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不機嫌  作者: 岸野果絵
3/3

おまけ

 台所で、クレメンスが洗い物をしていると、食事を終えたロジーナが食器を持ってやってきた。

 クレメンスは、食器を渡せというように、流しの前に立ったままロジーナの方へ手を出した。


「ありがとう」

 ロジーナはクレメンスに食器を渡すと、ふきんをとって、水切りに並んでいる食器を拭きはじめた。

二人はそれぞれの仕事を黙々とこなす。

 クレメンスは洗い物が終わると、シンクを磨きはじめた。

 ロジーナは食器棚の前に移動すると、食器をしまいはじめる。


 食器棚の一番上に食器をしまおうとして、ロジーナが背伸びをしたときだった。

 不意に、ロジーナの持った食器に背後から手が添えられた。

 ロジーナは食器から手を離す。

 クレメンスはロジーナの持っていた食器をを受け取ると棚の中にしまった。

そして、背伸びを止めて振り向こうとしたロジーナを、後ろから抱きしめた。


「私のことを嫌いにならないでくれ」

 苦しげな吐息で、ロジーナにささやく。

 ロジーナは両手でクレメンスの腕を握ると、フルフルと首を横に振った。

「私は冷酷な人間だ。利用できるものは何でも利用する。不要なモノは何のためらいもなく切り捨てる」

 クレメンスはロジーナの後頭部に額をつけ、その髪に顔をうずめる。


「違うわ。あなたはとても優しくて、繊細な人よ。嫌いになんかなれるはずない」

 ロジーナは強引に向きを変えると、クレメンスの首に手を回す。

「知れば知るほど好きになるの」

 見上げるようにして、クレメンスの紫色の瞳をじっと見つめる。


「ロジーナ」

 クレメンスはロジーナの瞳に吸い寄せられるように見つめ返すと、ロジーナの髪を優しくなでた。

「お前だけなのだ。私にはお前しかいない」

ロジーナの腰に手を回し、力強く抱きしめる。


「私は男だ。魅力的な女性が目の前を通れば、つい本能的にそちらを見てしまう。だが、すぐに気がつくのだ。お前ほど魅力的な女性はこの世にはいない。お前はいつだって私の心を捕らえて離さない。お前は私にとってただ一人の女性だ」

 クレメンスは腕を緩めた。

 ロジーナが顔を上げる。


「愛している。お前の全てが愛おしい」

 クレメンスが情熱に染まった熱い瞳でロジーナを見つめる。

 ロジーナは、クレメンスを見つめる瞳を潤ませながら、ニッコリと微笑んだ。

そして、伸び上がるようにして、クレメンスの唇に自分の唇を重ねる。

 クレメンスはそれに応えるように腕に力を込めた。

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