第5章 カルマ
「......このバンド、こんな歌だったっけ......」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎真っ暗な部屋の中で久しぶりに当時好きだった⬛︎⬛︎⬛︎を聴いていた。母からは『そんな醜悪な言葉を垂れ流すだけのものを聴くのはやめろ』と罵倒されていたことを思い出した。
しかしもっと文学的で、辛辣的で、悲しみとか苦しみとかを謳っていたこの⬛︎⬛︎⬛︎も『同じ空の下で〜 』とか、『きらめく星の数だけ強く〜 』とか、在り来りな文言を垂れ流すだけのものになり果てていた。
私は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎全てを奪っていくという分かりきった自明に対しても苛立ちを覚え始めてきた。好きだった⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎も、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎も、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎も。
ふと、新言語秩序について書かれているまとめサイトが目に留まった。
そこには言葉ゾンビの希明の目撃情報やテンプレート逸脱活動の批判についてあったりとか、逆に⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎批判だとかが入り混じり、混沌とし尽くしていた。
こいつらが言葉殺しか、私の全てを奪った略奪者か、そう思うと沸々と怒りが込み上げてくる。
気がづいたら私はそのまとめサイトの一角に生き物の死に際の咆哮のような、号哭とも取れる一言の言葉を残していた。
「日本の尊厳を踏み躙る白痴どもめ」
最初は本当に私が書いたのかと錯覚するほどの実感だった。そこからの⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ふと我に帰った。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎帰るべき我がある事に驚いた。私の手は想像以上に震えていた。
まとめサイトでは『これは新言語秩序に対する宣戦布告ですよ』や『再教育確定演出』や『よくぞ言ってくれた』や『言葉に自由を!』などと言った互いの⬛︎⬛︎や⬛︎⬛︎でサイト内はごった煮されていた。私としては初めて新言語秩序に抵抗が叶った喜びなのか、はたまたサイト中が私に注目し、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が満たされたからなのか⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に浸ることができた。しかし、その感情も三日天下の如く、一言の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎により、脆く崩れ去った。
「特定が完了しました。明日、再教育にお迎えに上がります。」
その⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を見た瞬間、私は反射的にスマホの画面を閉じ、すぐにベットの中に閉じ籠った。
私の身体の全てで⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎動脈がくそったれと泣き喚いている。鼓動があのトラウマを催促してくる。
大丈夫、私は明日、普通の女の子らしく遊んで、美味しいご飯を食べて、他愛のない会話をして、また明日に向けて眠るんだ。
気が付けば、私は落ちるように眠って⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎言葉を消した。とゆう言葉すら消してしまった。
翌日、私は昨夜の出来事すら⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎出かける準備をしていた。その日はやけに暑かった為、水色のフリルワンピースを着用し、休日だからと言って、慣れない化粧を施し、愛莉が迎えに来るのを今か今かと待ちわびていた。
午前⬛︎⬛︎時ごろ、自宅のチャイムが鳴った。愛莉だとすぐに気づき、勢いよく玄関のドアを開けた。
しかし、そこには愛莉とは似ても似つかぬ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が私の前を立ち塞がっていた。
“ 梨多さん、再教育のお迎えに上がりました。 ”