414話:(1895年・2月)威海衛の戦い―清国海軍、壊滅す
暁の冷気は刃のように研がれ、奉天総督府の屋根瓦を薄く凍らせていた。
作戦室の窓硝子には細い霜の脈が走り、蒸気暖房の管が低く唸る。フェルトを敷いた長卓の上、山東半島北岸――威海衛の等高線が、荒い呼吸のように重なっている。湾口は細く、両岸に砲台。港内には碇泊位置を示す黒い針点が散り、余白に鉛筆で「済遠」「靖遠」「来遠」「平遠」と記されていた。
河井継之助は、乾いた指先で湾口を円くなぞった。
六十八歳の手は節くれだが、触れた先に迷いがない。
「ここを塞げば、北洋艦隊は自重で沈む」
小さく言い、視線を大村益次郎へ送る。七十の大村は、眼鏡の奥で灯心のような光を点し、別紙を手繰った。
ドイツ製クルップ重砲の断面図、炸薬量、装薬袋の枚数、砲耳の形状――細密画めいた図面を、まるで古都の地図でも読むかのように眺めている。
「陸海の噛み合わせを、歯車で合わせる」
大村は低く言った。
「陸は砲台をもぎ、海は港を栓ぐ。夜は水雷艇で肝を突く。三段でいい。だが、準備は三十年かかった」
鈍い笑いが参謀の口元にだけ灯り、すぐ消えた。
伊東祐亨が前へ出て、海図を広げる。海図紙は乾いて脆く、折り目が朝の光を白く返した。
「湾口、潮汐は小。外洋のうねりは季節風次第。港内は狭い。日中正面は無用。夜襲に限る。水雷艇十――いな、十二。二手に分け、外防の曳索を潜る。標灯は遮断、灯火は星のみを頼む」
その横顔を、東郷平八郎が無言で見ていた。にわかに暖房の音が止み、外気の冷えが足もとを這い上がってくる。
東郷は短く頷き、「夜の海は声で割れる。命令は手旗と笛に限る」と付け足した。小さな声だが、凍った室内に針のように通った。
陸の指揮は秋山好古が担う。三十五歳、大将の肩章はまだ新しく、その金糸は燻った光を湛えている。
秋山は旅順で煤けた野戦図嚢から、新しい行動表を取り出した。
「砲兵第一旅団を左翼に。右翼は工兵を併せ、敵砲台の脚を断ちます。中央は歩兵で正面突破。威海衛の北門を叩き、内側から港を開かせる」
簡潔に述べる声には、寒気を切るような張りがあった。
机の上の地図が、呼吸をするように静まり返る。
「補給線は奉天から延伸。鉄道輸送を第一に。凍結時は馬橇と臨時線で繋ぐ」
参謀が短く返事をした。金属ペンの先が紙を走り、細い字が増えていく。
河井は椅子の背に手を置き、静かに言った。
「威海衛を取れば、清国海軍は壊滅する。
藤村総理の描いた三十年の計画は、ここで完結を見る。
だが、勝ち方を誤れば、その三十年が台無しになる」
室内の空気が一段、重くなる。
その静寂を破るように、大村が言葉を継いだ。
「規律を忘れるな。旅順と同じだ。
民間人を害すれば、文明国の資格を失う。
藤村総理より厳命。違反者は、たとえ将校であろうと軍法会議にかける」
「心得ております」
秋山は即座に頭を下げた。
その声は乾いて低く、しかし熱を孕んでいた。
外では風が走り、屋根の雪がぱらぱらと落ちた。
窓越しに見える空は、薄く白んでいる。
河井は地図上の一点――湾の中央に印された「威海衛港」を指で押さえた。
「ここが、戦の終わりだ。
ここを制すれば、清国は膝を屈する。
――だが、これは復讐ではない。歴史を正すだけだ」
誰も言葉を挟まなかった。
