尾張の失陥
三河 織田信雄 本陣
信雄は夜、喧騒の中、目覚めた。
「何事だ」
家臣の一人がやってきて、「信雄様、一大事でございます、武田、徳川勢が夜襲を仕掛けて参りました。
既に、我が軍は混乱をきたしており、同士討ちも起こしており、ここも危うございます。
尾張へ撤退なさいませ。」
信雄は驚き、「くそ、とにかく、撤退だ。」
信雄は馬を捜したが、見つからず、ある一人の武士に馬を貸せと命じたが、見事に断わられたという。
信雄は兵を立て直すことはままならず、何とか尾張の国境まで僅かな兵を率いて、落ちていき、滝川雄利、津川義冬の軍に保護された。
信雄「何とか助かった、伏兵に何度もあったゆえ、兵を立て直して」
雄利「無理です。兵は五千しかありません、すぐに兵を率いて清洲城に戻りましょう」
信雄「しかし」
雄利「兵も少ないのです、致し方ありません」
信雄は黙りこんでしまった。
義冬は残り、逃げ遅れた兵を収容し、雄利は兵を纏めて、清洲城へ戻ることになった。
信雄「あの武士めも、信勝、許さん、必ず」
清洲城が既に酒井忠次、那古野城が榊原康政
、鳴海城が依田信審、小牧山城が井伊直政らの手に落ちたことに気づてなかった。
尾張 清洲城
信雄は何とか戻ってきた。
信雄「おい、門番、城門を開けよ、信雄が戻った」
しばらくして、城壁に一斉に徳川と武田の旗印が上がり、大手門には一人の武将が立っていた。
酒井忠次であった。
忠次「信雄、何を寝ぼけたことを吐かしている。
すでに貴様らが帰る所はない」
雄利「まさか」
忠次「すでに、貴様らが全軍で三河に押し寄せた隙に取らせて貰った。
それ、者共、討ちとれ」
徳川勢が押し寄せてきた。
信雄は「わわわ」
雄利「くっ、とりあえず那古野に参りましょう」
那古野、鳴海、小牧山と逃げのびたが、主だった尾張の城は悉く奪われ、何とか信雄らは、美濃に逃れた。
逃れた兵は僅か五百程度しか残らなかった。




