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紳士の一日

 我輩はいま、息を潜めて木陰に身を隠している。

 三抱えもありそうな木に体重を預け、その影から標的の様子を伺う。

 軽めの装備に身を包んだ<森呪遣い>らしき女性は召還した植物の精を傍らに、警戒しながら歩いている。

 女性はおっとり系の美人さんで、明るい青の髪に隠された顔はおどおどした仕草も相まってひどく興味を惹かれる。

 ふ、まったく……。

 回復職の一人旅だなんて、なんと無謀なことを。

 我輩はにやり、とほくそ笑むと全速力で駆け出す。

 女性は我輩が走り寄る音に気づき、こちらを見たがもう遅い!

 高笑いを上げながら我輩は襲いかかる!

「きゃあああああ!! 変態!!」

 ……全裸で!



 いや、この表現は誤解を招く。

 全裸とは言ってもゲーム的な意味での全裸、つまり無装備状態である。

 見た目を変えられるゲームなど、昨今珍しくもなんともないが、なにも装備していないからと言って、キャラクターは生まれたままの姿で表示されるだろうか?

 否! 最低でも男性キャラならひとつ、女性キャラならふたつ下着を身につけているはずだ。

 ……つまり、いまの我輩の姿はそういうものだと思ってもらって相違ない。

 ブーメランパンツのみを身に纏い、惜しげもなく肉体美を披露する<武闘家>。

 それが我が輩である!

「な、なんでっ! 攻撃が当たらないのっ! よぉ!」

 我輩の鍛え上げられた芸術品マッスルに顔を赤くさせながら、女性はぶんぶんと短杖(ワンド)を振り回すがその杖は我輩に掠ることさえない。

「無駄である! そんな目を背けながらの攻撃など当たる方が難しいのである!」

 芸術品は見ることさえ恐れ多い、そんな気持ちもわからんではないが、戦いである以上観察を疎かにするのは悪手なのである!

 <モンキーステップ>と<ファントムステップ>を組み合わせ、女性の渾身の一振りをおちょくるように回避すると、女性の首筋に汗の珠が流れ、女性はずり落ちたメガネを上げ直す。

 うむ、その仕草もまた美し!

「物理が、当たらない、ならっ!」

 女性は植物の精を盾に距離を取ると、詠唱を始める。

 物理が当たらないなら魔法であるか! その選択は当然であるな!

 短い詠唱を終え、魔力を迸らせる女性はまだ赤い顔をこちらに向けて、特技名を叫ぶ!

「<ウィロースピリット>!!」

 すると辺りの草が急成長し始めるではないか!

 <ウィロースピリット>は対象の動きを阻害する魔法である。

 成功すれば一定時間対象はツタから逃れようともがくことしかできず、失敗しても急成長した植物は足に絡まり、移動速度を落とさせる。

 なるほど、確かに我輩のような機動力重視のビルドには有効である!

 ……しかし。

「甘いのである!」

 我輩を束縛せんと襲い来るツタに合わせ、我輩は全身に力を込める!

「ふん!」

 決まった! フロント・ダブルバイ・セップス!

 見事なポージングを決めた我が肉体は一際大きく輝き、我輩を絡め取ろうとしたツタはその力を失いへたっていく。

 神聖なる肉体美(マッスル)はどんな束縛も受け付けない!

「うそ……なんで……?」

 がくりと肩を落とす女性を見て、我輩はふふん、と鼻を鳴らす。

 我輩の上腕三頭筋に魅了されているようであるな!

 しかし、戦闘中に隙を見せるのはいささか覚悟(マッスル)が足りおらん!

「<ワイヴァーンキック>!」

 我輩は主を守ろうと身を挺する精の脇を抜け、一足飛びに女性の脇に着地する!

 女性は慌てて魔法を唱えようとするが、もう遅い。

 我輩は大きく振りかぶり、右腕を振り抜く!

 これで、終わりである!

