05 半身にひどい火傷痕の少女
やっとのことでレベルはそこそこ上がり、今まで何をどうして良いのか全然わからなかったけれど、初めてスキルを取得する事ができて、やっとスキルマスターとして先が見えたようで安心した。
探知は10メートル程のエリアで魔物とか小動物とか、食用の物とか、とにかく頭に思い浮かべたものを知らせてくれるスキルで、光の点灯で知らせてくれる便利なものだった。
今のところ範囲が狭くて使い勝手はいまいちだけど可能性は感じる。
一応、身近な所にいる魔物や小動物はリアルに反応して、ゴブリンなどの危険な魔物が急に圏内に入った時にはアラームで知らせてくれる。危険察知はとてもありがたいかな。このスキルが生かされて弓矢があれば飢え死にすることは無さそうだな。
あっ、今の腕前じゃだめだわ。弓の腕ももっと上がったらの話かな ?
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そのまま森を抜けると少し先に何軒かの家屋があり、集落を見付けた。そんなに立派な建物じゃないけど、掘っ建て小屋よりはしっかりした家々だ。
「ここはイージー村だよ…… 」
野良仕事をしていたおばあさんは、優しく語りかけた。
聞くところによると、近くには宿を兼ねた食事ができるところがあるそうだ、その先にはダンジョンがあるんだよと色々と教えてくれた。
ダンジョンかぁ、行ってみようかな ?
森の縁に沿って歩くとポツポツと民家があり、遠くに宿らしい建物が見えてきたけど、その手前の道端で四~五人の子供が騒いでいた。何だろう ? イヤな感じだ。
「…………気持ち悪いんだよ !!!」
「親無しの乞食女 ! こっちに来るな !」
「黒い顔の病気が移るから、この村から出てけよな !」
「ごめんなさい。うううっ」
子供なのにヒドいことを言うな ?
子供だから逆に遠慮が無いのかも知れないな ?
女の子が襲われていた。顔は布で隠していてわからないけど、確かに左手は茶色く焼け爛れている。
いじめている子供達も身なりはそれなりのボロのようだが……
少女を自分よりも下に見て罵っているのかも知れないな ?
元の世界にいた頃の俺なら見て見ぬ振りをしたんだろうけど、その女の子が泣きそうでうつむく姿がゴブリン野郎となじられた自分と重なった。ああ、俺と同じだ。そう思うと放って置けなかったんだ。
魔術師レベル5、ナターシャか ? チビで痩せてて、とても14歳には見えないな !
俺は大きな声で割って入った。
「おおーーーーーーー !! ナターシャーーーー !! 良かったぁーー。スゲー心配したんだぜ。ほらコイツ等も喜んでるだろ ?」
「キュキュッ ‼‼」
スライム達はあわててピョンピョンぴょこぴょこ跳ねだした !
突然のムチャ振りにも迅速な対応だった。コイツ等、ホントに優秀すぎるんじゃない ?
「えっ ? あっ、あの…… ?」
知らない女の子に抱き付いて申し訳ないけど、少しだけ辛抱してもらおう。
「いやぁー、良かった良かった !! この子は俺の大事な子なんだ。皆、今までナターシャと良くしてくれてありがとうな ! こんな物しかないけどお礼に食べてくれよ ! あっ、俺は王都の冒険者でケンって言うんだ !」
~~情けないけどケンタローと言うとゴブリン野郎というのがばれてしまうかも…… なんて思ってケンと略してしまった。とほほ。
とにかくそう言って、どんどんとまくし立てたんだ。困ったり策が無いと人間、饒舌になるものなのだ。
そして、子供達には買い貯めてあったお菓子を配ったんだけど…… う~~ もう本当に何も良い考えが無いぞ !! こっからどうすんだこれ ??
「おおおおーー !! 良いのかぁ ?? スゲーー↗↗ 王都のお菓子だぁ !!」
「わーい↗↗ やったー !!」
おおーーー !! 良かったー。お菓子作戦がうまくはまったみたいだよー !!
子供たちには相当珍しい物だったようでものすごく喜んでいた。
「ありがとう ! ありがとうな ! じゃあナターシャ、行こうか !」
俺は下手っぴな演技がばれないように、その子達の前から1秒でも早く立ち去りたかったんだ。あまり嘘はつけない性格なんだよね。
「えっ ? うっ……うん」
こうして彼女の手を引いて子供達には大きく手を振りながらその場から離れて行った。
……まあ、とりあえず子供達からは逃れる事ができたかな ?
初めて訪れた村で子供達に襲われていた女の子を、思い付きで連れ出してしまった…… あーーー本当にどうしよう !!!
「知り合いのような演技してゴメンな ! あっ俺はケンタローだよ」
「良いよ…… 気持ち…… 分かる……」
えっ ? 助けたい気持ちってのが分かるのか ? きっとそうだよな ?
「ナターシャ、君の荷物は ?」
「これだけ…… 」
ええっ ? 汚れた小さなズタ袋ひとつか ? 着替え程度しか入らないなさそうじゃないか ?
まさか全部でこれだけってことは無いよな、他にも家とかにあるんだよな ?
