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02 ゴブオって…


あゝ抱きしめたい !

淡い金の髪の超絶美少女の言いようのない魅力と戦っている。


恋愛のレの字も知らないオレは一瞬、コレが世間でよく言うひとめ惚れというものなのかと思い込みそうになった。だがしかし、スンデのところで魅惑の魔法にヤラれているんだと気が付いた。


もしかしたら俺たちを傀儡のように従わせようとしているのだろうか。ただそれは、生まれつきの能力で常時発動なのかも知れないけど……


だとすれば、女神様にとっては特別に禁忌などと意識してないのかも知れない。

ともあれ俺は本当にギリギリのところで魅惑から逃れることはできたんだ。


ただその流れそのものには逆らえず水晶玉に手を乗せられてしまった。

すると俺の方からは文字と数値が確認できた。

しかしそれを確認する前に女神様は大きな声を挙げた。

おいおい、何かチートなすごいのでも出ちゃったのかぁ ? これは期待してしまうよね。


「スキルマスターです !!! 今までに聞いたことがない新しい職種ですわ !!」


「うおおおおー それは素晴らしい、さすがは異世界の方ですな !」


おおおーーー !! スキルマスターかぁ !? 俺も聞いたこと無いけど、なかなかスゴそうなのを引いたなぁ !!


「あらっ ?

 あららららららっ ?」


えっ ? あらっとは何だ、女神様 ??

止めてくれよ ! なんだかとてもイヤな予感がする。


「ゴブリンでも、上位種ならもう少しステ高いわよね !! レベル3ですって。なんだ、外れスキルかぁ、クソね ! ざーーんねん !」


何 ?

なんだ ?

やめてくれよ。恐いぞ !?

皆に聞こえない小さな声でクソって、ゴブリンって言いましたよね、女神様ーー !!!

めちゃくちゃキレイで素敵な女性なのにーー !


それにある意味じゃ、初恋の人だったのにー ! 

こわっ、裏の顔こわっ !! 

だけど、嫌いになんてなれない。きっとまだ少し、あの魅惑の魔法に頭をやられているのだろうな ?


こんなこと声に出しては反論できないから、当然心の中でつぶやいていた。

それから俺も遅れてステータスを見た。


ケンタロー スキルマスター 16才 男

レベル:3 人族 異世界人

攻撃力:18

守備力:9

ラック:7

体力 :16

速さ :14

魔力 :13

HP:19/19 MP:8/8 SP:0

スキル:鑑定・アイテムボックス


ぐあっっっ !!!!

ホントだ、あちゃー ! やっちまったぜ !

こりゃあ、俺の知ってるロープレのクエクエとかでも始まりの町とかにいるレベルだわ。

こんなんじゃあ、女神様の御言葉も頷けるってもんだ !

 

「ケンタローは犯罪者か浮浪者だったのかしら ?」


「えっ ? 女神様 ? ひょっとして、俺の評価は最下層にまで落ちたのでしょうか ? だって俺だけ呼び捨てで、タメ口だし…… 」


このヒト、裏表あり過ぎだね ? 美人が台無しだよー ! 影でボロくそに言われちゃうし、さっきまでオレの人生の中じゃ貴女の第一印象は世界最高評価だったというのに……

ああ、だけど考えようによっては

オレって人を見る目が無いのかな ? うん、無いんだろうな。


「かような底辺の者に配慮など必要あるまい。わらわに会えただけでも光栄であったであろう ?」


「やっぱりそうくるかぁーーー !!

 あーー まあ、良い思いはさせてもらったのかな ?

 もういいや。

 でも俺、犯罪なんて犯したことも無いし、家は普通の中流階級だぜ !」


「ふふん、開き直りおったな、ゴブリン男め。ゴブオと話しても時間と声帯のムダゆえ、もうわらわの視界から消えて良いぞ。 誰ぞ、早うこ奴に駄賃を持て!」


はい。ゴブオの称号いただきました !

声帯のムダって、消えろって ? そのうち靴を舐めろとかって、新手のゴブオプレイでもしてくれるんですかね ?


素敵な女神様だと思ったけど、裏の顔はちょっとキツい人だなぁ。ゴブオプレイに少しだけ未練はあるけど、まあ、早めに判って良かったかな ?! 


もう少しで女神様好き好き状態にされるところだったし。魅了されたまま放り出されるなんて、想像しただけでも恐ろしいよー !



「おい、早く女神樣の前から失せるのだ ! ゴブオめが !」


「うわっ、痛たたっ ! 行くから、そんなに強く掴まないでくれよー !」


 屈強な兵士が俺の両脇にガシっと掴みかかり、連行されてしまったんだ。ヒドい扱いだ。

文官も後から追ってきて、散々罵られた。一応、駄賃を用意して来たのか、雑にお金らしき巾着は渡され、入り組んだ城の中をそのままずっと連れて行かれた。


生徒会長のハルトくらいは引き留めてくれても良さそうなものだけど、やっぱり魅惑の効果があるのかな ? 残念ながら彼らは助けてくれなかったんだ。


一瞬だけ持ち上げてからの扱き下ろし。ヒドい。最悪だ ! 精神的にもかなり辛いよぉ。


だけどよくよく考えてみたら、ゴブリン男だといって、殺されたり幽閉されたりしたっておかしくは無いところだったからな。追い出されても金を貰えたならまだましかもな ?