硝子の向こうで、陽が一瞬だけ雲間に覗き、地図の上に淡い光を落とした。
秋山はその光の上で拳を握り、低く呟く。
「……三十年の積み重ねを、この一撃で証明してみせます」
その声は、誰にも届かぬほど小さかった。
だが、誰もがその決意を感じ取っていた。
作戦会議は終わり、各人が立ち上がる。
椅子の軋む音、地図を畳む音、暖房の再起動する唸り。
人々の足音が消え、扉が閉じると、残された机上の地図だけが、薄明の光の中に息づいていた。
夜の海は、凍てつく金属のようだった。
風が切り裂くたびに波頭が白く砕け、遠くで汽笛がくぐもった声を上げる。威海衛湾の入り口では、黒く塗られた水雷艇が列を成していた。
灯火はない。月も雲に隠れ、空と海の境すら曖昧だ。
艦首に立つ東郷平八郎は、口を閉ざしたまま時計を見つめていた。懐中時計の針が零を指す。
静かに、手を上げる。
笛の音が一つ。波間に溶けるように響き、全艇が一斉に滑り出した。
湾口には清国軍の鉄索が張り巡らされ、浮標が鈍く揺れている。
東郷の艇が先頭に立ち、鉄索の下を潜る。水兵たちは歯を食いしばり、冷水の中で索を押し下げた。水面の油がわずかに光る。
風の音と、遠い砲声。敵はまだ気づかない。
背後の空では、陸の砲兵陣が閃光を上げた。
秋山好古の指揮する第一旅団が、東鶏冠山を模した陣形で砲撃を開始したのだ。
ドン、と地を叩く低音が遅れて届き、夜の海が脈打つように震えた。
「始まったな……」
東郷が呟くと、操舵手が小さく頷いた。
水雷艇は音もなく進む。舷側に氷の欠片がぶつかり、ぱらぱらと砕け散った。
標的は、敵艦「定遠」「鎮遠」。清国海軍の誇りにして、旅順から逃れてきた巨艦である。
港口を抜けた瞬間、閃光。
敵砲台から照明弾が上がった。夜が裂け、海が昼のように明るくなる。
東郷は叫ばず、ただ右手を振り下ろした。
全艇、突入。
水雷艇が弧を描き、火線の中を駆け抜けた。
海面に弾が落ちるたび、柱のような水煙が立ち、油煙が鼻を刺す。
一隻、二隻――次々に白波を裂き、敵艦の腹へと吸い込まれていく。
そのとき、港内の闇を破るように爆炎が上がった。
「来遠」――命中。
黒煙が立ち上り、甲板が赤く照らされた。
清国兵の叫びが、風に乗って断片的に聞こえる。
だが東郷は振り返らない。第二波がすでに突入していた。
その頃、陸の秋山は丘陵の上で双眼鏡を構えていた。
夜の中に灯る火点が、湾へ向けて連なる。
砲兵が榴弾を絶え間なく撃ち込み、敵砲台を黙らせている。
爆風が頬を打ち、雪が空気に舞った。
「前進! このまま湾岸線まで押し出す!」
秋山の号令に、歩兵が叫びを上げた。
凍土を踏みしめ、銃剣を光らせて進む。
銃声、爆音、叫び声。
それらすべてがひとつの脈動となり、夜を明るく染めていく。
やがて、敵砲台が沈黙した。
残るは港の中だけ――東郷の任務に託された。
秋山は息を整え、遠く海上の光を見つめた。
黒い影がひとつ、爆炎の中をすり抜ける。東郷の艇だ。
閃光。
轟音。
定遠が炎に包まれ、巨大な艦体がゆっくりと傾いた。
艦橋が崩れ、砲塔が火を吹く。
硝煙と海水が混ざり、嗅覚を焼くような臭気が広がる。
「やった……!」
誰かの声が上がり、兵たちが歓声を上げかけた。
しかし秋山は即座に制した。
「まだだ! 敵は降伏していない! 撃つな、乱れるな!」