それから、とりあえず歩きながら話した。
そのまさかは真実だった。彼女の持ち物はそのズタ袋ひとつだったのだ。
身寄りは叔母だけ、実は仕事も無くて、食事は魚や山野草で食い繋いでいると言うんだ。
…………
(グーー) ‼
「お腹へってるのか ? 助けたのも何かの縁だし、一緒に何か食べようか ?」
「うっ うん ‼ 良いの ?」
「俺さ…… 最近やっと稼げるようになったんだよ。だからさ、ご飯ぐらいは腹一杯食べさせてやれるよ !」
「うん… 」
村の入り口にいた優しいおばあさんに聞いたお店、夢いろ亭という宿を見付けた。
「いらっしゃい」
中に入るとぱっと見は食堂になっていて、まあまあ感じの良いお姉さんが迎えてくれた。宿の話は後回しにして、まずは腹ごなしに卵と肉が乗ったうどんを大盛りで2つもらったんだ。
「遠慮せずにたべなよ !」
すると、ナターシャは余程腹が減っていたのかスゴい勢いで掻き込んだ。
「そんなに腹が減ってたのかい ?」
「2日ぶり…… ズルズルズルッ、ふはっ、美味し…… うっ、ううっ、ズルズルッ……」
2日ぶり ?? 本当に苦労してんだなー !? 何か感極まったのだろう、若干泣きながら食べている。
肌は酷い火傷で爛れてしまって可哀想なほどだけど、おとなしくて可愛い声の素直そうな子だ。
こんな小さくて優しそうな子をイジメるなんて絶対に許せないよ !!!
外見や階級や肌の色などで差別をすることは元世界の時から辟易する。
これはオレの性分かも知れない。
「慌てずに食えよ、おかわりしたって良いんだぜ !」
「私なんて死んでも良いのに…… お腹空いて…… ケンタロー優し…… 涙…… ううっ !」
「あんたはこの子の兄さんかい ?」
「違いますけど、まあ妹のようなものですよ」
この状況ではこう言うしかないよな……
「そうかい ! 良かったねえ、ナターシャ」
「 …うん 」
「この娘は隣の村から流れてきてね、辛い思いをしたんだよ…… 」
「うっ、隣村の叔母さん、お金無くて養えないって…… 」
「今日はもう遅いからうちに泊まってくんだろ !」
「ああ、お世話になるよ」
「あっ私、外で…… 」
「一外でなんてあり得ないだろ ? 一人も二人も変わらないさ、遠慮するなよ !」
そうかぁ、みなし児 ? 二日も三日もご飯を食べられないのか ? ってことは仕事なんて見つけられないんだろうな ?
俺は自分一人でも生活していくのがやっとだけど、こんなに小さくて優しそうな少女が世間の荒波にのまれているのを見捨てても良いのだろうか ?
明日になって別れたら、この子簡単に野垂れ死んじゃいそうだよな。
俺に力があれば助けたいけど、今の俺はビミョウなところだよ。
だけどなぁ、魔術師のこの子をうまく育てられれば……
うーん。時間をかければ俺と同じレベル3から14にするまでくらいならできなくはないよなー ?!
できなくはない。うーん、できなくは……
………
「あのさ…… これは提案なんだけどナターシャ。魔物を倒して生活できるようになりたくないか ?」
「簡単な魔法しか……」
「その魔法だよ ! ナターシャのステータスは悪くないと思うんだよな ! 頑張れば君の未来は七色に輝くかも知れないよ ?!」
「なないろ… ‼?‼?」
この時、俺には解らなかったけど暗かったナターシャの瞳には(希望)という光がホンの僅かに… 本当に僅かに差し込んだのだ。
この子が好きとか可愛いとか、エッチな事をしようなどという気は更々なかった。ただ何かの力になりたいとぼんやりと思っただけだった。
何気なくだったけどここまで連れてきてしまったからにはこのまま放り出してしまって良いのか ? という気持ちが大きかった。無駄に責任感は強いんだよな。
「どうせ時間はイヤってほどあるし、俺もまだしばらくレベル上げをしなければならないから、ナターシャを連れて行ったら魔物を倒して生活できるくらいまでには育ててやれるだろうし、お互いにプラスになる気がしたんだよね…… どうだろう ?」
まあ、これも思い付きなんだけどさ。
「うん… お願い… します」
普通なら他愛ないお願いします、というセリフだけど、ナターシャは相当な覚悟を持って応えていた。
いつもの彼女だったら控えめに断る以外に選択肢はなかったはずだ。
しかし、この時は七色の未来という提案にとてつもなく大きく心を動かされていた。
実は、これが彼女の人生を左右する大きな分岐点となるのだ。ただ、今の俺たちにはそんな事に気が付くよしもないのだが……
ナターシャ 見習い魔術師 14才 女
レベル:5 人族
攻撃力:9
守備力:11
ラック:10
体力 :14
速さ :8
魔力 :23
HP:10/15 MP:11/22 SP:12
スキル:生活魔法LV1・火魔法LV1・付与術LV1