 ぶおん、と風を切りながら迫り来る拳に怯え、目をつむる女性。

 ……しかして、衝撃が訪れることはなかった。

 その代わり。

「……黒!」

「……え?」

 女性の身につけるローブはめくられ、下腹部までの白い肌を大気に晒していた。

 ……ふむ。 なかなか。

「……っ!?」

「よいものを見せてもらった! これからも精進を怠らぬよう! ではさらば!」

 悲鳴が聞こえるよりも先に、我輩は全速力でその場を後にしたのだった!



 いやいや、またしても誤解を解くために言葉を尽くす必要がありそうだ。

 我輩も好き好んでこんな真似をしているわけではないのだ。

 無装備の利点、やたら高い機動力を生かして十分に距離をとった我輩は辺りを伺いながら、誰にともなく言い訳を始める。

 我輩の肉体(マッスル)は女性を守るためにこそあれ、傷つけるつもりなど毛頭ない。

 それなのになぜこんなことをしているかと言えば、我輩一人ではすべての女性を守りきることができないからである。

 望むと望まざるに関わらず、この世界の女性は街から一歩出れば死ぬはおろか、もっとひどい目に遭う危険に晒されている。

 本来ならば世の男どもが守るべきなのであろうが、いつでもそうあれるわけでもないのが世の常である。

 ならば。

 我輩は自分で泥を被ってまで女性たち、とりわけソロで街の外を冒険する女性たちに自衛意識を持ってもらいたくてこんなことをしているのである。

 山を作っている瓦礫――神代の遺物に登り、その頂上で顎を撫でる。

 自分で言うのもなんであるが、(ほぼ)全裸でスカートめくりに来る男に襲われる経験があれば、大抵のプレイヤーとは渡り合えるであろう。

 決して、我輩は好き好んでこんな真似をしているわけではないのだ!

 そう、これは慈善事業であり誰にも……少なくともこの事態を黙って見ている輩に何か言われる筋合いはないのである!

 じゃあ、まあ、そんな感じで。

 我輩が見下ろす先には大猪相手に一歩も引かず応戦している和鎧姿の女性。

 ……ラウンド2、である。



「せいやァっ!」

 気合の入った一閃は蒼く煌めくエフェクトを纏って大猪に襲いかかる。

 何度か猪の突進を受け止めたのであろう、鎧は所々泥にまみれ、傷ついている。 それはつまり、現実の猪より二回りも三回りも大きいモンスターに怯えずに相手に出来ているということだ。

 なるほど、今回の相手はなかなかやるようだ。

 しかし、だからと我輩が躊躇することはない。

 モンスターを相手取ることとプレイヤーを相手取ることは、似ていても全くの別物だからだ!

 一撃、もう一撃と着実に攻撃を加え、あと一発で大猪倒せる、所まで来てとどめのために女性が距離を取ったその時。

 ……我輩の不意打ち(アンブッシュ)である!

「ふん!」

 猛烈な勢いで二者の間に割って入り、見事なポージングを決めた我輩!

 なんと見事なサイド・チェスト! 我ながら惚れ惚れするのである!

 女性が呆然と見ている傍ら、大猪は我輩の乱入を好機と見たか、はたまた美しき筋肉に恐れをなしたか、すぐさま逃げ出していった。

「あ、アタシの獲物を! このヤロウ!」

 ただ呆けていた女性は逃げる大猪を追いかけるように、<武士>の持つ数少ない遠距離技<飯綱切り>を放つ。

 空気を切り裂くように、いやこれは空気を固めているのだろうか。 一直線に大猪に追いすがる斬撃は、けれども目標に到達することはなかった。

 何故なら我輩がその身を割り込ませ、見事なポージングを決めたからだ!

 我輩の輝く肌に打ち消され、わずかに傷をつけつつも霧消する斬撃! うむ、今日はいつになく調子がよい!

 女性もさぞや感心しているだろうと自分の世界から抜けだすと、女性はあからさまにこちらを警戒していた。

「てめえ……<裸族>か。 無装備でそのダメージはあり得ねぇだろ」

 ほう、よもや知ってる者が居ろうとは!

「いかにも! 我輩のサブ職は防具を装備しない時に限って効果を発揮する<裸族>である!」

 看破されたとあっては、あえて隠す理由もない。 我輩は堂々と言ってのけた。

 立ち回りから薄々感づいてはいたが、やはりこの女性なかなかのベテランのようだ!