その声に、兵たちが再び姿勢を正す。
その光景に河井継之助は深く頷いた。
彼の背後には、藤村総理の通達文が置かれている。
――勝利のあとこそ、人の値が試される。
老将はその言葉を胸に刻み、静かに呟いた。
「勝ち方を、忘れるな」
風が止んだ。
湾の向こう、燃え落ちる艦の影がゆっくりと沈み、火の粉が空に舞う。
その光は、夜明けの兆しと見まがうほどに眩しかった。
東京・首相官邸。二月十三日の朝は、氷のように澄んでいた。松の葉に薄霜が残り、石畳の継ぎ目から白い息が立つ。執務室の火鉢は赤く、しかし紙の上の文字は冷たかった。
西郷従道が立ち、簡潔に告げる。
「威海衛、陥落にございます。十二日未明、清国艦隊は白旗。港湾・砲台、すべて収容完了」
低く応じる声が続いた。児玉源太郎が帳簿を開く。
「陸軍損害、戦死五百、負傷千五百。清軍は戦死五千、捕虜三千。市街の略奪・虐待、報告ゼロ。憲兵、違令一件を未然に拘束」
紙の角が、静かに机に触れた。
晴人は椅子に深く腰を入れ、視線だけで頷いた。胸の奥で、針が一定でない拍を刻む。行を追うたび、墨が雨ににじむようにぼやける。
(見えぬのではない。焦点がずれるだけだ――まだ、読める)
自分に言い聞かせ、紙縒りのような意志で視界を結び直す。
陸奥宗光が一歩進み、地図を卓中央へ引き寄せた。
「豊島、成歓、平壌、黄海、遼河、旅順、そして威海衛。列挙の必要もないほど、完勝が積み上がりました。清は戦闘継続能力を喪失。直ちに講和の段取りを」
「よい。陸奥、全権手続を整えよ。交渉相手は李鴻章。先方の面子は立てる。だが条項は曲げぬ」
晴人の声は静かで、紙を撫でるように乾いていた。
久信が端整な字で短冊に条件案を書き付ける。
「朝鮮独立の承認、遼東半島の割譲、賠償金……以上に加え――」
「加える。遼河以東の鉄道・鉱山・港湾の共同経営権だ。名目は共同、実質は監督だ。清が立て直す道を閉ざすのではない。導線を我らの規律に結びつける」
晴人は指先で地図の線を軽く押さえ、線路の黒を、国の動脈に見立てた。
義親が街の空気を伝える。
「都下は号外で埋まりました。威海衛の三文字が風に舞っております。人心は昂ぶり、声は“割譲を”へ寄っています」
「昂奮は、統治の敵だ。広報は言葉を選べ。“勝って驕らず”“規律は武威に勝る”。この二句を大見出しに入れよ」
晴人の返答に、義親は軽く頭を垂れ、素早く退出した。
ふいに眩暈が来る。椅子の背が遠ざかり、硯の黒だけが濃く残った。大久保が一歩踏み出す。
「総理……」
「よい。話を進める」
息を整え、艶の消えた声でなお滑らかに続ける。
「賠償は六億両を基準に。ただし支払不能に転じたときは、鉄道・関税・塩務の担保化に切替える条項を用意せよ。罰ではない、管理だ」
机の隅で、銀の呼鈴が小さく触れた。書記官が新電報を運ぶ。
「北京発。『宮廷騒然。李鴻章、講和派の賛同を得つつあり』」
紙面の三行を、晴人は一度だけ目で撫でる。
「来る。こちらは席と手順を整える。下関――いや、海路の安全と収容を考え、広い会場を。長府の御茶屋でもよいが、寒気を避け、暖房と通信を満たせ」
陸奥が短く笑みを見せる。
「文明の交渉は、まず暖房から、ですな」
「そうだ。凍てた部屋は理を歪める」
晴人の口元にも、ごく薄い笑みが走り、すぐ消えた。
