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第5章

数日後。


苑子さんの脚立でミニスカが功を奏したのか、男性客が多少増えてきた。

いかにも秋葉系の客が、ニタニタしながら苑子さんを見つめている。凄く不気味でたまらないが、そういう人達に限ってコミックを大人買いしていくので何も文句は言えない。


私のミニスカは、初日でお役御免になった。動きがぎこちなくて仕事に集中できず、レジでお釣りを間違えるわで、もう穿いてこなくていいと稀一さんから言われた。


祭の方はというと、そんな事したら売上が上がる前に辞めそうだと判断され、免除されたらしい。


ま、苑子さんだけの力で、これだけお客様が増えたのだから稀一さんも文句はないだろう。


コミック担当の太郎は、コミックの売上が前よりかなり上がって、最近は終始笑顔が絶えず、キモイぐらいに毎日ニヤついている。


今日もレジ脇のパソコンでニタニタしながら発注をしていた。

「お前の方はどう?売上伸びた?」

太郎が私に話しかける。


「まぁね」

「俺は絶好調」

「ふーん」

私は、レジにお客さんが来たので手短に返事するとお客様の方を向いた。


「いらっしゃいま…」

私は全部言い終わらないうちに言葉を止めた。


男の客のズボンのチャックが開いており、そこから男のあの部分がチラリと顔を覗かせていた。


トイレに行ってしまい忘れたか、それとも暑いからクールビズ的な感じで…ってそんな訳がない。


客はニヤニヤと私の反応を見ていた。


最近お客様も増えたが、変な客も多くなって本当に嫌になる。これはミニスカ作戦の恩恵の代償なのだろうか。


「580円でございます」

私は、その部分から目を逸らさずにレジを打った。そして、パソコンの所にいる太郎の袖をクイッと引っ張った。


「ん?」

「ちょっとあれ見て」

そう言って、太郎にアゴで客の方を見ろの合図をした。


太郎は客の方を向いて、男のあそこがモロ出しになっているのに気付くと

「…小っさ!!」

太郎は思わず呟いた。

男の人はハッとした顔をして太郎の方を見た。


「あぁ、やっぱそう?私もそう思ったんだよね~」

「えっ、お前なんでこれが小さいって分かったんだよ、誰のと比較したわけ?」

「んふふ、それは秘密で~す」

私は含み笑いをする。


「だって、これってありえないでしょ?これじゃ~満足できそうにないっていうかさぁ~」


「確かにな、俺の親指の大きさにも満たないんじゃなぁ。

気の毒過ぎる…俺だったらマジ死にたくなる。」


太郎が自分の親指を出して切なげに見つめた。


「でもさ?こんなチンケな代物をだよ?人様に堂々とお見せるできるなんてさ、ホント勇気ある行動だと俺は思う。


ある意味立派だ、男として尊敬する。イヤ、もしかしてこれぞ真のラストサムライなのかも知れない!!


己の小ささを隠すことなくこんなふうにさらけ出せる真の勇気…侍だよなぁ。」


太郎が男を褒めまくった。男は今にも泣き出しそうな顔をして私達を見ていた。


「っていうか、お前このサイズじゃ満足できないのは当然だとしても、どんぐらいのサイズなら一体満足できんだよ」


太郎が私の腕を指でツンツンと突ついた。


「そうだな~太郎ぐらいのがちょうどいいかも知れないな~」

私も可愛く、太郎の腕を指でツンツンと突ついた。


「んもう、バカだな~、照れるじゃないかよぅ~欲張りさんだな~」

「えへへへへへ~」


2人してレジ内で押しくらまんじゅう状態になる。


「うわああああああん」

いきなり、その客は自分のあそこをズボンに仕舞いこむと泣きながら走って出て行った。


私達は、その客が見えなくなるまで店の窓から覗いていた。


「お前、残酷だな」

太郎が呟いた。


「そっちが先に小さいって言ったんじゃん」

「だって本当だし。っていうか、お前…誰と比べて小さいと判断したのかをまず答えろ」


「小さい頃うちの家の近所にね、牛飼ってる家があったんだけど、よく牛の乳しぼりさせてもらってさ、その牛の乳を思い出したんで比べてみた」


「牛の乳より小さいってある意味男として切ないよな」

太郎が切なそうに胸を抑えた。


そういうものなのだろうか?見た事ないから良く分からないが。

私は切なそうな太郎を横目に見ながら仕事に戻った。



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