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AI、100%小説で空なんて飛べない  作者: 蜃気羊


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2025年1月 ――中3の冬、授賞式直前の話【15】



「川崎圏外さん、最優秀賞です」

 iPhone越しで、小山書店の編集者の永瀬さんの声が弾んでいるのがわかった。

「――最優秀賞」

 俺が言葉に詰まったのは、当たり前のことだ。まさか、この小説が賞を取るなんて思っていなかったからだ。最終選考まで行ったことすら戸惑っていたし、最終選考用に原稿を直したあとも、どうせ落ちるだろうから、どうにでもなれという気持ちでやっていた。


「すごいことですよ! もっと喜んでください!」

「あ、ありがとうございます。びっくりしちゃって」

「それはそうですよね! 私も担当作が最優秀賞取ったの初めてのことで、本当に嬉しいんですよ! そして、なんとなんと、15歳での受賞は40回以上開催されている、この賞のなかでは、ぶっちぎりの史上最年少です!」

「そうなんですか」としか、言いようがなかった。別に俺に取ってみれば、年齢なんて関係ないように思えた。仮に俺が105歳で受賞した場合、それは史上最年長です! って永瀬さんに同じようなテンションで言われるだろうし、仮に25歳で受賞したとしても、きっと永瀬さんは同じようなテンションで、『最優秀賞です!』って言うに違いなかった。


 要はそれだけ、大人の人たちに認められているということなのかもしれないけど、永瀬さんの通話越しの声だけでは、どうも永瀬さん一人が喜んでいるようにしか感じられず、俺は余計に戸惑っているのかもしれない。


「選考委員の先生方のほとんどが、川崎さんのことを絶賛されていました。斬新で、瑞々しく、そして、15歳で完成度の高い作品を書かれたことに驚きの声が多数ありました」

「はあ」

 そう言われても、まったく嬉しいという感情は沸かなかった。


「まず、授賞式が3月にありますので、出席していただきます。本の刊行は、原稿の完成次第になりますが今年の夏ごろ目処にできたらと考えています。ただ、状況、調整次第では春先になる可能性もあります」

 そっか、この原稿って本になるんだ。

 てか、作家デビューすることになるんだ。


 俺は、本物の編集者である永瀬さんにそう言われても、まったくといっていいほど、実感がわかなかった。


「わかりました」

「また、詳細決まりましたら、ご連絡します。あと後ほど、ご両親にもご連絡しますので、その旨、お伝えください。それでは一旦失礼します」

 通話は一方的に切られた。最終選考に残ったときに、永瀬さんから、親に最終選考に残ったことを伝えてくださいと言われたから、親に伝えた。母親は、もう賞を受賞したんじゃないかってくらい喜んでくれたけど、父親は『ふーん、小説ね』と言っただけだった。






 その日の夜、永瀬さんから連絡が来る前に、両親に最優秀賞だったことを伝えた。

 母親は予想通り喜び、父親は予想通り、『よかったね』と塩対応だった。


 その後、永瀬さんから連絡があり、両親に電話越しで事情説明をした。

 父親の反応から、もしかすると、承諾してくれないんじゃないかって思ったけど、母親があまりにも喜んでいる様子を見たからなのか、父親はあっさり、承諾してくれた。


 つまり、これで俺の小説家デビューは、ほぼ確定したことになる。

 本当は、山本瑠奈にも伝えたかった。

 だけど、俺は、山本瑠奈とのトーク画面を開いては、閉じを繰り返していた。


 トーク画面の履歴は12月の待ち合わせのメッセージと、作品データの添付ファイルを最後に、時が止まっていた。






読んでいただきありがとうございます。

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