その日の午後、慶應義塾。福沢諭吉は講壇の上で指先を組み、熱の残る紙面を掲げた。
「威海衛は落ちた。だが、諸君。勝ちは“点”ではない。“線”で繋がれて初めて国力となる。講和は点を線にする作業だ」
黒板に白い線が三本引かれる。
「一つ、対清への線――過酷にすれば反撥が増す。穏やかすぎれば再武装を許す。導く線を引け。
一つ、対列強への線――干渉は“力の試問”。日本が何を以て秩序を作るか、眼が見ている。
一つ、国内への線――歓呼と驕慢の間に、理の縄を渡せ」
学生たちは緊張を含んだ沈黙で頷いた。
北京・紫禁城では、絹の襟がこすれる音の中に、敗北の事務が進む。光緒帝は長く黙し、最後に細い声で吐いた。
「……李中堂に任す」
李鴻章は深く頭を垂れ、襟の中で短く息を吐く。
(面子を保つ形で、肉を削られる。せめて血を散らさぬ形に)
老練の目は、敗北の中の最善を探している。
夜、官邸。障子越しの灯が風に震え、火鉢の匂いに薬湯が混じる。大久保が医師を伴って戻ると、晴人は机上の紙を一束だけ残し、静かに手を退けた。
「診を受けよ、とは言わぬ。せめて脈だけ」
医師の冷たい指が手首に触れる。数拍、沈黙。
「無理は禁物でございます」
「国事に、禁物は多い」
柔らかな諧謔が一筋、空気の堅さをほどいた。
人払いの後、晴人は陸奥に目だけを向ける。
「李鴻章の椅子は高くしてやれ。背凭れも厚く。年寄りは腰が先に折れる」
「は」と陸奥。
「面子は費用がかからぬ外交資源だ。惜しまず配れ。代価は条項に取る」
窓外で、衛兵の靴音が規則正しく往復する。紙の上では、墨の細い川が新たに流れはじめていた――朝鮮の独立条項、遼東の行政移行、賠償の支払順序、鉄道と関税の管理機構、そして市民保護に関する付属書。どの一行にも、武威ではなく規律の影が落ちている。
筆を置くと、手がわずかに震えた。晴人はその震えを見つめ、掌を静かに重ねる。
(勝ち方を、講和の形に変える。あとは、手順だ)
火の赤が紙面を横切り、ゆっくりと薄れた。明日の朝、鍛え抜かれた語と仕草と椅子の高さが、帝国と帝国のあいだに一本の線を引くだろう。その線こそが、戦争の終わりであり、日本のはじまりであった。
夜の風が、杉垣を撫でていた。
東京・芝の藤村邸。玄関の灯籠が、静かに雨粒を弾いている。二月の空気は冷え切り、星さえ息を潜めていた。
書斎の障子がわずかに開いて、橙の灯が滲む。
その中で、藤村晴人は一人、机に向かっていた。
地図の上には、赤い線がいくつも交差している。朝鮮、満州、遼東、そして台湾。そこに自らの三十年を見ていた。
指先で線をなぞる。指がわずかに震えた。
(……終わった。だが、終わっていない)
戦の勝利は確かに掴んだ。
だが、これから始まるのは“講和”という名の、もう一つの戦争だった。
紙の上で国を得ることは、鉄よりも難しい。
晴人はゆっくりと椅子の背に体を預けた。
背骨の一つひとつが悲鳴を上げる。
胸の奥で、鼓動が波のように遠ざかる。
「――まだだ」
誰に言うでもなく呟いた声が、障子に吸い込まれていった。
そのとき、廊下から小さな音がした。
衣擦れの響きとともに、篤姫が入ってくる。
灯の光が、その顔の皺を柔らかく照らした。
「晴人様……」
晴人は顔を上げる。唇が少しだけ笑みに歪む。
「起きていたのか」
