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東方夢幻想  作者: K
2/3

普通の魔法使い 前編

彼女は言った。




    ー幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ。ー




それが世界の全てだった。

   ”目が覚めた”


(ここは?)

木の天井…茶色い木に…そんな事よりも…

周りを見渡した。

ベットで寝ていたらしい。

スギの香りがする。



ベットの外に目をやる…

床に山積みの本が重なっていた。


(死んだのか?)


「体が痛くない。」


ふと言葉が出る。

喉から張り裂ける程の痛みもない。


思い出せるのは最後に見た魔法陣と少女。

知らない…けど…知ってる…分からない。



「パリンッ」


音がした



全身が反射的に防衛反応を示した。

ベットの上でで全身を低くし、部屋のドアを睨んだ。


全身が普通に動かせる。



ふと手を見た。



生きてる…脈がある…

誰にも知られず死にたかったな…

生きてなお、自分がなおさら嫌いだ。



あの時生きて幸運なのか不運なのか分からなくなった。



   「世界は自分を捨て、自分は世界を捨てた」



そう思ってた。いや思いたかった。

あの日、自分は重いものを背負ったのだから…


ベットを降りた。



山積みの本の一柱の上に自分が来ていたコートとアクセッサリーがあった。

そのコートを見るたび、自分が嫌いになる。

コートを着て…フードを被て…マフラーで口を隠す…


山積みで足場の無い本の上を通り、

部屋の隅にある木製のドアの前に立った。


怖かった。


外を知らない…いや、知りたくない。


扉のノブに触った。

冷たい…銀色の金属…

そっとノブを回す。



目の前には廊下だ。



変な花の絵がある。

木材の淵…安っぽい…

壁も木材で出来てる。



廊下の右には部屋の扉だ。

左には奥まで続く廊下…所々に棚と本がある。

奥の窓からは木漏れ日がさしてる。

廊下の途中には抜き抜けがある。

すぐ隣には道が続いてるようだ。



何か物音がする。金属で殴るような音だ

吹き抜けの方から音がする


吹き抜けの方へと一歩足を出した。

前足に体重移動をする。


  「ミシミシ」


廊下に響き渡った。

他の音が消えた気がする。

全身が冷や汗をかいた。


吹き抜けの近くに階段があった。

螺旋階段…木で出来てる。


下からほのかに甘い砂糖の香りが漂ってきた。


怖い…


階段を下りるのをためらった。



不穏な事が頭を過ぎる。

下に降りたら何かを失うかもしれない。

また、あの時のように…



(どうでもいい…全てが…)



螺旋階段をゆっくり降りて行く。

下はリビングにつながってた。

リビングの奥にはカウンターがある。

その奥から音がする

どうやらキッチンのようだ。



キッチンに光が差し込んんでいる。



女性が料理をしている。

せわしく動いてる。

鍋に切った野菜を入れてる。

こっちに気付いてなさそうだ。



白黒の服装…


森であったあの人なのか…

金髪だ…顔立ちからして日本人だ。

でも瞳の色は黄色よりも薄金色だ。

顔立ちと身長からして自分よりも若い…


(あの人が助けてくれたのか?)


ほうれん草を木製のザルから取り、

包丁でトントンと切り始めた。

彼女とふと目が合った。


お互いビクっと驚いた。

下にうつむいて顔を隠した。


頭では話す事を考えた。

しかし、何も思いつかない

相手の事を何も知らない。


相手を知ろうと考えた。

いや、無意味だ。



どうせ…知っても意味がない。



無言で気まずい空気が流れた。



さっきまでせわしく動いてた相手も動かない。

鍋の沸騰する音だけが聞こえる。



「体の方…大丈夫ですか?」



聞いてきた…うなずいた。

話が途切れた。


彼女は思い出したのか鍋をかき混ぜ始めた。

「今、おかゆが完成しそうなので席に座っといてください。」


リビングの椅子を見る…本が椅子の上に積み重なっている。

机にも本が積み重なってる。

(どこに座れるんだ?)

分からないので立ち続けて待つことにした。




「料理出来ました」

こっちを見てきた。

自分は…すぐ視線をそらした…



彼女は座れる場所が無い事に気付いた。

「あ、申し訳ない!」


料理の乗ってあるお盆をカウンターの上に置き

慌てて机の上の本と椅子の上の本を棚にしまいだした。


机と椅子は少しほこりを被っていた。


「遠慮せずに座って大丈夫ですよ」


礼儀作法は出来てるが…どこか抜けてる様な気がする。


窓際の席に座った。

おかゆを渡された。


木で出来た器からは暖かさを感じた。

やはり…生きてるんだ…


マフラーをほどく。


一口食べた…

やはり生きてる…



   悔しかった…



彼女は向かいの席で座た。

顔も見れない。

彼女が聞いてきた。

「あなたはどうしてあの森に?」


戸惑った。

返す言葉によっては危険な状況になりえない。


思考を巡らせた。

でも…無意味だと悟った。


「自分は…」


言おうとした…

でも…



    「ドカーン」



爆発音が急に鳴り響いた。

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