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06 色つきの未来


昨日救った見ず知らずの、大火傷を負って顔半分と左半身がケロイド状にただれてしまった少女ナターシャと俺は朝早くに宿を出た。


昨夜は大きなベッドだったので半分こして寝ることができた。ナターシャは優しい子だとは思うけど、チビで弟みたいなもので、全然どうということはなかったんだ。



さあ、今日からナターシャのレベリングだ。どうなることかな ?


「ナターシャは攻防には弱い魔術師だからね、少し強いくらいの敵の攻撃でも、まともに食らうだけで命が危ないんだ。

だからそれなりにステータスを上げるか物理攻撃を防ぐ手立てを用意するまでは安全重視で行こうか ?」


「うん… 」


「この村から先は俺にとって未知の土地だ。少しでも危険を避けた方が良いから、昨日来た道を戻って良く知っている森でレベリングをすることにしよう」


「うん… 」


ナターシャの武器は何なのかと思えば、なんと、その辺に落ちてそうな大きめの木の棒を持っていた。あああ、初期装備としては合っているのか……  しかし、いくらなんでもコレはマズい。


なので、前に倒した魔物からいただいたショートソードをとりあえず渡すことにした。適性は分からない。それでも木の棒よりはましだろ ? えっ ? 魔法使いは持てないって ? 待て待て、ここはクエクエの世界じゃ無いからね !!



やがて、すぐにゴブリンが現れた。

「ゴブリンは倒したことがあるか ?」

「ある… 」


「やってごらん !」

シュッ、ザー


俺はゴブリンの右足に軽く斬りかかり、致命傷にならない程度の大きな傷を与えた。これでヤツはほとんど動けない筈だ。


「ううっ、ファイヤーボール !」


シューーー ボフッ !!



ナターシャは火魔法を放ってゴブリンを倒した。


「おおっ ! 火魔法はファイヤーボールかぁ。スゴいじゃん」


たとえ傷を与えて弱らせていたとはいえ、割と軽くやっつけたな。

そうなのか ! 今まで一人で生きていく為には森の入口くらいには入っていかないと食べ物もみつけられないそうで、それを聞けばこの子が今まで必死に食いつないで来たことがうかがい知れた。


魔石を取り出して次へ進む。これくらいできるなら先の見通しが、ある程度明るい。良い方に予想外だった。

次はゴブリンが2体現れた。


「もう、ゴブリンは俺が倒すからさ、魔法は使わなくて良いよ。俺達はMPが多くないから節約が必要なんだよね。俺の後ろで身を守っているんだよ。危険を感じたら魔法を放っても構わないからね」

「うん… 」


ゴブリン2体を軽く倒した。

「スゴい… 」

「最低でもこれくらいはやれないと、君を誘えやしないよ」


ゴブリンやコボルトは俺が倒した。スライムも度々、酸を放っては手助けしてくれるんだ。オークとの戦いは俺の後ろからナターシャが魔法も放った。


実は、ナターシャのレベリングにかかりきりになってしばらく大変かな ? なんて考えていたけど、なんだか今の俺たちってバランスも良いし、一人ぼっちの時の言いようのない不安もないし…

窮地から救うつもりが、オレも助けられてるよ !


昨日のオークとの攻防はヒヤヒヤものだったけど、今日は楽勝だった。その倒したオークをあれこれ考えながらもササッとアイテムボックスにしまった。


「あれっ ? オーク… 」

「ああ、オークはアイテムボックスにしまったんだ」

「スゴい… 」


この日、二人とも大きな怪我もなく無事に終えた。


今までにゴブリンの剣はたくさん拾ったけど、初めてハイゴブリンの剣を手に入れたので使ってみたら、前の安物の剣よりずいぶんましになった。


俺はレベルがひとつ上がって15になり、ナターシャは5上がって10になった。俺も少しは、冒険者っぽくなったかな ?


さて、ナターシャの方だ。

「SPが貯まったから20使って、火魔法のレベルをひとつ上げようか ?」

「えっ ? どう… ?」


「ステータを出して、次にスキルの火魔法のところを指で押さえるんだよ」


「そんなのできない…… 」


「そうなのか ? じゃあ手伝ってあげるからさ ! いいかい ? 火魔法を上げるよ !」


「うん… うわあー !!」


俺はナターシャのスキルを操作して火魔法のレベルを上げてやった。スキルの操作はいつもゲーム感覚で普通にしていたけどナターシャには操作もできないしステータスを見ることもできないようだ。

んっ ? 普通はできないのかな ?



