第4話 クラス召喚①
とある学校のとある教室。その中で話す生徒が二人。
「でさ〜その時のさっちゃんの顔が爆笑もんでよ、俺思わず腹抱えて笑っちまったし」
笑いながら話すのは出席番号8番、佐藤智也。茶色に染めた髪が特徴の男子生徒だが、決して不良ではない
「なんだよそれ、アホ過ぎんだろさっちゃん
流石、我が校誇る天然教師」
つられて笑うのは出席番号24番、間宮和人。彼は陸上部のエースで、家では妹思いの良い兄。
教室に響く男子生徒の笑い声。
そんな男子に声をかける女生徒が一人。
「智也ー、なんの話をしてるのー?」
男子に声をかけるのは出席番号16番、立花香奈子。学校でも上位に組する美少女で、誰にでも気兼ねなく話してくれるクラスのムードメーカー。
「やめなよ香奈子
どうせまた先生をからかった話でもしてるんでしょ」
「ちげーし!変な疑いをかけるな!」
何気無い会話、彼らの日常。その当たり前な毎日が今日、終わるなどこの時は誰も知らない。
ガラガラ
「はいはーい、席に座ってー!ホームルーム始めるよー!」
教室のドアを開き、元気に声を上げながら入ってきた女性。
彼女は、去年この学校に赴任して来た新米の教師で、この2年B組の担任である川澄サチ子だ。
サチ子は、まだ話している生徒を注意しながら教壇の上に立つと、日課である朝のHRを始めた。
「みんな座ったねー?それじゃ朝の出席をとるよー!」
サチ子はそう言うと、手に持っていた生徒名簿を読み上げる。
「朝倉さん」
生徒の名前を呼ぶが誰も答えようとしない。
「あれー?朝倉さん?朝倉涼子さーん?」
「さっちゃん先生ー、朝倉さんは隣のC組ですよー」
「え!嘘!?間違ってC組の持ってきちゃった!」
サチ子がそういうと、クラスに笑い声が広がる。
「さっちゃんまたかよー」
「これで今月何回目だー?」
「ふむ、僕が数えた数によると今月で、13回目ですね」
「それってほぼ毎日じゃねーか!」
生徒の声が飛び交う。
サチ子は申し訳なさそうな顔をすると
「ごめんねー!今取り替えてくるから!」
バタバタと急ぎながら、教室を後にするサチ子。
ドアが閉まると同時に、生徒たちがざわざわと話し始める。
「相変わらず天然ねーさっちゃん先生は。少しはなおらないのかしら?」
そう言ったのはクラス番号6番、川崎怜美。ツインテールな彼女はクラスの委員長で、香奈子の親友でもある。
そんな彼女に和人は
「そこがいいんだろ、わかってないな~」
と、言った。
怜美は、呆れながら
「はいはい男子はみんなあんなのか好きなんでしょ 」
「ちょっと待て、俺は和人みたくさっちゃん崇拝者じゃねーぞ」
「智也も同じようなものでしょ」
「はぁ?どこがだよ?」
「毎朝毎朝、飽きもせずさっちゃん先生について話してるのは誰よ?」
「・・・・・・」
「ほら同じゃない」
そんな雑談をしていると、ガラガラと音をたててドアが開いた。先生が来たかと思い、智也達は見るがそこに立っていたのは一人の男子生徒だった。
男子生徒の髪はボサボサで長く、目元まで隠れており、身体はガリガリに痩せた、見るからに不健康そうな生徒だった。
彼は出席番号10番、菅守時雨。趣味は漫画やアニメ。クラスではあまり人とは話さず、いつも独りで本を読んでいた。
時雨は、皆の視線から避けるように自分の席に移動すると、いつもの様に本を読み始めた。
すると、彼に数人の男子が近づいて来た。
彼らはニヤニヤと笑いながら時雨にこう言った。
「いよぉ〜、おまえまた学校に来たのかよ」