織田との違いは有能な武将の力を引き出せるようにしている。
もう一つは、貴賎を問わない人材登用。
武士階級からは柴田勝家、丹羽長秀などがいますが、彼らと同じように重臣になっている者も存在しています。
信濃にいる滝川一益、浪人をしていた明智光秀、最たる者が百姓から出世して、柴田勝家と同じように一方面の総司令官になっている羽柴秀吉など。
名前を挙げてもわかるように貴賎は関係ありませぬ」
信勝「一から作り上げていかねばならない」
信繁「我らもいますし、旧臣達もいますので、彼らを軸に新しい人材登用なさいませ。」
信勝は頷いた。
信繁「父が土屋殿のところにいた猿楽師、なんて言ってたか、忘れたが、経理や作事、鉱山開発に見るべき物があったから登用すれば良かったと愚痴ってました。
勿体無いことだとも」
信幸「身なりは余りよくなかったため、勝頼様は登用しませんでしたが」
信勝「探し出して欲しいな。
他国からも有能な人材を集めていかなければならないし、引き抜くことを考えなければならないかな。
そう言えば、安房守は有能な忍びを持っているのか」
信幸「はい、我々も彼らを家臣の一人として優遇していますが」
信勝「そうか・・・」
信勝は密かに計画を立て、誓った
北條の忍び集団、風魔に調略をかけ、自身の耳目として使うことと、全てを失ったことで
武田家復興のために手段を選ばないことを