何故かデートイベントが発生してます
ひっそりと更新します
大変お待たせしました
駅前広場の噴水の前。
待ち合わせ場所の定番になっているそこに、私は立っていた。
「おっはよー!!」
いつの間にか聞き慣れてしまった声が聞こえて、溜め息を吐きつつ振り返ると、ヒロインが手を振りながら近付いて来る。
六月中旬の週末。
私、八重山詩音は――何故かデートイベントを発生させられています。
原作の乙女ゲームでこのデートイベントが起こるのは、個別ルートに入り、尚且つ、そのルートの攻略対象者の好感度をある程度上げなければならないので、本来最速でも夏休み以降のはずなのだ。
しかし、ヒロインが男というよく分からないことが起き、ヒロインが『悪役令嬢 八重山詩音ルート(笑)』に入るという意味不明なことが起きた結果。デートイベントの前倒しということが起こったと思うんだけど。
……冷静に考えると、デートイベントが起こっているということは、私、ヒロインにちょっと攻略されてる!?
いやいやいや。だって私、デートに誘われた時、全力で拒否したし!!
じゃあ何で、今デートイベントが起きてるんだと言われれば。半ば強制的にOKさせられたというか何というか……。ま、まあ、良いじゃないか! そこは!
ということで、私、絶賛今すぐ家に帰りたい所存でございます。というか、ここはあまり近寄りたくないんですよねぇ。なぜなら、攻略対象者がよくいるんですよ。
「おい、詩音じゃないか。こんなところで何をしているんだ」
ああ、ほら。学校が休みなのにわざわざ聞きたくない声がするよ。
「あら。青山さまではいらっしゃいませんか。私が何をしてようと関係ないのでは?」
コイツがいるんですよねーーーー。ここ。
週末のお出かけで一定の確率で攻略対象に会える本ゲーム。
駅前広場は攻略対象者の青山樹里と出会う確率が多いのだ!
彼は、青山財閥のご子息で17歳、高校3年生の生徒会長ポジである。
そして――――
「お前、久々にあった婚約者に対してその態度はなんだ?」
婚約者なんですよね―――――。悪役令嬢の八重山詩音と。
「久々とは言いますが、2週間前にお茶会をしたばかりではありませんか」
「2週間も前だろ」
あー。これは説教パターンだぞ~。コイツ、面倒なんだよな。
「ねえ。さっきから私を無視して誰と話しているの?」
真横にヒロインがいるの忘れてた!
「あ、白石さん。こんなのはほっておいてさっさといきましょ」
「こんなのとはなんだ」
「あ、樹里じゃないか。お前、詩音に何の用?」
「白石さん、男になってますわよ!?」
ばれちゃうよ! 見た目は天使でもそのドスの聞いた声だしちゃばれちゃう!!
「いいんだよ。樹里にはもうばれてるから」
「え?」
思わず、婚約者の顔を見る。
「うむ。白石のことは学園長から聞いている。女子のふりをするから助けてやってほしいとのことだ」
「えぇ。学園長公認だったの……」
そういえば、体育の授業などよく休んでいるが単位を貰えていることが不思議だったのだ。
学園公認の女装ということ……?
「じゃあ、こんなやつほっておいて買い物に行こう!」
ヒロインはそんなことを明るく言うと私の腕に巻き付いてきた。うわっ。
「近いんですわ」
と、いいつつこの場から立ち去りたいので彼女につれられるようにこの場をさろうとすると
「おい」
――――なぜか婚約者が私の肩をつかんでおりますわ!
「お前、話は終わってないだろう」
「おおおおお、終わっていますわ!!!」
こいつ、私が耳弱いの知ってわざと耳のそばでささやきやがって。
「やっと会えたんだ。お前に話がある」
「だから、2週間前にも会いましたって」
「違うな」
は???
思わず、怪訝な顔になる。
「”お前”に会うのは、10年ぶりだぞ。やっと会えたぞ。俺の唯一」
は? 何言ってるの?
この夏の猛暑でさっそくいかれてらっしゃる。
もうわかんない。
なんでこうなるの――――。私は原作通りに行動しなきゃいけないのに……。
次回は今月中目安です