「だが……ナメてんのか? 武器は装備しても問題ねぇはずだぜ?」

 うむ、そこまで知っておったか。

「左様。 しかし決して貴女を侮っているわけではない! 女性を傷つけないのは我輩のポリシーであるからして!」

「それがナメてるっつってんだ、よッ!」

 答えた途端、容赦なく女性は斬りかかってくる!

 太刀筋が瞼に焼き付くような、見事な一振りである!

 我輩は<ファントムステップ>を発動させ、女性を中心にして右回りに円を描くように避ける。

「ちっ、流石に速いな……。 これなら、どうだっ!」

 女性は攻撃速度を上げる特技、<瞬閃>を発動させて威力より手数を重視した連撃を繰り出す。

 ぐ、思っていたよりやるのである。 肉体性が加わったことによりレベルと戦闘の巧さは必ずしも関係ない。 とはいえ、判断力といい胆力といい……この分ではレイド経験もあるのではなかろうか?

 そう思うと女性の鎧姿ひどくしっくり来るように思われる。 他のプレイヤーのような装備に着られている感じもなく、あるべき姿に落ちついているのだ。

 ……余談ではあるが、鎧やローブ等、元の世界ではコスプレでもあまり見られなかった類の装いであるが、もしあったとしてもこの世界ほど女性の美しさを引き出しは出来ないと思うのである。

 徐々にフェイントも織り交ぜ、その刃は確実に我輩の肌に近づいてくる。

 だがまだだ、まだ及ばぬ。 回避に専念する<裸族>を捉えられる攻撃など存在しないのだ!

「ふはは、その程度か! 大口を叩いた割にまだ一太刀も入れられていないではない、かっ?」

 あ、まずい。 言うほど余裕がない中、あえて煽ろうとしたところ足下の窪みに踵をひっかけてしまった!

 ぐらり、と後ろに我輩の体が傾く。 このまま後転して体勢を整えたいところであるが、そうは問屋が卸すまい。

 女性はにやり、と笑いを浮かべると刀を突きをする形に構える。

「減らず口を閉じさせてやんよっ! <百舌の早贄>っ!」

 構えた刀が躊躇無く我輩の首筋めがけて突き出される!

 この女性は少しは躊躇いというものがないのか!? 高速で目の前に迫り来る真剣に対し、我輩が反射的にした行動は幸いにその場での最善手であったと思う。

「ふんっっ!!」

 またしてもポージング! 体勢を崩しながらの苦し紛れの一手であったためにそのまま後ろに倒れ込んでしまうが、輝く筋肉は確かに凶悪な斬撃に耐えきる!

 あ、危ない所だった……! そのまま華麗に後方一回転して、再びファイティングポーズを取る。

「ふ、な、なかなかやるではないか」

「なんでてめえ沈黙が効いて……ちっ、そういやそんなのもあったっけかな。」

「い、いかにも。 <マッスル・ガード>である。」

 ネタ系に特化している<裸族>の固有特技群のうち、数少ない有用特技。

 全身の筋肉を硬直させることにより、僅かな時間だけダメージを割合でカットし、追加効果を無効化する防御特技である。

 フレーバーテキストは「鍛え抜かれた筋肉はあらゆる束縛を受け付けない! 何者も、その筋肉を汚すことはできないのだ!」

 ……制作側も裸族とボディビルダーを混同(意図的かどうかはともかく)していることがわかる文である。

「……どうやら、そろそろ決着の時間のようであるな」

 この特技は我輩の言わば奥の手。 再使用規制時間はそう長くないとはいえ、まさか純粋な戦闘でこの特技まで引っ張り出されるとは思っていなかった。

「あァ、そうさな。」

 対する女性もやっと訪れたチャンスを、いくらかダメージを加えた程度に抑えられてしまっている。 我輩は防具を装備していないだけあって、なかなかの痛手ではあるがすぐさま決着がつくほどではない。 一発が重い<武士>の攻撃であっても一撃は耐えられるであろう。

 もともと、防御に集中している我輩の守りはそう崩せるものではないのだ。 それに加え、我輩はそもそもの機動力が普通の冒険者とは比べものにならぬほど高い。

 逃げようと思えばいつでも逃げられた、いや今から始まる一幕の後でも逃げおおせるであろう。

 だから、これから始まるのは殺すか殺されるかではなく、相手に自分の力を見せつけるためのパフォーマンスである。

「……行くのである!」

 我が輩は拳に光を纏わせ、女性に殴りかかる!