「さて、レベルが上がって明日が楽しみだね !」

「うんうん !」



翌日

昨日と同じエリアでレベリングをしたんだ。

ナターシャはファイヤーアローという鋭い炎を放つものと、ファイヤーウォールという炎の壁で相手の攻撃を防ぐ魔法が使えるようになった。


ファイヤーアローの威力は中々で結構使える魔法かもしれない。


この日は今のところ俺はレベルが上がらずナターシャは3上がって13になった。


ナターシャはSP50消費して土魔法や魔法回避、魔力探知などが取得できるけど、特に良いスキルがないから100まで我慢する事にしたんだ。


ナターシャ 見習い魔術師 14才 女

レベル:13 人族

攻撃力:14

守備力:16

ラック:13

体力 :21

速さ :13

魔力 :47

HP:17/24 MP:5/44 SP:68

スキル:生活魔法LV1・火魔法LV2・付与術LV1



俺のスキル候補を見ていると転移があるのを見つけたんだ。

「ええーーー ? 転移 ? 転移って、遠くまで移動できるあの転移のことか ?」


すぐに取得した。そして、試しに一度だけ実証してみたんだ。


「ナターシャ ! 転移っていうのを試してみるからさ。俺の腕に掴まってくれるかな !」


「うっ、うん… 」


「じゃあ行くよ、王都の西門へ…… 転移 !!!!」


「あっ わっ わわわわわわわわわわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー !!!!」


「キューーーーーーーーー !!!」


見事に王都の西門までの転移に成功した。予想通り、触れていると一緒に転移できるんだな。何人までいけるんだろう ?


どれぐらい遠くまで飛べるのかもまだ解らないけど使い勝手は良いし、これから色々と助けになりそうだ。



「せっかく王都まで来たのだから買い物にでも行こうか ? 在庫がカラカラだからね !」

「うんうん !!」


まず買い物の資金を調達する為にギルドに行って素材を買い取ってもらうことにした。


スケルターが居なくてホッとしたけど、奴の仲間は居たようだ。


「おーい、久し振りだなゴブリン野郎くん !! ゴブリンの仲間を連れて来たな !!」


「「「ワハハハッ……」」」


……コイツらは無視だ ! またこの前のような目にあわされたら大変だ。今日はナターシャもいるんだから、俺はいくらやられても良いけど、この子だけは絶対に守ってやらないと……


今日の受付は愛想は良くないけど美人のメラニアさんだった。今日の俺に美女を眺めて楽しむ余裕はないのだ、クソッ !!

ナターシャの登録と買い取りを頼んだ。


オークの買い取りは睾丸がセットで1万ギル(日本円で約1万円)、肉が1万ギル、一体で2万ギルになった。余りたくさん出すと時間がかかるだろうし、何かと面倒な事になりそうだから、睾丸セットを4セットと肉を1体分で、5万ギル分売却したんだ。


「今回でケンタローさんはEランクに昇格しました。おめでとうございます」


「ありがとう !」


結局、嫌な奴等は相手にせずになんとか手早く立ち去ることができた。良かったー !


「俺…… ここの町ではさっきみたいにゴブリン野郎って言われてバカにされてるんだ。実は異世界から来たダメなヤツなんだよ。俺が罵倒されるのはどうでも良いけど、ナターシャまで一緒にけなされてゴメンな !」


「ケンタローはダメじゃない !」


ナターシャはケンタローのことを兄のように信頼していたし、導いてくれたことを心から感謝していたのだった。


「良いよ、あんな奴等は気にしてないから…… 良いか ? バカと言われてもゴブリン野郎と言われてもな、俺は全然平気なんだよ。頭の良い人や人間味のある人はそんな事は言わないはずだろ ? バカにされたらそう考えるんだ !!」


「それとな、そういう状況を変えるにはさ、相手を変えるのはできないから自分を変えるんだって。自分が強くなれば相手はおのずから変わるんだってさ」


「うん、分かった… 」



それから、在庫を補充する為に市場へ行った。

王都の市場は夕方の食事時でスゴい人混みだったんだ。

「うわあー♡」


珍しくナターシャの瞳が輝いていた。市場のようなところが好きなのだろうか ?

彼女が喜ぶと不思議と俺も嬉しい。一人だったら同じ時、同じ場所でも、こんな風には思わなかっただろう。一人旅と二人とでは全然違うのかも知れないな ?


市場ではバラックやテントのような造りの店が軒を連ねていて、多くの人が行き交い、野菜を売る店や肉を売る店、雑貨店もあり、中々に盛況なようだ。


 商店ではたくさんの種類の野菜が置かれていて調味料やハーブ類といった変わった物もあるようだ。


「屋台で好きなものを買ってきて食べようか ?」


「うんうん !!」


ハハハ、ナターシャは見掛けによらず食いしん坊なのかな ?

そうか、これまで一人で食いつないできたんだ。

食に関して苦労知らずの俺からしたら、想像のつかないようなひもじい思いをしたんだろう。

おいしい食べ物に心奪われるのも、当然かもしれないな。


眼の前には気軽に食べられる物を売る屋台がたくさんあって、すごく良い匂いが俺達の食欲をそそる。





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