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おいでよ!サノバビーチ!  作者: たけしば
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1-2 ふぁっきんサノバビーチ!

今日は朝から、亀さんと亀さんの車でリゾート施設に向かった。亀さんの孫が運営しているリゾートビーチの働き手が少ない問題を解決する為、ボクが働くという話しになったんだ。急だったから、面接とかするのかと思ったんだけど、なんか今すぐでも働いてほしい感じだった。リゾート施設の駐車場は、ガジュマルの木というツタが何本も垂れ下がったような、少し不気味な木があって、その木の木陰になっている。車を降りると、亀さんのお孫さんが出迎えてくれた。彼は亀 クラゲ太郎。このリゾート施設、サノバビーチのオーナーだ。サングラスをかけたおっさんとあんちゃんの間って感じの人だ。早速、サノバビーチを案内してくれた。まずは売店。ヤバミ大島のお土産が沢山置いてある。沖縄名物のチンスコウや、サーターアンダギー、オリオンビールなど、ヤバミ大島のお土産というよりも、沖縄のお土産感がたっぷりだ。クラゲ太郎さんのおすすめは、海ぶどうとかいう、謎の海藻だ。味見したけど謎は深まるばかりだ。ぶどうらしさはゼロだ。海藻に包まれた海水を食べるようなノリだ。クラゲ太郎さん的にはビールのお供にいいらしい。続いて、宿泊施設を見た。海が見える素敵な宿泊施設だ。まるで、マイアミのリゾートホテルを彷彿させる造りだ。マイアミに行ったことないけどそうに違いないと思う。続いて、一番の売りであるサノバビーチの真っ白な砂浜と宝石よりも美しい海だ。海の透明度はすこぶるよく、海底がよく見えるんだ。小さな魚がちらほら泳いでいるのもよく見える。沖に行くと、岩場になっている。こんなに綺麗な海、千葉県には無かった。なんとなく、海の水を手ですくい、なめてみた。しょっぱい。普通の海より塩分が濃く感じる。海を見て、凄く興奮しているボクを亀さん達は微笑んでみていた。

最後に案内されたのは、ボクが働く場所。ビーチテラスのカウンターバーだ。浜辺に沿って作られた木製デッキの上に、パラソルがいくつもあって、その下にテーブル席がある。その端っこで、ドリンクや軽食を販売するカウンターバーがあって、綺麗な海を眺めながらゆったりとした時を過ごせるんだ。

「早速だけど、今日から働いてほしいんだ」

クラゲ太郎さんがそう言ったんだ。ボクはわかりますたと返事をするも、ここで働くにふさわしい制服的な服を持っていない事を告げた。

「制服的な服?あるよ」

クラゲ太郎さんは女性用の水着を、しかもビキニ水着を持って来たんだ。

「クラゲ太郎さん!ボクは男ですよ!」

「え?何か問題でも?」

すげえ、最先端を行ってる考えの持ち主だった。

「えーてるちゃんはかわいいから、絶対似合うと思うよ」

「え・・・でも・・・」

ボクがそれを着たとしよう。もちろん、おてぃんてぃんがもっこりしてしまうのは着る前からよくわかるんだ。

「股間がマリモッコリして、南国どころか北海道になっちゃいます」

っと、素直に心配している事を告げたんだ。ちゃんと述べる事は大事なんだ。

「ならこのフリフリなスカートも装備するといい。防御力も上がるぞ」

っと、水着用のフリルスカートを渡してくれた。

「回避率もアップするんだ。知ってるか?」

ゲームのネタだろう。こういう軽い装備品は防御力は低いけど、攻撃回避能力が上がるのがJRPGのお約束なんだ。ボクは更衣室で着替えて、カラフルなハイビスカス模様の水着姿になったんだ。すると、売店のおばさん、宿泊施設担当のおじさんおばさん、従業員のみんなが興味本位でボクを見に集まった。みんなかわいいかわいいと、ハゲー、ハゲーと言っている。

恥ずかしい気持ちもあったんだけど、助けてくれた島の人達の役に立ちたい気持ちが大きくて、ボクは頑張る事にしたんだ。こうして、ボクのサノバビーチの生活が始まったんだ。

