表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI、100%小説で空なんて飛べない  作者: 蜃気羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/35

2025年3月29日 ――顔の見えない大人に炎上させられていた話【27】



 一週間前にゲラを送り返してから、ぽっかりと心の中に穴が空いたような気分が続いていた。

 だから、俺はこういうときこそ、どんどん書いていかなくちゃと、自分にムチを打ち、次の原稿、お願いしますと言われたとき用の長編小説を書き始めていた。


 すでにプロットは完成していて、1万字くらい本文を書いたところだ。

 今日も、夜中にうなされて、朝10時に起きた。

 そこから、いろいろTikTok観てうだうだしたり、ご飯食べたりして、13時を過ぎていた。


 リビングから部屋に戻り、机のiMacをスリープから戻した。そして、椅子に浅く座り、とりあえずさっきご飯を食べているときに、ふと思いついたシーンから書き始めた。

 そのとき、iPhoneがバイブレーションし始めた。山本瑠奈からの着信だった。


「久しぶり。今、ちょうど小説書いてるんだ」

『……』

 しばらくの間、マイクが空気を捕まえている音が耳元に流れた。通信状況が悪いのかと思い、一旦、iPhoneを耳元から離し、Wi-Fiの電波表示を確認したけど、問題なさそうだったから、再び右耳にiPhoneをあてた。

「もしもし?」

『こんなのひどいよ。どうしてこうなってるんだろうね』

「え、なんのこと?」

『川崎くん、SNSで炎上してる。それもトレンドワードにもなってる』

「本気で言ってる? それ」

 俺はiPhoneを左手に持ち替え、左耳にあてなおした。空いた右手でマウスを操作して、Google Chromeを立ち上げた。そして、SNSを表示した。検索欄から、トレンドを見ると、俺の悪口がたくさんならんでいた。最初は現実感がなくて、思わず、笑ってしまった。


「本当だ。炎上してるね。俺。売れるかもな」

『……』

 笑いながら、そう返したけど、山本瑠奈は黙ったままだった。

「あーあ。すごい怒られてるじゃん、俺。いきなりこんなことってあるんだね。楽しいじゃん、こんだけストレートで日本中の知らない誰かに文句言われるなんて」

『川崎くん?』

「なに?」

『それ、本気で言ってる?』

「いや、その――。」

 そう言われて、俺は急に何を言うべきなのか、わからなくなった。マウスをスクロールし、いろんな人のポストを流し読みする。急にマウスを持つ、右手が震え始めた。気がつくと、身体がこわばり、胸の奥も震えているような気持ち悪い感覚がし始めた。


『――すごい悔しいんだけど、私』

 何度も息を整えようとしているのか、その息づかいがスピーカー越しに聞こえた。そう言えば、俺、呼吸していただろうかと思い、とりあえず、何度か呼吸を意識的にしてみた。画面はスクロールさせたままで、常に悪口がたくさん、流し読みしていく。

「なあ」

『どうしたの?』

「世界って思ったより、怖いかもって生まれて初めて思ってる」

『川崎くん、私、今、世界で一番、川崎くんの傍にいてあげたい』

「――ありがとう」

 そうお礼を言うのが果たして適切なのだろうか。そんなことを考えながらも、画面のスクロールを続けている。あれ、だけど、今はひとりになりたいのかもしれない。誰も俺のことを干渉することのないベッドに横になり、毛布を被りたいのかも知れない。


「ごめん。いろんな感情、処理、しきれないや。会いたいけど、今、山本さんには会えない」

『――そうだよね。ごめんね』

「いや、教えてくれてありがとう。ごめんね、気を使わせて」

『川崎くん、気なんて使ってないんだよ、私。これだけは言わせて。どんなことがあっても、私は川崎くんのこと、ひとりぼっちにさせないよ。ずっと味方だから』

「――ありがとう。切るね」

 頭が回らない。お礼が適切なのだろうか。もっと気の利いた言葉で返すべきなんじゃないだろうか。画面のスクロールは続けたまま、悪口に目を通し続けながら、俺はiPhoneを左耳から離し、通話を切った。






読んでいただきありがとうございます。

感想、ブックマーク、☆を★にして応援いただけると、とても嬉しいです。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