 <裸族>を知っているくらいの強者であるならば、このくらい人目でわかるであろう。 <武闘家>の特技、<オーラセイバー>である!

 案の定、女性はにやり、と口角をつり上げる。

 その笑みは我輩を強者を認めたゆえであったのか、自らを我輩のポリシー、「女性を傷つけない」というポリシーを捨てさせるに足る人物であると確認したからであったのか。

 それは我輩には知るべくもないが、ともかく女性は笑みを浮かべ、迎撃の体勢を取った。

 狙っているのは先の先か、後の先か。 あるいは攻撃を攻撃で打ち消すか、被弾覚悟で受け止めてから不可避の一撃を繰り出すか。

 ゆらりゆらりと構えを曖昧にして、女性は何を狙っているか悟らせまいとする。

 ただ確かなのは、これまでとは打って変わって我輩の攻撃に反撃しようとしていることだ。

 ならば、打って出ぬ訳にも行くまい! 柔らかい地面を踏みしめ、我輩は一直線に女性へ駆け出す!

 冒険者の超人的な体力によって生み出される超速のなか、我輩は女性の目論見を推し量る。

 ……否、推し量るまでもない。 我輩はただ我輩の為すべき所を貫くのみ!

「うおおおおおッ!!」

 我輩は叫びながら飛び上がり、斜め上から突っ込む!

 それを見て女性は曖昧だった構えを定め、しかと我輩の瞳を見据えた。

 この構えは……<後の先>であるか! 攻撃毎に反撃を繰り出す特技で我輩の攻撃の後の隙を狙うつもりであろう!

 飛び上がってしまった今からでは、もはや対策は不可能!

 我輩が光り輝く拳で一撃を放てば、すぐさま反撃が食らわせられる……。

 はず、であった。

 我輩が攻撃するつもりであれば。

「……は?」

 反撃の合図となるはずの一撃が訪れず、どころか視界から我輩が消えた女性は気の抜けた声を漏らす。

 我輩は振りかぶった拳をけれど振り抜くことはなく、女性の目の前に着地しつつ身をかがめると、その脇を抜けざまに鎧の下に穿く袴を思い切りめくりあげていた!

「……水色! ふはは、案外かわいらしいのであるな!」

 そのまま全力疾走!

 ……背後から物騒な声が聞こえたのは気のせいである、きっと。



 ……ふむ。

 いくらなんでももう追っては来まい。

 やや荒い息を整え、じわじわ増えるHPバーを見ながら我輩はちょうど良さそうな瓦礫に腰掛ける。

 ……あの女性は、PKに遭っても返り討ちにできそうであるな。 余計なお世話だったやもしれぬ。

 しかし、あそこまで追いつめられるとは我輩、ちょっとショックである。

 元々安全マージンを大きく取った戦法だったはずなのだが。

 それが逆に、戦闘勘を鈍らせでもしていたであろうか。

 うーん、と頭を抱えるが悩んでも仕方がない問題であるな、と自分で結論づける。

 そのとき、遠くの視界にひらめくローブが入った。

 ふと目で追うと、またしてもソロの女性、いや女子といったほうが近い年齢のプレイヤー。

 一日に三人とは今日はずいぶん遭遇率が高い、と思いつつその女の子を注視する。

 いちいちびくびくとしている仕草から見るに、そう経験を積んでいるわけではなさそうだ。

 ……ならば、我輩の行動理念からして、見逃すわけにはいかないのである! ……ついでに我輩の自信回復に役だってもらえば一石二鳥である。

 そうと決まれば、いざ!

 HPバーもまだ回復しきっていないにも関わらず、女の子に近づいていく!