ボクのメインの仕事はカウンターバーのウェイターだ。お客さんがいない時は、テーブルを綺麗にしたり、デッキの掃除をしたり、浜辺のゴミ拾いをしたりするんだ。カウンターバーにはバーテンダーのホラ貝 吹き太郎さんがいる。吹き太郎さんはうぇいうぇいとしか言葉を発さないが、作るトロピカルカクテルは見た目も綺麗で、味もいいと評判なんだ。後、ボクと同じくウェイターをするメンバーはボク以外に2人いるんだ。今日はもう少し後になってくるらしい。

お客さんはサーファーのおっさん。まだ心はお兄さんのおっさん。心兄おっさんは波乗りを試みた後にノンアルコールカクテルを頼んでパラソルのしたでゆっくりと休むのが日課らしい。ボクが注文のノンアルコールカクテル『ドーテー・オン・ザ・ビーチ』を持って行くと、心兄おっさんはボクの姿を二度見したんだ。

「え?!何!?かわいいんだけど!!」

心兄おっさんはオーバーに驚いたリアクションを取っている。

「はい。よく言われます」

「え?何?新人さん?」

「はい。よく言われます」

「こんなかわいい子が入ったなんて聞いてないよマスター」

っと、カウンターバーの吹き太郎に向かって言う心兄おっさん

「うぇーい!うぇいうぇいうぇーい!」

「え?ナンパするなって?わかってるよ!口説くだけだよ!」

なんか、常人じゃ理解できない会話をしているようだ。

「ねえ、君、何処から来たの?名前は?年齢は?スリーサイズは?俺んとここねーか?」

最後に木更津っぽかった一言があったけど気にしない。

「お客様~。ご想像に任せます」

「そうか~、続きはwebか・・・」

心兄おっさんは常連客のようで、サーフィンをする為に島に移住してきたそうだ。

そう、聞いても無いのに語りだしたんだ。

「うぇいうぇい~」

「あ、掃除しないと。ごめんねおっさん。また話し聞かせてね~」

吹き太郎さんが気を利かせて何か述べてくれたおかげで長い話から解放された。でも、本当は何って言っていたかはわからなかったんだけどね。

ボクがデッキの掃除をしていると、もう一人のウェイターの子が現れた。

「え?誰?新人?」

「初めまして。新人です」

その子は女の子で、サトウキビ カジリコさんというそうだ。高校卒業後に結婚するも、相手が糞過ぎて別れたそうで、現在恋人募集中との事。早い結婚が無ければ島にいる事も無かったんだとか。

「かわいい・・・君、本当に男なの?」

カジリコさんはボクの性別を疑っている。これが当然のリアクションなんだ。

「はい。一応、男となっています」

「はげぇ・・・信じられんっちよ・・・あ、方言が出ちゃった。テヘペロ」

カジリコさんは悪い人では無さそうだ。征服の水着は何故かオールドタイプのスクール水着なんだけど、これが男に受けると何処かで聞いたそうなんだが、多分、間違えた知識なんだと思った。自称、歩く青春の忘れ物であるカジリコさん。背も低く、幼いように見えるから、コアなファンが多いそうだ。得意技はポテチを食べながら足の指でテレビのリモコンを操作してチャンネルを変える事。嫌いなものはホラー映画のラブシーン。生きるか死ぬかの状況でいちゃこらしているのが見てて許せないそうだ。

今日はあまりお客さんは来なかった。忙しい時は凄いらしい。やはり、オフシーズンはこんなもんのようだ。

今日のお仕事は終わった。亀さんはガジュマルの木と一体化してボクの仕事が終わるのを大地から水を吸い上げながら待っていてくれていた。

「どう?うまくやっていけそう?」

亀さんの問いにボクは笑顔でイエスと答えた。

そんなボク達を、領海侵犯中の中国の原子力潜水艦の艦長が海の真ん中から潜望鏡ごしに温かい目で見ていた。夕日と背に海上保安庁のボンバルディアが飛んでいた。



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