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AI、100%小説で空なんて飛べない  作者: 蜃気羊


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29/35

【29】




 iPhoneの目覚ましの音で、目覚めた。手を机の方に伸ばし、iPhoneを手に取り、目覚ましを止めた。

 

 最悪の夢だ。

 俺はまたAIで小説を書いて、得意げになっていた。俺は書かなくちゃいけないんだ。自分の手で。いくらプロンプトをしっかり作れるとしても、俺は禁断の手段を使ってしまったんだ。

 ダメなんだよ。ダメなんだよ。全部、ダメなんだよ。


「あー、もう!」

 右手で頭を乱雑に数度平手で叩いたあと、握りこぶしを作り、太ももを思いっきり叩いた。

 じわっと鈍い痛みが広がり始めた。

 その生きてるって感じが虚しくなった。


 俺はここ3日、原稿を書き上げるために学校に行っていない。

 今日が水曜日だから、木、金曜日と休めば、1週間学校を休むことになる。これまでの人生で1週間も学校を休んだことはなかった。


 学校を休まざるを得なくなったのは2作目が、9月発売になったからだ。当初は12月の予定だったが、4月に発売した『人生なんてろくでもない!』がすでに20万部超えの大ヒットになってしまい、編集部から次を急かされている。


 永瀬さんが編集長に、まだ学業があるから、急ぐこともないのではと進言してくれたみたいだった。編集長も当初は同意見だったようだけど、さらに会社のなかで偉い人から、直々に、早急に取り掛かるよう指示が出されたようだ。


 会社の中でも発売から、たった3ヶ月ちょっとで20万部越えの脅威の売上を記録している、大型新人をもっと売り出すチャンスを逃したくないということらしい。

 

 そういう急変で次の本を出すことが決まったから、永瀬さんにストックしている原稿はないかと聞かれ、去年の7月、AIを使わず自力で書いた『空なんて飛べない』を渡した。しかし、永瀬さんからの反応はあまりよくなかったが、それでもこの原稿で出版することになった。


 だからか、改稿以来は、膨大な量に膨れ上がった。

 俺も言われた要求に、できるだけ答えられるように、どんな無茶な要求でも、原稿を書き換えた。


 その原稿のやり取りが始まったのは、5月下旬くらいからだった。

 6月の1ヶ月も改稿に時間を費やし、できたらデータを送り、そして指摘が入って送り返されてを何度となくした。

 そして、7月になり、いよいよ今週中までにしっかり作品を固めなければ、いけないデッドラインまで来てしまった。


 あと『空なんて飛べない』のタイトルでは売れないと言われ、タイトルは編集部で考えることになった。一応著者だから、意見は言えるらしいけど、永瀬さんの声色的にあまり、著者からの案が通ることはないように思えた。


 6月中に改稿作業をしている間に、6冊の見本誌が送られてきた。

 つまり、一冊目の本はもう6回も追加印刷がかけられたことになる。


 そのことを重版というらしい。

 俺はその言葉すらあまり知らなかったし、どれだけすごいことなのかぴんとこなかった。


 最初に重版がかかったとき、永瀬さんから電話があった。『おめでとうございます! 重版1万2千部です』と言われたとき、なにが起きたのかわからず、俺は永瀬さんのハイテンションと裏腹に、重版のことについて聞いた。あー、言われてみれば、帯の売り文句についてるねって感じだった。


 うなされるのは日に日に悪化していた。それに夢がどんどん、明確になってきた。

 うなされた最初の頃は、不明瞭な黒にただ追いかけられているような覚えていない夢だったけど、最近は、ほぼ毎日、自分が責められている夢をみる。俺は、やっぱり最悪な人間なんだと思う。全編AIで書いた長編小説でベストセラー作家になってしまったんだから。

 

 エゴサをすると、読書感想サイトでも、SNSでも、一定数、感動しましたとか、衝撃でしたとか、ポジティブな感想をもらったりしている。だけど、AIで書いた負い目と、完全に自分の実力で書いたものではないからか、嬉しさはない。


 一方で、ネガティブな感想もかなり多く、最近は読書感想サイトの★の数は、2.7だった。感想も荒らされているという面もあるけど、永瀬さんいわく、賛否両論がある作風だから、これはあまり気にすることじゃないと言われた。


 原稿のデッドラインは近づいている。

 原稿の締め切りが残り5日で原稿を完成させなければならない。


 よりによって、ちょうど1週間後から、期末テストもある。

 学校も出版社も俺のことを追い詰めているように思えた。それにもともと、炎上するくらいの存在の人間がデビューだったから、感想サイト以上にSNSでの評判は最悪だった。


 また、自分のことがトレンドワードになっていた日に、ちょっとだけ、そういうのを流し読みしてみたけど、どれも名誉毀損レベルのものばかりだった。

 さらに、この文章がキモいとか、余計な一文を添えられて、発売された単行本の小説の中身を撮影した画像と一緒にポストされているものもあった。


 モヤモヤした気持ちを晴らすためにYouTubeでアンチ対策とか、アンチする人の心理とかそういうことが解説されている動画を観た。


 あと、面白いなって思ったのが、SNSでアンチに叩かれるだけ叩かれたあと、SNSに開示請求を出して、名誉毀損罪で立件し、示談に持ち込んだら一人あたり、100~200万円の慰謝料がとれるという話だった。


 その人が言うには、炎上したら開示請求で数千万円程度の慰謝料ビジネスができるのではと言っていた。俺の場合は、誹謗中傷と合わせて、著作権侵害もされているから、本文を写した画像を根拠に、著作権侵害も名誉毀損にプラスして、慰謝料取れるのではないと、そんな不毛なことを考えていた。


 ベッドでそんなことを一通り思い出したあと、俺は重い身体を起こた。





読んでいただきありがとうございます。

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