50話:小さな夜の革命
初秋の風が、羽鳥の町をそっと撫でていく。日が傾き、空が茜に染まる頃――旧宿場通りの一角に、ぽつりと橙色の灯がともった。
それは、藁屋根の商家が並ぶ通りの真ん中に設置された一本の支柱。木製の台座に据えられたその上には、鋼製のランプが控えめに揺れていた。
「これが……羽鳥の“初めての夜”か」
晴人は、灯下に立ち、静かに息を吐いた。
水戸で成功を収めた仮設ガス灯。その余熱を冷ます間もなく、彼は羽鳥にも同様の灯火を導入すべく動き始めていた。町の規模や予算を考慮し、常設の配管は先送りにしたが、最低限の機材と燃料を運び込み、仮設ながら一基のガス灯を設置することに成功した。
周囲には、町人たちが集まり、遠巻きにそれを見つめていた。
「明るいなぁ……蝋燭じゃ、ここまで見通せん」
「夕方に閉めてた商いが、まだ続けられるってのか?」
「ほれ、あの豆腐屋、まだ仕込みやってる」
確かに、灯下に面した小さな豆腐屋では、白衣の男が桶の中の大豆をかき混ぜながら、湯気を上げていた。軒先の提灯は消えていたが、代わりにガス灯の光が屋根瓦を照らしていた。
「まるで、太陽が降りてきたみてぇだ」
そう呟いたのは、通りを掃除していた老婆だった。腰をかがめたまま見上げるその表情には、驚きとともに安堵の色が滲んでいた。
「夜に明かりがあれば、泥棒も減りますよね」
そう言ったのは、巡回中の若い役人だった。晴人が開いた夜間警邏のための試験配備である。
「……試しに、“夜市”もやってみようと思う」
晴人の言葉に、近くにいた役人や商人たちが顔を見合わせた。
「よ、夜市……?」
「日が沈んでも、商いを?」
「それは、ちょっと……お客が来ますかねぇ?」
「来なければ、次に繋がらないだけです」
晴人はきっぱりと答えた。
「だが、“可能性”はここにある。夜に働ける。夜に動ける。光があれば、生活は変わる。これは文化の始まりだ」
通りの奥にある織女館でも、同じように変化の兆しがあった。
縫製室では、数人の女性たちが黙々と針を動かしていた。粗末なランプの代わりに、天井から吊るされたガス灯の光が、布の上に柔らかい影を落としていた。
「……灯があると、目が楽ね」
「あんた、昨日は“手元が見えねぇ”って、目ぇしばしばしてたもんね」
「ほんと、これがあるだけで仕事が一時間は延ばせるわ」
元遊女の加代が笑った。彼女の指先は年季が入っており、針の動きに迷いがなかった。その隣で、未亡人の梅が小さく頷く。
「……生まれてから、夜に縫い物したことなんてなかった」
「文明だよ、文明。あたしたち、ちょっと時代を先に歩いてるのかもね」
その言葉に、一同が小さく笑った。
一方、町の北端、炭鉱の仮設現場では、試験採掘が本格化し始めていた。
坑道の入り口には、藁葺きの作業小屋と見張り所が設けられ、若い男たちが交代で資材を運んでいた。掘削用のツルハシ、掘り出した石炭の運搬用木箱、それらを引く荷車――全てが朝から晩まで、絶え間なく動いていた。
「光は民を動かす。これは、文明の“導火線”だ」
晴人は、炭鉱入り口の掲示板にそう書いた標語を貼りながら、心の中で呟いた。
灯りをともすためには、石炭が必要だった。ガスを供給するにも、燃料の安定確保が前提だった。つまり、羽鳥の“夜”を支えるのは、まさしくこの山の地下で眠る黒い石だった。
そして――その光がもたらす影も、少しずつ現れ始めていた。
――羽鳥の夜が、変わり始めていた。
仮設ガス灯の明かりは、町の中心から徐々に広がりつつあった。といっても、灯具そのものはまだ数えるほどしかない。だが、その“数基”が放つ橙色の光は、町人たちの心に予想以上の衝撃を与えていた。
「旦那、夕方から夜まで開けてくれんか? この前の芋が旨かったんだ」
