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AI、100%小説で空なんて飛べない  作者: 蜃気羊


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9/35

【9】



 8万字の小説『空なんて飛べない』は7月29日に完成した。

 完成したのは夕方だった。

 Spotifyでかけっぱなしのリーガルリリーは部屋に流れ続けたままだ。


 今、まさにリッケンバッカーが流れはじめた。俺は一旦、休憩がしたくなり、身体をデスクからベッドに移し、横になった。そうだ、メッセージを送らなくちゃ。

 頭を使っているはずなのに、なぜか全身が疲れている気さえする。

 一番最初に完成を報告したい相手だ。デスクまで右腕を伸ばして、デスクの端に置いてあるiPhoneを手に取った。そして、そのまま右肩を下にしたまま、親指で操作して、LINEを起動させた。


『できあがり!』

 メッセージを送ると、一瞬で既読がついた。

『おめでとう! 川崎くん有言実行だったね 私もいい感じになってきた』

 有言実行っていうのは、おそらく俺も7月中に小説を完成させたことを言ってるんだと思う。3日前に山本瑠奈から『できた』とメッセージがあった。そのときの俺は、すでに6万字を越えていて、話は、クライマックスの手前まできていた。


『見直しているの?』

『うん、推敲4回目ー いい感じにバグ取りできた気がする』

 バグ取り。山本瑠奈は誤字脱字のことをバグと呼んでいる。確かにそうか。誤字脱字ってバグだよなって昨日、メッセージでやり取りをしたときに思った。そうか、誤字脱字チェック、俺もしなくちゃいけないんだった。それを考えるだけで、げんなりした。


『まだ、バグ取りしてないけど、明日、お互いの原稿、読みあおう 11時に前のカフェレストランでもいい?』

『いいよ その前にもう少しだけブラッシュアップしてみるね』

『楽しみだわ』

『私も じゃあ、明日ね』

 またスタンプが一方的に送られてきた。だから、俺も適切なスタンプで返信し仰向けになった。


 そして、iPhoneを腹の上に乗せ、両腕を広げた。

 それと合わせて、凝り固まっていた胸筋が一気に伸びる感覚がした。


 10日くらいで一気に8万字を書き上げた。

 単純計算で1日1万字くらいを書いた。プロットで適当に書いたところもそのまま流用はしているけど、使っていない文章もあるから、実質、10万字近く書いているはずだ。


 手のひらも、前腕も重く、だるさを感じる。左手を額に当てると、微かに熱を持っている。別に発熱しているわけではない。風邪を引いたわけじゃない。ただ、脳みその使いすぎで頭が熱くなっているだけだ。

 なにも考えずに、窓から夕日が差し込み、天井がオレンジ色の線ができている。それを数秒間、眺める。そのオレンジ色を見ているだけで頭のなかが空になっていくような気さえした。そして、ふと思った。俺は自由なんだ。自由に文字で世界を作り上げて、俺の自由に嫌いで退屈な世界に色を与えたらいいんだって。


 別にたいそれたことなんてしていない。

 自分を癒やすためだけの文章に過ぎないんだ。


 80文字でも、8万文字でも。

 ヒマラヤも海抜マイナス・1メートルでも陸地は陸地であることと同じように、自分のなかでの、文章のカテゴライズなんて、その程度のものだ。そんなくだらないことなんて考えないで、8万字のバグ取りしなくちゃ――。


 面倒だ。

 ふと、書きはじめたときに生成AIに原稿用紙換算を聞いたことを思い出した。




読んでいただきありがとうございます。

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