【24】
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3月20日に、『小説八雲』の4月号が届いた。
家に帰ってきた母親が、大きめなクロネコヤマトの封筒を渡してくれた。
宅配ボックスに入っていたらしかった。ハサミで封筒を開けると、パッキングされた雑誌が入っていた。パッキングを開けると、印刷されたばかりの紙の匂いがした。
雑誌は宅配ボックスに入っていた所為か、冷たかった。
表紙には、『小説八雲新人賞結果発表 最優秀賞 川崎圏外「人生なんてろくでもない!」』『高校1年生 史上最年少15歳デビュー!』『優秀賞 瀬戸セノト 「ショート革命のエチュード」』と大きく書かれていた。それ以外は、ベテラン作家の名前と連載作が書いてあった。
俺はページもめくらずに雑誌を机に置いた。机には、最近、セリアで買った小さなフォトフレームとゲラ原稿、そして赤ペンが置いてある。
フォトフレームには、卒業式の看板の前での、山本瑠奈と俺のツーショット写真が入っている。山本瑠奈にデータを送ってもらった次の日、ローソンでプリントアウトした写真だ。
息を吐くと、急に眠くなってきた。
ここ最近の俺は疲れているんだ。
余計なことに囚われて。
ベッドに寝転がり、目をつぶると、あっという間に入眠した。
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目覚めると間接照明がつけっぱなしだった。手を伸ばし、机に置いたままのiPhoneを手に取ると、まだ21時12分だった。母親から封筒を受け取ったのが、19時前だったから、3時間くらい眠っていたことになる。
久々にうなされなかったような気がする。中度半端な時間に眠るといいのかもしれないとか、どうでもいいことを考えながら、起き上がり、机に置いてある2リットルのペットボトルを手に取り、ミネラルウォーターを一気飲みした。
ひどい夢を見るようになったのは、3月に入ってからだった。
正確には、卒業式が終わった直後のことだった。
最初は得体の知れない黒に追いかけられている夢だった。
その夢は、ただ、追いかけられるだけで、夢から覚めても、俺はなにも思わなかった。ただの夢だ。よくある夢にすぎない。
だけど、3月10日を過ぎた辺りから、夢が暴走し始めた。
夢の嫌な感覚で、夜中にうなされ、目覚めることが多くなった。
なにでうなされているのかわからない。きっと、うなされる以前に、夢のなかで俺のことを追いかけていた黒だと思う。
その黒の正体は未だにわからない。
ただ、それでも眠りは正常で、うなされて夜中に起きても、またすぐに眠りに入ることができた。これは、疲れているときの歯ぎしりと同じ現象だと、自分に言い聞かせることにした。意識して、眠りに入れば、きっと、うなされることはないと思った。
それでも状況は変わらず、覚えていない夢にうなされる日々は続いた。うなされている所為なのか、最近、寝ても寝た気にならないくらい、疲れが取れていない。
そんなことがあったから、山本瑠奈と会う約束をしていた日も眠すぎたから、体調が悪いとメッセージを送って、唯一、春休みの楽しみだった予定も自分の手でキャンセルした。
水を飲み終わり、ペットボトルを机に置き、キャップを締めた。急激に腹が減ったから、俺は部屋を出て、リビングに向かった。