「こんな遅くにかい? だが……まぁ、灯りがあるから心配ないか」
青果屋の前で交わされたそんなやり取りは、昨日までなら考えられないことだった。薄暗くなれば道は危険になり、強盗も盗人も、獣すらも出る。だが、明かりがあるというだけで、人の足は自然と向かい始める。
晴人はその光景を静かに見つめていた。
(明かりがあるだけで、時間が延びる。金が動く。仕事が生まれる)
町の中央通りでは、ささやかな“夜市”が開かれていた。
とはいえ、日中のように屋台がずらりと並ぶような規模ではない。藍染めの布を屋根代わりにした簡易な棚、そこに積まれた野菜や菓子、魚の干物。木の桶に水を張り、金魚すくいを模した遊びをさせる若者の姿もあった。
「さあて、金魚の代わりに豆でも掬ってみるかい。三つ以上取れたら、饅頭ひとつ!」
そう呼びかける声に、子どもたちがわらわらと集まり、周囲に笑い声が広がった。夜に笑い声が響く。たったそれだけのことが、町の空気を変えていた。
「旦那、これは大したもんだ。夜に人が集まるだけで、こんなにも賑やかになるとは……」
後ろから声をかけてきたのは、以前から宿場通りにある酒屋の店主だった。年の頃は五十を超えており、眉間の皺と染み込んだ酒臭さが人生の酸いも甘いも物語っていた。
「でもよ……気になるんだ。あれは、いったいどれほど“保つ”んだい?」
店主が顎で示したのは、通りに立つガス灯だった。確かに、蝋燭や油と比べれば、仕組みも手間も大きく異なる。
「燃料は炭から取り出す。今はまだ試験運用だが、安定供給が見込めれば、この明かりは消えません」
「炭……つまり、山か。山から引っ張ってくるってぇのは、相当な手間だろうに」
「それでも、やる価値があります。人の時間が延びれば、金も動く。金が動けば、町が動きます」
晴人の瞳は真っ直ぐだった。すでにこの“光”を、単なる照明とは見ていなかった。それは文明の象徴であり、発展の導火線だと確信していた。
しかし、その明るさの裏では、静かに“反発”の影も育っていた。
――水戸城下。
ひとつの書院造りの屋敷。その奥で、数名の男たちが膝を突き合わせていた。年齢はいずれも五十前後。古くから藩の家政を担ってきた譜代の家老や、かつて藩校・弘道館で教鞭を取っていた学者たちだった。
「まことにけしからん。町人を夜通し働かせるなど、人の道にもとる行い」
「そもそも、“石の火”などという不浄の技術。天に背くものではないか」
「羽鳥のような寒村に、文明を持ち込んだところで、何が残るというのだ」
不満の声が飛び交う。
改革を快く思わない者たちは、羽鳥で進む一連の事業――とくに近代的な技術や新制度の導入を、「早すぎる」「粗暴だ」と評価していた。夜間の作業や市の開催など、商業振興を目的とした施策は、儒教的な価値観からすれば“徳を損なう行為”と捉えられていた。
「殿にも進言すべきです。羽鳥の晴人殿の手綱を、いま一度締め直すべきかと」
「……だが、石炭の掘削は結果を出し始めておる。仮に止めるとなれば、民の反感も……」
「だからこそ、今のうちに“牽制”をかけねばならんのです」
彼らは着実に、晴人の動きを“危険な実験”と見做し始めていた。
一方そのころ、晴人は夜市の一角に設けられた仮設の談話所で、若者たちと語り合っていた。
「やってみたいことが、あるんです」
そう語ったのは、織女館に通う縫製係の一人、しのぶという女性だった。彼女は以前、親を失い水戸から逃げてきた元奉公人であり、今は裁縫と薬草選別の仕事を担当している。
「この明かりが、もっと増えたら……夜に勉強できる場所がほしい」
「勉強?」
「はい。わたし、文字をもっと読みたい。薬草の本も、縫い方の書物も、もっと知りたいです」