「ふははは! こんな所に一人とはずいぶん不用心なのである!」

「きゃあああ!!」

 女の子は<妖術師>であろうか、いかにもという感じの魔女装備に身を包み、パニックになりながら出の速い魔法を連射している。

「甘い甘い甘いッ!」

 相変わらずの機動力で躱し続け、背後の植物への被害を増やし続ける。

 思い通りに避け続け、調子に乗った我輩は体の一部分だけ残像で増やしたりもする。

 ……我輩、弱くないよな!

「ふ、脇ががら空きである!」

 調子に乗った我輩はいつも通り後ろに回ってローブをめくりあげる!

「ふむ! 貴女は肌色で……ん?」

 えっ?

 そう。 肌色だった。

 なにも、なかった。

「……失礼ながら。 確かにこの世界には下着は存在しない。 ゆえに、男女ともに大多数のプレイヤーは水着アイテムを下着代わりにしているようだ。」

 立ち上がり、女の子の肩に手を置きながら諭すように話しかける。

 女の子はただぷるぷると震えているだけであるが、聞いていないということはあるまい。

 なにかぶつぶつと呟いている気もするが、我輩への呪詛であろうか。

 ……仕方ない。 事故とはいえ、それだけのことを我輩はしていまった。

「もちろん、何らかの主義主張があってそうしているのならば我輩もとやかくはいわぬが、そうでない場合で何か理由……例えば、製作職の知り合いにアテがないのであれば、我輩が紹介することもやぶさかではなっ」

「うわああああああああぁぁぁん!!!!」

 残念ながら、我輩の言葉はがすべてを言い終わる前に遮られてしまった。 女の子の叫ぶ声と、その手に握られる杖から放たれる超高温の火炎が燃えさかる音に。

 この子、意外とレベルが高かったのであるな……。 ある程度、先ほどの<武士>に与えられたダメージが残っていたとはいえ、まさか一撃で削り切られるとは。

 意識が消えるまでに見えたのは女の子の泣き顔と、その女の子が既にHPがゼロとなった我輩に容赦なく攻撃魔法の雨霰を食らわせている姿。

 ……そして、意識が戻ったのは大神殿の石台の上。

 本当に、申し訳ないことをした。

 死体が消えるまでの間ひたすら魔法を撃たれた我輩の恐怖もそこそこであろうが、あの女の子の精神ダメージには及ぶまい。

 女性を傷つけないというポリシーを、事故でとはいえ破ってしまったことになる。

 ……我輩は、この警戒喚起活動をやめるべきなのであろうか。

 いや! 今も心なきPKの毒牙にかかるか弱き乙女たちの被害は絶えぬ!

 この世界に法はない。 我輩の罰せられる時が来るとすればそれは法が出来た時、PKたちが罰せられる時であるのだ!

 手法は少し考えるべきかもしれないが、決してやめるべきではない!

 うむ、と頷いて結論を出すとパンツの中から厚手のローブを出して(本当に入れていたわけではない。 <裸族>のスキルにより収納空間が出来るのだ)パンツ一丁の装いを隠すと大神殿を出てねぐらとしている宿屋を目指す。

 道中もひどい罪悪感に苛まれ、幾度か深いため息をつく。

 そして宿屋のある通りに入ったとき、後ろから肩を掴まれた。

「む、どちら様である……か」

 肩を掴む手を振り払いながら振り返ると、そこには見覚えのある顔。

 ていうか、さっきの<武士>さんだった。

「てめえのツラと名前は覚えたぜ。 ラカンさんよぉ」

 一目見れば爆発寸前だとわかる顔で、額に青筋を浮かべている女性を見て、我輩はあきらめた。

 ……どうやら、法がなくとも罪には相応の罰が与えられるものらしい。

善意の犯罪者(ただし明確な法は存在しない)。

照れ隠しに変な言葉遣いはしていますが、中身はちょっと筋肉礼讃気味の大学生とかそういう感じです。

女性に興味はあるけど名目がないとこんなことできないんです。


<裸族>の設定をDocからちょっと改変しつつお借りしました。

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