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第4章 スワイプ

 

 希明との会話の後、私はすぐに帰宅した。頭の中では⬛︎⬛︎や⬛︎⬛︎などの感情はもうすでに無く、代わりに新言語秩序や⬛︎親に対する怒りだとか⬛︎親に対する慈しみだとかの二律背反的なものが私の感情を占拠していた。

 何か新言語秩序に対する抵抗をしたい、しなければならない。しかし、何をどうすればいいのか分からず、私の反抗の種は水を欲するまま、地面から芽を出せずにいた。そして次の朝を迎えたのだった。


 その日は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎私は傘を差し、⬛︎⬛︎へ向かいながら昨日の出来事を反芻していた。

 このまま何もしなければ、私のせいで⬛︎⬛︎⬛︎父が報われない。私も私のままでいられなくなってしまう。そんなことを考えていたら後ろからテンプレート通りの声が聞こえてきた。


「梨多さんおはようございます。」


「......」

 私は愛莉の言葉に返答しない。いや、できないといった方が適当だ。このままテンプレート通りの言葉を返すべきか、それとも⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎


「梨多さん、ひょっとしてどこか具合でも悪いのでしょうか。どこかで休まれた方がよろしいのではないでしょうか。」

 愛莉のテンプレート言語が私の言葉を催促してくる。


「大丈夫......⬛︎⬛︎......心配してくれてありがとう......⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎......体調は平気......⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎今日は大事をとって帰ろうか......なと......⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」

 上手く言葉が出ず、しどろもどろの返答になってしまった。そもそもテンプレート逸脱する会話とはなんだ。そんなことすら私は忘れてしまったのか。


「梨多さん、本当に大丈夫ですか。しっかり休んでくださいね。私でよければお話しを聞きますので。」


「ありがとう......じゃあね......」

 この会話は二分もしないうちに⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎だが、私にはそれが何十分と長い時間に感じた。

 私のこの状況に愛莉を巻き込むわけにはいかない。

 だけどもっと話をしておきたかった。すればよかった。この鉛色の空に全て見透かされ、見下されているような気がした。


 その日の夜、愛莉からLINEが来た。いつもなら一文ずつ送ってくる愛莉だが、珍しく文章で送られてきた。


『梨多さん、今日は本当に心配しましたよ。私でよければ力になりたいです。よければ明日、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』

 今更なのだが、明日は休日なことに気づく。愛莉に全てを打ち明けるべきかは迷うところではあるが、一度会ってみようとは思う。


『愛莉さん、今日はお騒がせしてすみませんでした。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎にショッピングなどはいかがですか?』

 私の返信に対してものの数十秒で既読がつく。テンプレート逸脱で発言が禁止されているのだが、“ブサかわ”と形容されるようなウサギのLINEスタンプと共に返信が返ってきた。


『了解しました!梨多さんからのお誘い、とても嬉しいです。では明日の午前⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ごろ、梨多さんの自宅にお迎えに上がります。』

 愛莉に明日全てを話すのかは⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎明日会えることに喜びを覚えた。私は“りた”とプリントされたジャージを着た女の子のキャラクターが『了解です』と言っているLINEスタンプで返信しスマホの画面をスワイプさせた。


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