その言葉に、若い男たちがうなずいた。
「俺も。読み書きできねぇの、ずっと悔しかったんです」
「読み書き算盤は、商いの要だって言われて……それなら、夜に“学びの場”があれば、俺たちも追いつけるかと」
夜に灯がともることで、人々の「意欲」に火がついていた。
晴人は、それを何よりの成果と感じていた。
「……わかった。夜間の“学び場”、作ってみよう。屋根と灯があれば、できることは山ほどある」
そう言って微笑んだとき、彼の中には確かな確信が芽生えていた。
(光は文化を呼び、文化は希望を生む)
その小さな灯火が、やがて国を照らす火種となる――それを、彼は信じていた。
夜の町を照らすガス灯の明かりは、静かに人々の営みを変えていった。
羽鳥の市場では、以前なら日暮れとともに撤収されていた屋台のいくつかが、明かりの届く範囲にだけとどまり、夜市としての顔を見せていた。やきいも屋は藁火を使って焼き芋を温め、甘い香りが路地に漂う。茶店では干し柿と湯茶を並べた簡易な夜席が設けられ、灯の下で囲む茶碗の湯気に、初秋の夜風が涼を添えていた。
ある屋台では、錦の反物が提げられていた。女たちが足を止め、蝋のように柔らかい灯火のもとで色合いを見比べる。
「昼と違って、布の艶がよく見えるねぇ」
「うん、肌の色にも合わせやすい」
初めての“夜の買い物”に、彼女たちは不思議そうに、けれどどこか嬉しげに顔を見合わせていた。
灯火に照らされた町の様相は、日中よりもどこか幻想的だった。
赤子を背負った若い母親が、屋台の団子を一本買って子どもに食べさせている。傍らでは、草履を引きずるように歩く老人が、湯飲み片手に一息ついていた。ふとした隙間に、子どもたちが追いかけっこを始め、笑い声が響いた。
その喧噪の中心に、晴人は静かに立っていた。
(この空間、この雰囲気……まるで“もうひとつの町”が、夜に生まれたようだ)
頭の中に浮かぶのは、かつて自分が住んでいた世界――夜でも煌々と照らされ、店が軒を連ね、娯楽も勉強も思いのままにできた都市の姿だった。
(ここにも、そんな光景が、やっと芽を出した)
晴人はそう確信していた。
と、どこからか、小さな拍手が起こった。
振り返ると、市場の広場に設けられた仮設の小舞台で、手品を披露している青年の姿があった。火吹き棒を使って、小さな炎を瞬間的に灯す手品に、観客たちは驚きと笑顔で応えた。
「おお……まるで灯篭の火が、狐になったみてぇだ」
「ほんとに! すごい、またやって!」
拍手の中に混じって、織女館に勤める若い女性たちの姿もあった。彼女たちは、仕立てたばかりの浴衣に身を包み、控えめに口元を隠しながら笑っていた。
そのうちの一人が、晴人の方をちらと見て、会釈をした。
晴人も軽く頷き返す。
(彼女たちの笑顔を守るためにも、この光は絶やせない)
ガス灯による夜の解放は、経済や娯楽だけでなく、防犯や教育の面にも変化を及ぼし始めていた。
まず、防犯の観点では、町の巡回にあたる青年団が“夜の見回り”を始めていた。
「今夜の巡回、火の見櫓まで回ってから戻るぞ!」
「了解っ!」
松明を持たず、ガス灯の灯る通りを中心に巡回する彼らの姿は、民衆に安心感を与えていた。火災の発見や、無宿者の排除といった業務のほか、婦女子の護衛も担っていた。
一方、教育面では、織女館の一室が“夜の学び舎”として仮開放された。
机代わりの木箱を前に、文字を学ぶ女たち。筆を握る手はぎこちなく、紙には大きく震えた文字が並ぶ。
「“ゆ”って、こう、跳ねるの?」
「うん、そうそう、上手だよ」
講師役の青年は、藩校から派遣された書生で、まだ二十代そこそこだったが、丁寧な教えぶりに定評があった。晴人が「読めぬ民にこそ、読ませたい」と設けた場である。
