第二話 お前を連れてきてやはり正解だった!!
ピチョン
水滴が天楽の頬に落ち、天楽の意識が覚醒する。
「ん・・・・・」
天楽が目を覚ます。
・・・身体は・・・どこにも異常はないな。気分も悪くはない。音も静かだ。どうやら周りに人はいなさそうだ。
「どうやら無事、異世界に召喚されたみたいだな」
天楽は自分の身体を確かめてどこにも怪我がないことを確認すると、起き上がり周りを見渡した。
右を見ても左を見ても、薄暗く、視界が良く見えない・・・足元には砂利やら石がころがっているし、どこかの洞窟にでも飛ばされたのか?
「一先ず、(アイツ)を探さないとな。あのクソアマが言うには召喚した時にはいるはずなんだが・・・」
天楽は、一緒に召喚されたはずの猫を捜すため歩き始める。
「しかしホント暗くて歩きずらいな・・・魔物もいるみたいだし、あのクソアマ召喚するならもっとマシなとこに送れっての」
自分を送った女神をぼやきながら、歩き続ける天楽。すると・・・
ニャー
どこからか聞き覚えのある鳴き声が聞こえ、足を止める。
「お?おーい、いるのかー?」
声をあげて、呼びかけてみると、それに答えるかのように、ニャー、と鳴き声が聞こえてくる。
「今、そっちに行くからなーそこでまってろ-」
天楽は、鳴き声のする方向へ走り始める。すると出口が近いのか周りが明るくなっていき、さらに進むと外の景色が見える出口とともに、一匹の三毛猫がそこにいた。
「やっと見つけた。すまなかったな。面倒事に巻き込んで」
天楽は、猫に謝るが猫はまるで気にしてないかのように、天楽の肩に飛び乗り、ペロペロと、自分の顔を洗い始めた。
まぁ、お前はそんなこと気にしないか。
「ところでお前、何を背中に着けてんだ?」
先ほどから猫の背中にはポーチみたいなものがぶら下っている。当然ながらそんなものは、着けた覚えがない。十中八九、あのクソアマが着けたんだろう。
「どれどれ・・・」
猫の背中からポーチを外し、中を確認する。
「これはナイフか・・・?こっちはおそらく金だろうな。・・・ん?この紙は何だ?」
中にはナイフが一本、銀色の硬貨が数枚・・・そして一枚の紙が入っていた。
紙を開いて読んでみると、どうやらクソアマからのメッセージのようだ。
「えっと何々?」
[千生天楽さんへ
これを読んでいるということは無事、貴方は猫さんと合流できたということですね。よくできました。
ポーチの中には、ナイフとその世界でのお金が入っています。感謝してください。
そこから南南西に向かったところに、サフランという街がありますので最初に街へ向かうならそちらがいいと思います。ちなみに歩いて一週間ほどかかりますので精々頑張ってください。]
・・・なんかちょいちょいウザいのはいってんな
[追伸
お腹空きました。]
「知らねぇよ!!」
紙をビリビリと破き、叫ぶ天楽。
なんだよお腹へったって。こいつキャラ変わってんだろ。さっきまでのいかにも神様みたいなキャラどうしたよ。
はぁ、 いいや取り敢えず街に行こう。
「にしても、右も左も崖ばっかだな。ホントどこだよここ・・・」
ニャー
「どうした?」
街に行こうと歩き出すと、猫が鳴き始めた。
猫は俺が出てきた洞窟をジッと見ている。
「洞窟の中に何かあるのか?」
そう思い、洞窟の中に入ろうとすると・・・
「UGAAAAAAAAAAA!!!」
頭に角を生やし、体長三メートルはあると思われる全身赤色の人みたいな奴が、棍棒を持って現れた。
・・・ファ?!
俺が急な事に呆然としてると、その赤い人?は棍棒を大きく振り上げて・・・ってちょっと待ったぁ!!!
「回避ィィ!!」
ギリギリの所で右に避けると、後ろから物凄い衝撃と音が聞こえる。
ズガァン!!
振り返ってみると、つい先程まで自分がいたところに棍棒がめり込んでいて、周りの地面が少し吹き飛んでいた。
え!?何!?なんなの!?誰この人?急に襲い掛かってきたんだけど!?
「フシュルゥゥゥ〜」
赤い人?は血走った目をこちらにギョロリと向けてきた。
ヤダこの人怖い
「UGAAAAA!!!」
赤い人?はゆっくりと体勢を直すと、再度雄叫びをあげ、こちらに歩いて来た・・・って、こっち向かって来やがった!
「三十六計逃げるにしかず!!」
今までに、出会ったことのない変人?を目のあたりにし、 即座に全力で走る天楽。
だが悲しいことに、彼は足が遅かった。
「ヤベェ!これじゃ追い付かれちまう!」
後ろには歩いているのにも関わらず、自分と同じ、またはそれ以上に速く移動してくる赤い人の姿が
何か手はないのか!このままだと召喚されて一日もたたないうちにゲームオーバーだ!
周りに何かないかと探してみるが、そこには崖しか見当たらなかった。
・・・クソッ!右も左も崖ばかりで、なんも使えそうなもんがねぇ!
必死に頭を使い、何か案はないかと模索していると、あることを思い出す。
そうだ、[力]だ!俺にはクソアマの言っていた[力]があった筈だ!
女神の言っていた[力]があればこの状況を何とかできるかもしれない!!
「よぉし!そうと決まれば、早速行動だ!」
走る足を止め、振り返る天楽。後ろには棍棒を担ぎながら向かってくる赤い人。
天楽は、自分を追い詰めるその者に向かって大きく腕を向けて、この恐怖から脱しようとする。
「ハッハッハァ!!どうやらお前の運もここまでだったようだな!」
高まる天楽のテンション。
そして無謀にも、この俺に襲い掛かってくるこの哀れな者に、終焉を与えようとしたその時!
俺はあることに気付いた。
「・・・・・・あ、そういやどうやって使うかしらねぇ」
気づいたときは、時すでに遅し、赤い人が俺の目の前で棍棒を高々に振り上げていた。
二メートルを超える棍棒が天楽の頭を潰そうとし、無情にも振り下ろされる。
さよなら我が人生、来世では猫に生まれ変わりますように。
天楽は、人生を諦めて死を覚悟した・・・その時だった。
フシャー!
急に天楽の肩に乗っていた猫が飛び出し、赤い人の顔を引っ掻いた。
「GUGAAAA!?」
予想外のことに赤い人は暴れだす。だが猫の爪が目に入ったのか、顔を抑えフラフラと右へ右へとよろける。そして・・・
「GUGAA!?」
そのまま赤い人は崖から落ちていった。
・・・え?まじで?
シリアス?粉砕+猫スゲェェェェ!!!!