信勝の戦略
播磨 姫路城
羽柴筑前守秀吉は、伊勢長島、岐阜の両方の城が武田の手により落ちた報告を受けていた。
「凄まじいものだな、武田信勝、城を直接、攻めとるのではなく、その外枠から攻撃して、城の周囲を攻めとる。
補給、情報を遮断して、孤立させる。
滝川左近将監は恐らく、先の長島一向宗の殲滅を見ているから、自身が如何なる目に合うか、想像がついたのだろう。」
官兵衛が頷き、「池田殿もですな、飛騨、南信濃、尾張の三方向から進入を受けたら、岐阜城は包囲される、西美濃に武田信勝の調略がどのくらい進んでいるかは不明。
包囲殲滅を想像したがゆえに、退却したと見るべきかと」
秀吉は厄介な敵を産みだしたと思わざるを得なかった。
「ところで、毛利は何か」
官兵衛は頷き、「いえ、両川の対立は深いのと、恵瓊殿は、織田ではなく、羽柴との連携を言っている、と」
「揉めているようだな、まあ、良い、権六は上杉、武田にかかりきり、毛利は両川が揉めてくれれば、儂は両方を見ながら、動ける、
官兵衛、恵瓊殿に、織田からの独立を画策していることを暗に示せ。
密かに兵を国境に毛利軍を我が方に向けて欲しい。
これは権六からの呼び出しを避けるためだ。
毛利とはことを構えぬ、あえて、国境に緊張があると見せかける。
武田信勝との戦いは権六に任せ、儂はその間に播磨、但馬、因幡、美作、備前、淡路を固める。」
官兵衛「独立への一歩ですな、もし、武田が勝てば、どう」
秀吉は笑い、「天下を狙うより、家を保つことを考えるわ、頭を下げてな」
秀吉は羽柴の家を保てるように動き、武田の中で生き残ることを考え始めていた。
遠江 浜松城
信勝は滝川、池田勢が近江に退いたとの報告を受けていた。
「二人は想像力が豊かだ、しかし、兵力は大きい。
しかし、一戦も交えず、退いたら柴田が如何に思うかだな」
昌幸「悪く言いそうですな」
信勝「柴田が自身の傲慢さで、孤立してくれれば、戦いやすくなる、それを祈ろう」
信勝は柴田の欠点をついて、戦いやすくする方法を思案していた。
昌幸が席を立ち、二人の妻が鬼の形相をして、信勝の部屋に入ってくるまでの間