「ええ。寝つけません。……お身体が心配で」
彼女の声は、冬の夜よりも静かだった。
晴人は答えず、火鉢の炭を箸で転がす。
パチリ、と火の粉が弾ける。
「……この音を聞くと、江戸を思い出すな」
「ええ。まだ城下に雪が残っていた頃ですね」
二人のあいだに、遠い時間が流れる。
そこへ、きちが湯を盆に載せて入ってきた。
「晴人様、温かいお茶を」
湯気がゆらりと立ち上り、硝子窓を曇らせる。
その香りが、疲れた空気をわずかに和らげた。
「ありがとう、きち」
晴人は茶を口に含む。
舌に感じる渋みが、ようやく現実を繋ぎ止める。
篤姫が、ためらいながら口を開く。
「……晴人様。もう十分でございます。
戦も、勝ちました。国も、守られました。
ですから、どうかお休みを」
晴人はしばらく黙っていた。
やがて、指で茶碗の縁をなぞりながら、低く言う。
「……戦争は終わっても、国の歩みは終わらん。
講和の線を誤れば、また血が流れる」
篤姫の瞳が揺れた。
「それでも……お身体が……」
「分かっている」
晴人は静かに頷く。
「だが、私はまだ筆を置けぬ。
この国が、列強と肩を並べるための“終止符”を、
自らの手で打たねばならん」
その声に、篤姫ときちは言葉を失う。
老いた男の横顔には、静かな炎が宿っていた。
それは、若き日に“理”を信じた役人の光だった。
しばらくして、二人は深く頭を下げ、そっと部屋を出た。
廊下を渡る足音が遠ざかると、書斎には再び沈黙が戻る。
晴人は筆を取り、白紙の上にゆっくりと書いた。
「下関講和会議 起案稿」
その下に、わずか三行。
――「勝ち方は、理に在り。
理は、秩序に在り。
秩序は、人を救う。」
書き終えた途端、視界が揺れた。
指から筆が滑り落ち、硯の縁を叩く。
墨がこぼれ、紙の端を黒く染めた。
「……これが、俺の血だな」
晴人は微かに笑い、筆を拾い上げた。
火鉢の炎が静かに燃え続ける。
障子の向こうで、夜明け前の風が通り過ぎる。
白んだ空に、雁の列が細く見えた。
晴人はその影を見つめながら、息を整えた。
(李鴻章が来る。列強が嗅ぎつける。
だが――今回は譲らぬ。
我らが三十年、いや、二百年の志を賭ける)
机の端に置かれた一枚の写真。
そこには、若き日の晴人と、共に立つ藤田東湖、大村益次郎、そして河井継之助。
藤田東湖は、既にこの世を去った。葬儀は国を挙げて営まれ、満州からも弔使が届いた。
沿道を白布が埋め、民は静かに頭を垂れた。あの日、晴人は群衆の気配の向こうに、東湖の言葉を確かに聞いた――「理をもって国を立てよ」。
いま、河井継之助は満州総督として政の綱を引き、大村益次郎は満州副総督として軍政を支えている。
満州の鉄路も、工廠も、倉庫も、彼らの手で息をしている。
東湖の遺した“理”は、制度と規律に変わり、遠い北辺で脈を打っていた。
「……見ていてくれ」
その小さな呟きに、誰も答える者はいない。
ただ、火鉢の炭が一つ崩れ、赤い粉が舞った。
やがて晴人は、筆記具を整え、静かに灯を消した。
薄闇の中、硯の光沢だけが残る。
(あと少しで終わる。
この国が、ようやく自らの手で世界と交わる日が来る。
それを見届けたら――)
思考の終わりは、眠りの始まりだった。
冬の夜気が障子の隙間を抜け、煤けた紙の匂いを撫でる。
その音は、遠い海鳴りのように聞こえた。