「書けたぁ!」
「ほんとだ……“い・し・ば・し”って、名前書けた!」
名を初めて書けた女が、思わず目を潤ませる。
――それは、彼女にとって、夜の光がもたらした最初の“自立”だった。
そんな希望に満ちた夜の陰で、ある密書が水戸城下の上層部へと届いていた。
「羽鳥の改革、行きすぎではないか」
内容は、他藩の視察役から送られたものであり、藩外からの圧力を匂わせるものだった。
「我らの藩が先駆けとなるのは良い。しかし、先駆けすぎれば“異端”と見なされる」
「改革の灯火は、時に火種となる。殿も、お心をお確かめにならねば……」
これまで内政を主に行っていた晴人の動きは、いつしか「外」にまで注目されるようになっていた。商人の出入り、技術者の招聘、そして資源採掘の進展……羽鳥の急速な成長が、周囲の均衡を脅かし始めていたのだった。
一方その頃、晴人は作業所の倉庫裏にいた。
「……このガス発生器、やっぱり燃料がまだ足りない。もっと効率のいい搬入経路が必要だ」
台帳を手にしながら、燃料使用量と燃焼時間を計算する晴人。彼の脳裏には、すでに“燃料搬送の鉄路計画”が浮かんでいた。
(炭鉱から直接、馬車で搬入し続けるのには限界がある。仮設でもいい、軌条を通して効率化できれば……)
だが、それを実行に移すには資金も人手も足りない。町の成長は目覚ましいが、それを支える基盤は、まだまだ脆弱だった。
――そんなとき、背後から声がした。
「晴人様、ひとつ、よろしいですか?」
振り返ると、そこにいたのは年若い女性だった。彼女は織女館で製薬の仕事をしている小雪という娘で、普段はあまり前に出てくることはなかった。
「先日、夜間作業中に転んで怪我をされた方がいて……灯りが届かぬ場所で作業をしていたようです」
「そうか。すぐに見舞いを……いや、先に場所を確認する。灯りを増設しよう」
晴人はすぐに地図を広げ、該当箇所を指でなぞった。
(灯火の届かぬ場所が生む“影”も、見逃してはいけない)
光が強くなるほど、影もまた濃くなる。
それは、町の隅々にまで希望を行き渡らせるという、次なる課題の始まりでもあった。
夜の羽鳥町には、かつてなかった“時の流れ”が生まれていた。
工房の灯が沈まず、女たちの手元で針が縫い、活版の版木が打たれ、薬草の香りが漂う。すべては小さな仮設ガス灯の下で行われていた。
だが、その光が照らせるのはごく一部。照度は強くなく、範囲も狭い。灯の端から一歩踏み出せば、そこは夜の闇。灯火の恩恵にあずかれぬ者たちは、まだ不便と恐れの中にいた。
――その一人が、炭鉱に勤め始めたばかりの青年・春吉である。
炭鉱から運ばれたばかりの亜瀝青炭の試料を、荷車で搬入していた春吉は、ガス発生装置裏の暗がりに足を取られ、木箱ごと転倒してしまった。
「ぐあっ……!」
膝を擦りむき、煤にまみれた荷が散乱する。夜風に混じって、亜瀝青炭特有の鉱臭が漂った。
そこへ駆け寄ってきたのは、織女館の薬草係、小雪だった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「へへっ、見えなくて……でも、炭は無事っす」
「それよりあなたが無事じゃありません!」
小雪は懐から包みを取り出すと、手際よく消毒と止血を始めた。香のような匂いが傷口から立ちのぼり、春吉の表情がやや緩む。
「……すげえ。痛みが引いた気がする」
「これは“竜胆”という薬草です。熱や腫れに効くの。ここ最近、織女館では夜の外回り用に携帯するよう言われていて」
「さすがだな、小雪さん……でも、こういう場所こそ、もっと灯りが要るよな」
「そうですね……闇は、誰かを怪我させる。けれど光が届けば、きっと守れる」
