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AI、100%小説で空なんて飛べない  作者: 蜃気羊


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2025年3月 ――卒業式後にAIが書いた小説のゲラをやる人間の話【23】



 卒業式が終わり、2割の頭がいい奴は、地域で高偏差値の高校へ進学していった。

 俺らみたいに、エスカレーターで附属高校に進学するやつは、4月から、引き続き同じ場所に通学することになる。


 卒業式の看板の前で、山本瑠奈と二人で写真を撮った。山本瑠奈のiPhoneで久保田翔に撮ってもらった。そのあと、久保田翔に『付き合っちゃえばいいのに』ってさらっと茶化されたけど、俺はそれをさらっとスルーした。


 学校の中で、俺が小説家デビューすることを知っているのは、山本瑠奈だけだった。AIで小説を書いたという事実を知っているということ以外、つまり、そういった意味でも、単純に高校生作家になるという事実も山本瑠奈だけにしか告げていない秘密だということだ。


 ただ、それも時間の問題だ。

 3月28日の本誌発売前の2週間前くらいにネットで公表されるスケジュールになっている。


 学校に報告義務はないから、報告はしていない。

 学校関係者には誰にも見つからずに、静かに過ごしたい。ニュースには、もちろん顔写真が乗るし、紙面でも顔写真が乗ることになっている。AIで簡単に人の画像なんて、取り込める時代で、顔出しなんてリスクしかない時代なのに、嫌でも顔出ししなくちゃいけない。


 ある意味、芸能人みたいなものなのかもしれない。そのことを授賞式が始まる前、宣材写真を撮影したときに、永瀬さんに聞いたら、

『昭和の時代から続く小説の売り方です。小説って、本文以外で作者のバックグラウンドを知ってもらうことも大切な要素としてあります。宣材写真で親近感を持ってもらうことが狙いです。もちろん著者さんがどうしてもというなら、顔出ししなくてもいいことにはなっています。ただ、できれば、今後の活動の幅を広げるためにも顔出しはしてほしいところです』

 すでに宣材写真をカメラマンに撮ってもらったあとに、やっぱり顔出ししたくないです。って言える訳がないこともわかっているから、結局、俺は顔出しをすることに決めた。ただ、これは自発的ではない。


 卒業式から3日後に書籍用のゲラが手元に届いた。

 2週間後に返送してほしいということだったから、熱で消せる赤いボールペンを片手に、ちまちまと作業を進めた。


 その間に、高校の制服を買いに行ったり、教科書を買いに学校へ行った。

 山本瑠奈とはたまにLINEでメッセージを送り合ったりしたけど、俺がゲラをやっていることに気を使ってくれているのか、控えめだった。

 本当は、卒業式後、一週間以内くらいのうちに一度、会う予定だったけど、お互いにすれ違ってしまって会うことができなかった。





読んでいただきありがとうございます。

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