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勝頼の決断

天正十年三月

甲斐の国 新府城



甲斐の国の神代、武田勝頼は苦悶と焦慮の表情を浮かべていた。

小笠原信嶺らが武田家を裏切った。

木曽義昌も。

木曽義昌、姉が嫁いでいるのに、信長の調略で織田に寝返るとは。

甲斐に戻り、今度は一門衆筆頭の穴山梅雪まで徳川に寝返った。

このまま、行けば、名門武田家は滅びる。

父、信玄を始めとする祖先達に申し訳がたたない。


真田昌幸は岩櫃城へ、落ち延び、捲土重来を期すように。


小山田信茂は岩殿城へと言う。


落ち延び先は二つだ。

どちらに落ち延びるか。

裏切る可能性は分からない

儂と息子の信勝、別行動を取るようにするのも一つの手ではある。

武田家は生き残ることを優先しよう。

再び、武田の旗をどちらかが掲げることになろう。

とりあえず、昌幸を呼ぼう。



しばらくして、昌幸がやってきた。


昌幸「お屋形様、如何なされましたか。」


勝頼「儂は岩殿城に向かう。」


昌幸「なりませぬ、岩殿城は」


勝頼「昌幸、最後まで聴け、だが、信勝は岩殿城には行かぬ、お主に預ける。」


昌幸は驚愕の表情を浮かべた。


勝頼は頷き、「お主は我が父、信玄の教えを受けた。

その恩もあろう。

お主は他の信濃の豪族達は裏切っても、ここまでつき従ってきた以上、裏切ることはあるまい。

だからこそ、お主を信じて預ける。

領主としての、大名としての、名門武田家の名に恥じぬように教育して欲しい。」


昌幸「お屋形様」


昌幸は勝頼の懇願に負け、「確かにお預かり致します。

必ず、お迎えに」


勝頼は頷き、「真田の人質も同じく解放する、源三郎、源次郎も連れて行け、さらばだ、安房守」


勝頼は立ち上がり、離れて行った、信勝を説得するために。



勝頼は信勝の部屋に来ていた。


信勝「父上、如何なされましたか」


勝頼「話があってな、明日、儂は岩殿城に向かう」

信勝は頷き、続けて「だが、お主は連れて行かぬ。」


信勝「何故にございますか」


勝頼「お主は、明日真田安房守と共に、岩櫃城に向かえ、武田家を滅ぼさぬ道を取らねばならぬ、布石をしいて置く。

別行動を取るのだ。」


信勝「父上」


勝頼「儂が死んだら、必ず仇を取れ。

裏切り者達の首を墓前に供えよ。

父、信玄の果たし得なかった夢を果たせ」


信勝は泣きながら、「父上」


これが勝頼と信勝の今生の別れになるとは、信勝はこの時思わなかった。
















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