その言葉は、そのまま晴人の耳に届いた。
――彼は現場を回っていたのだ。
「ああ、小雪、春吉。ふたりとも無事で何よりだ」
驚くふたりに近寄り、晴人は即座に配置図を開いた。
「この区画は、炭搬入口と重なる。仮設の街灯では明らかに照度が足りない。今日中に灯具を追加、それと地面も敷きなおさせよう」
「そんな、すぐに……」
「いや、“すぐに”が必要なんだ。光を掲げた町に、影で怪我をする者が出てはならない」
晴人の視線は、すでに夜の果てを見ていた。
町役人たちは動き始めた。
その夜、灯具職人が呼び出され、壊れかけていた反射板が修理された。灯芯も新たに増設用が発注され、翌日未明にはガス管の延長が開始された。
しかし、光が拡張されるたび、町の中には“声”も現れた。
「また余計なことを始めおって……これ以上、金を浪費させる気か?」
「便利だの安全だのと、美辞麗句を並べて……そのうち羽鳥ごと燃え上がるのではないか」
口にこそ出さぬが、保守派の商人や一部の郷士らは、急速な変化をよしとせず、静かに不満を募らせていた。
ある者は「宵の口まで女を働かせるとは、道義に反する」と非難し、またある者は「技術は水戸や江戸で導入されるべきで、羽鳥のような田舎町が先んじるなど筋違い」と嘆いた。
その中でも、ひときわ強い不満を抱いていたのが、町の古参有力者、倉石惣兵衛である。
「……あれほどまでに町を変えるとは思わなかった」
自邸の書院で、惣兵衛は古びた地図を見ながら呟いた。
「最初は炊き出しと避難所。次に小学校。今度は灯だと……ふん、まるで羽鳥が都にでもなるつもりか」
彼の不満は、町の顔ぶれが変わり始めたことにもあった。市井の者が企画に口を出し、女や若者が意見を言い、町を支えると名乗り始めている。それが彼には「秩序の崩壊」に思えてならなかった。
――だがその頃、羽鳥の通りのひとつでは、別の“秩序”が生まれようとしていた。
仮設の布張り屋根の下で、夜の読書会が開かれていた。
主宰していたのは、織女館の縫製班の中でも年長者にあたる“お勝”。
かつて遊女だった彼女は、読み書きに長けており、晴人の「夜の勉学解放」に賛同して教壇に立つようになったのだ。
「……この文字、“希望”って読むのよ。自分で服を縫えるようになって、学べるようになって、やっとこの意味がわかったわ」
若い女たちは目を輝かせて頷いた。
「灯があると、夜も時間を使える。私、字が読めるようになったら、薬草の本も読んでみたい!」
「私も、兄に手紙を書きたいな……名前だけじゃなくて、ちゃんと文章で」
光の届く場所に、少しずつ“言葉”が芽吹き、“意志”が育ち始めていた。
晴人はその様子を遠巻きに見ながら、小さく呟いた。
「光は民を動かす。これは、文明の導火線だ」
今はまだ小さな炎。
けれどそれが広がれば、やがて国を変える“火”にもなりうる。
そのとき――どこか遠くで、一匹のコウモリが瓦屋根をかすめて飛んでいった。
闇もまた、完全には退けられない。
光と闇、その均衡の中で、新しい時代の息吹が羽鳥に根を下ろそうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
物語の歩みはまだ始まったばかりですが、皆さまの声が、物語に灯をともしてくれる何よりの力になります。
もし本作に「面白さ」や「続きを読みたい」という気持ちを抱いていただけましたら――
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その一つひとつが、執筆を続ける原動力となり、次の一話への励みとなります。
これからも羽鳥の町と登場人物たちの行く末を、どうぞ見守ってください。