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異世界魔法陣  作者: 空箱
2/4

1セーブ目

 どこかで見たことのありそうなヘッドギア、マッサージ機を魔改造したような椅子。

「さあ、これを付けて、ここに座ってくれ」

 意気揚々と小雪(こゆき)先輩とアリス先輩は準備を進める。


「え? 今日っていうか、今からですか?」

「善は急げ、時は金成だよ。少年」

 なんかそれっぽいこと言って誤魔化そうとしていないだろうか……。


「あの、質問いいですか?」

「クリア方法なんて、野暮なことは聞いてくれるなよ?」

「いえ、単純に何で、僕なんですか? 先輩達が異世界に行きたいなら、自分で普通やらないですか?」

「……馬鹿か君は。私たちがプレイしたら、誰がこの世界(ゲーム)を運営するんだい?」


 至極単純な質問をしたら、至極当然な答えが返ってきてすんなりと納得してしまう。

 もし、この時点で違和感に気がつけていたのなら……そんなたられば話今更遅いというものだ。


「さあ、今日はログインして、アカウント作成だけでいいから、やってくれるね?」

 バイトまでの時間を確認しつつ、それくらいならと、怪しげな椅子に腰掛け、ヘッドギヤを装着する。


「ログイン前にアドバイス……いや、頼み事だが、ログイン成功したら、まず最初に必ずステータス画面の確認と、プレゼントボックスの確認をしてくれ。小雪、起動だ」

 そう言い、有無を言わさずに頭部のヘッドギアと数台のコンピューターらしき機械がうなりを上げる。

()()()期待してるよ……」


「無事起動成功。バイタルも安定してますよアリス先輩」

「もう先輩はいらんだろ……さて、彼はどんな答えを出すだろうね。()()の二の舞にはなってくれるなよ……」



 身体の自由が全くきかない。だが、意識だけははっきりしている。いうならば金縛り状態だ。

 真っ暗な世界に段々と情報の色が足されていく。頭の中に直接響く電子音から、画面越し、対面で話し掛けられる感覚に次第になれる。


 身体情報。操作方法の説明が終わり、アカウント設定の最後にユーザー名の登録をさせられる。

(名前かー、本名そのままっていうのは抵抗あるよなー、まーゲームなんだしいつものソシャゲと同じでいいかー)

 なんて、考えながら名前を決定する。


「ようこそ『アール』。アンダーエデンの世界に」

 視界がフラッシュバックし、電子世界がリアルへとなる。


 VRゲームをやったことはないが、この世界(ゲーム)はその比では無いだろうと確信できる。

 リアルすぎる。指を動かす感覚も地面に立っている感覚も。何もかもが。

 言われなければ……いや、言われても気がつかないのではないだろうか? ここが現実でないなんて。


「……はは」

 思わず声が漏れる。

 声帯が震える感覚。自身の声が耳に届く感覚、全ての当たり前のことが新鮮で面白いと感じてしまう。


 右手を顔の近くから軽く下にスライドする。

 フォンと軽やかな音と共に半透明なホログラムが浮かび上がる。ステータスウィンドだ。


 自分の名前にHPゲージ、魅力たっぷりなMPゲージ。筋力や知力などなど気になる項目が盛りだくさんだが、アリス先輩の顔を立ててプレゼントボックスから確認することにした。


 左上のタブをステータスからプレゼントに意識するだけで、自然と切り替わった。

 プレゼントボックスには二つの贈り物があった。一つは”手紙“と書いてあるので、手紙なのだろう。もう一つは手紙を読んでから開けること、と書いてある。


 素直に手紙から読むことにした。


『この手紙を読んでいる居ると言うことは、無事ログインできたようで何よりだ。この手紙は読み終えると自動的に削除される様に設定してあるので読み残し注意だ。大まかに概要だけ説明をしておくと、このアンダーエデンに既存のクリアは存在しない。いわゆるノーマルエンドやハッピーエンドの事だな。あるのは死ぬことで迎えるバッドエンドと貴様自身で見つけたトゥルーエンドのみだ。よって私達は貴様の答えを楽しみしている。そして、一番重要なことだが、この世界(ゲーム)にログアウトコマンドは存在しない。がんばってくれ! PS:異世界転生らしく一つだけチートアイテムを用意しておいた。感謝してね』


「…………は?」

 んんんんんんんんんんんんんんんんんん?

 ログアウトがない……? 


 眼前に広がるホログラムを見渡す。……ない。

 ステータス画面に戻って探す。……ない。

 全ての画面を開いたり閉じたり、身体をいろいろ動かして探す。……ない。どこをどう探してもログアウトのロの字すら見つからなかった。


「騙されたーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

 アールの叫びは虚空へと消えていった。膝から崩れ落ち、人は本当の絶望に直面すると本当に膝から崩れ落ちるんだな、なんてどうでもいいことを実感していた。


 手紙も書いてあった通り、プレゼントボックスから手紙は綺麗さっぱり消え失せている。

 しばらく体操座りで放心する。

 マンガやアニメの主人公の様に前向きに切り替えることもできず、頭の中では現状整理と現実逃避でグチャグチャだった。


「……よし、死のう」

 と、決意したものの、本当に大丈夫だろうか? と、急に不安になる。

 死ぬことがではなく……いや、死ぬこともだが、『死』=ログアウトは安易な考えなのではと、思えて仕方が無かった。


 バッドエンドを迎えると明記されていても、それがログアウトとは限らないからだ。

 それに、どうやって死ぬ? 痛みは? なんて、人間いざ決めたことも逃げようと考えたら、いくらでも言い訳が浮かんでくる。

 逃げ腰の時の正当化なんて簡単なものだった。


 今ではない。先延ばしして、なんとか良案を考案しないと、精神崩壊しそうだった。

 まずは、情報。

 無知なことは罪だとなんかの本で読んだことがある。


 そのためにまずは、ステータス画面を隅から隅まで舐めるように見渡した。


名称:アール Lv1 称号なし

HP:100/100

MP:50/50

体力:5

知力:5

筋力:5

素早さ:5

運:�托シ撰シ撰シ撰シ�

耐性:なし

特性:なし




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