欲とかじゃないんだぜ、女神の意図だよ、意図……

だってさ、ある意味この国で生活しても良いと許可が出たといえるよね。それだけでもありがたい事だよ !


とはいえ、ろくな説明も無いまま放り出されたのには参ったよな~。これからどうしたら良いのかさっぱり分からないんだ。

 

 「ほらっゴブオめ、さっさと去れ ! しっ、しっ !」


忌み者扱いで犬のように追い払われた。

完璧にオレ自身を否定され、仲間とも引き離されてしまった。

しかもよりによってここいらには人が溢れている。

王都というだけあり、とてもたくさんの人がいるのだ。

今は街を行き交う人たちの視線が痛いよ。

あゝ、これはキツいなあ !!

 


 ▼▽▼▽▼▽▼▽


▼▽▼▽▼▽▼▽▼


とりあえず仕方無しに街中へと歩み出す。人々の視線から我が身を隠すようにして……

一方、そこは白とオレンジを基調とした中世ヨーロッパのような美しい街並みだった。


キレイに整備された石だたみの道に同じ色に統一された建物。見とれてしまう !


美しい景色を見ても心は暗い。どうしてもあの侮辱が頭をよぎってしまう。くやしい ! もっと上手く対応できなかったのだろうか ? そして俺はこの世界でどうにかやっていけるのだろうか ?

心配だ。

だけど、このままくよくよしてもしょうがないか ?


簡単に気持ちは切り替えられないが、生きていく為に何かをしようと思った。

後悔を繰り返すよりも一歩でも歩き出そう…




まずお店とか市場を探して、水と食糧の確保と食事をした。

それから最低限の一番安い武器(剣と弓と矢)を買った。それで残ったお金は銀貨一枚(日本円で約1万円くらいのようだ)とちょっとになってしまったんだ。

貰ったお金はそんなに多くなかった。

王家から貰うんだから相当だろうと期待したけど、本当に大人の駄賃程度だった。やっぱりゴブリン男という印象が良くなかったんだろうな。


そうそう、簡単に説明したけどさ、知らない街であれこれ試行錯誤しながら、3時間以上は費やしたんだよ。これでもかなり急いだんだ。


もう、お金も無い。行く宛もない。仲間もこっちに来たばかりで今の状況では頼ることもできそうにない。

そうなると俺にできることは限られている。

なんらかの仕事を得るか、強くなるしかない。


だから早速街から出て、草原に行ったんだ。

初めての冒険だ。あっさりと死にたくないから、せめて慎重にいきたい。幸い女神にはゴブリン男と言われたけどスキルマスターには鑑定とアイテムボックスのスキルが付いていた。


これで何とかするしかない。

少し進んだところで弓の特訓をしてみた。


しばらくして、何とか飛ばすことはできるようになったけど…… まあ、期待するほどではないよ。ハハハハッ ! ↘↘↘


安物の剣を振ってみたり、あれこれ試してみる。

サマになっているかどうかも分からないが…


最初に現れた敵は一体のゴブリンだった。ゲームとかで見たゴブリンよりも実物は獰猛(どうもう)で生々しい奴だった。


鑑定したらステータスは俺の半分くらいだ。

最悪逃げれば良いし、 これなら楽勝でしょう。

さあ俺の冒険の始まりだ !!


「わああああーーー !!!」


そのままゴブリンの方へ大きな声を挙げながら躍り出て、ショートソード(中古の)で斬りかかった。


ガキィーーーン ///


むろん、剣技などあるはずもなく、基礎レベルが3の素人の我流剣。要するに子供のチャンバラ並みの一刀はゴブリンに軽く受けられてしまった。


 ……うううーー、予想と違う。

ゴブリンなんて一撃でサクッと斬り捨てられると思ってのにな。

これはまずいぞ !


ゴブリンも錆びた剣で俺を斬ろうとして必死に掛かってくるんだ。目の前のグロい魔物から感じる生々しい闘志は平和慣れした普通の日本人の俺には恐ろしいモノだったんだ。

 ゲームとはまるで別物だ。


下手して当てられたらザクッと切れちゃうよ。恐いなぁ !!

ヤバイぞ。命のやり取りなんてしたこと無いし……


ううっ、技術は下手くそでもステータスでは勝っているんだ。

そう思いグイグイ押し込んでいくと、ゴブリンが受け止めた剣ごとグイッと軽く押すことができた。


やはり、ステータス的にはかなり俺の方に分があるようだ。

ムキになってショートソードをゴブリンの首まで押した。ヤイバが首に当たる。力でギリギリと押し込んで切ろうとした。

熱くなって思考も低下している。技やテクニックなど全く無い。力で押すことしかできない。


どうしようもないクソ試合になってしまった。

それでもオレとしては必死なんだ。


「うおおおおーー !!!」

「グモモモッ !」


剣も技もあったもんではない。俺は完全にテンパっている。生まれて初めての戦闘…


これでも必死に殺られまいと、限界まで身体と心を高ぶらせて目の前のゴブリンを倒そうとしているんだ。


「うわああ、くおおおーー !!」


「ギッギッギギギッ」


精一杯の力を込めて、ただ首に剣を押し込み続けた。やがてショートソードが半分ほど食い込むと、ゴブリンはふっと力なく崩れ落ちたんだ。



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