2024年12月 ――中3の秋、最終選考に残った話【12】
「おめでとうございます。川崎圏外さんの作品が、なんと、最終選考に残りました」
iPhone越しに聞く、女性の声はなぜかウキウキしているように聞こえた。この女性は、小山書店の編集者、永瀬と名乗った。学校から帰り、16時過ぎ。自分の部屋でブレザーを脱いでいる最中に電話が鳴った。自動通知で着信画面には、最初から『小山書店』と表示されていた。
「ありがとうございます」
電話で受け答えしている人物が中学生であることを、もちろん、編集者の永瀬さんは知っていると思う。もしかすると、子供扱いする感覚で、比較的、明るい声で最終選考に残ったことを告げたのかもしれないと俺は思った。
「改めて、弊社の小説八雲新人賞に応募くださりありがとうございます。簡単に状況を説明しますね。川崎さんが8月に応募しました『人生なんてろくでもない!』が最後の5作まで入りました」
「そうなんですね」
まさか、ここまでうまくいくとは思ってなかった。それに小説の新人賞に応募したのは、生まれて初めてだった。だから、最後の5作の中に入ったと言われても、現実感がなかった。
「大丈夫ですか? 落ち着いてくださいね」
そんなあっけらかんとした俺の反応から、永瀬さんは俺が動揺していると思っているのかもしれない。だけど、俺は今、ものすごく冷静だ。
「大丈夫です。落ち着いてます。あの、聞きたいんですけど。応募した人の数ってどれくらいだったんですか」
「今回は、1933作です。今年は比較的、応募があった中からの最終選考に残っている状態なので、私の個人的な感想を言うと、すごいことだと思います」
「ありがとうございます」
「これから、最終選考で先生方に読んでいただくことになります。なので、先生方に読んでいただく前に、もうちょっとこうした方がいいかもって点をお伝えしたいと思っています。このまま、お打ち合わせできたら、したいのですが、今からお時間大丈夫でしょうか」
「はい、大丈夫です」
というか、これが噂の編集者との打ち合わせってやつなんだ。ってまた自分を俯瞰しているように、俺はそんなことを考えた。長くなりそうだから、とりあえず、デスクの椅子を引き、椅子に座った。そして、その辺においてあったルーズリーフを一枚、手元に置き、ペンを持った。そのあと、iMacの電源ボタンを押し、スリープを解除した。
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