【10】
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iMacの画面に映し出されているのは、生成AIが文章を生成している様子だった。
出来上がったばかりの文字は、半透明で100文字くらい、まずぱっと表示される。後ろの文章の生成が進むたびに、半透明だった文字が黒くなる。
つまり、確定した文字になるということだ。
AIは俺が指示した通り、誤字脱字の部分を赤字で表示している。自分では意識していなかった誤字脱字が次々に赤で浮かび上がっているようだ。
AIが文字を出力できる最大文字数が3万字らしいから、俺の8万字の小説を3回にわけて、生成AIに入力した。
そして、AIが誤字脱字修正し、出力した3万字を別データにコピー&ペーストした。
誤字脱字修正をAIにさせたから、俺が書いた8万字には変わりないけど、一度、AIに自分の文章を取り込んで、AIによって出力された文章は俺が書いた文章ではないように思えた。
ただ、それは感覚的にということに過ぎず、AIは忠実に読み込んだ俺の文章を間違いを正し、正確な文章にしてくれいているに過ぎない。
《ありがとう 助かったよ》
素直に思ったことをチャット欄に打ち込んだ。
《お役に立て、光栄です! 風景描写がとても瑞々しく、感傷を引き立てる魅力的な小説でした✒️ またいつでもお手伝いしますね! あなたの小説がより良い作品になりますように✨》
こんなことまで、答えてくれるんだ――。欧米で開発されたAIだから、こんなに陽気なのかな。もし、日本人が作ったAIだったら、こんなにフランクな感じじゃなく、もっと堅苦しい感じだったのかな。
下僕と主人みたいな関係性の出力になっていたかもしれない。例えば、こんな感じかな。
『とんでもございません。微力ながら、お力添えができ大変光栄です。川崎様の文章を読み、やはり人間様が書いた文章には魂がこもっていると思った次第です。私たちには書くことなどできません。この程度の能力ですが、またお役に立てますよう精進して参ります。』
はは、めっちゃジメジメしてるじゃん。面倒そうなやつ。こっちが病んじゃうわ。自分で書いた文章に笑いながら、俺はバックスペースを長押しして、チャット欄に書き込んだ謙遜しすぎる妄想和製AI構文を消した。
AIってこうやって使うんだと実感する20分だった。
たった20分で誤字脱字のバグ取りが終わった。
AIから出力された文章をコピペしたデータをマウスでクリックした。
もう一度、冒頭から、自分の小説を読んでみた。赤字は多い印象だ。赤字はあとで黒に変えてしまえばいいだけだから、問題はない。
やっぱり、人間は欠落しているなと思った。
自分が書いている感覚では、できるだけ誤字脱字を出さないように気をつけて書いているつもりだった。だけど、現実は誤字脱字だらけだ。
小説の書き方の本のなかで、『何度も推敲をしよう』とよく書かれているのを思い出した。AI革命は、日々、確実に進んでいるんだろうけど、こうしたノウハウ本の世界では、もちろんそうしたAI革命のことなんて考慮されているはずがない。
中学生、15歳の俺ですら、つい最近まで語られていたことが、すべてが陳腐化していることもわかる。
Google Chromeで新しいタブを開き、『AI 小説 活用』で検索をかけた。
スクロールしながら、ざっとサイトの見出しを目で追う。
だけど、ぱっと興味が持てるような内容はあまりないように思えた。
例えば、『AIを活用したアイデア出し』とか、『AIを使って小説を書いてみた』とか、『AIで小説を書くサービス5選』『AIで書いた短編小説が新人賞を受賞 使用は限定的』『AIで長編小説を作るのが不可能な理由』とか、そういう記事しかないことに気がついた。
前、父親とAIのことでやりとりしたことをふと思い出した。
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