ピンクトパーズのリング③
「えっ!?ヴィオラなんだよそいつ?!」
バトラはギョッとした顔で大声を上げた。いきなり見知らぬ少女がヴィオラと共にプライベートルームに入ってきたのだ。ここはヴィオラとバトラの生活拠点なのだから驚きもする。
「失礼よバトラ。この子はペルラから来たオルコットさん。私が魔宝飾を作る様子を見たいんですって」
「ヴィオラ……アンタがここに他人を上がらせるなんてどういうこった……」
「見たいって言ったから見せようと思ったまでよ。何か悪い?」
文句を飛ばすバトラをヴィオラはじろっと睨んだ。オルコットは見慣れない恰好をしたバトラに興味が湧いたのか、「すごい髪型と服装〜!」とまじまじ見つめた。その言葉にバトラはいかにも不快そうな表情をする。このスタイルはバトラにとっては普通だからだ。
「これがオレの当たり前なんだよ。そんな珍しいモン見るような目で見るな。気分悪い」
「バートーラ、やめなさいってば!」
「だってヴィオラ」
「お客さんなのよ?」
むすっとした表情でヴィオラがバトラに怒る。オルコットな視線を送れば、少しだけ申し訳なく肩を落としていた。どうやら反省しているようである。ヴィオラは「そんなに落ち込まなくてもいいわよ」と慰めた。
「その……すみません、バトラ?さん……。これまで見たことのなかった方で……」
オルコットは謝るが、バトラはツンとしている。かなり機嫌を損ねてしまったのかバトラは孔雀の姿になって外へと飛び立ってしまった。それにオルコットは目を見開いて驚く。声を震わせてヴィオラに訪ねた。
「あ、あの……バトラさんは一体……?」
「彼は精霊なの。それもとびきり特別なね。ごめんなさいね、嫌な思いさせちゃったわよね」
ヴィオラが申し訳無さそうに言うとオルコットは首をブンブンと横に振った。飛び跳ねるようだった姿が今は嘘のようにシュンとしている。
「いえ、こちらこそ失礼なことを言ってしまったみたいで……」
「あれはあれで困りものなの。お腹が空いたら帰ってくるから気にしないでね」
そう言うとヴィオラは作業机の横に丸椅子を置いて「どうぞ」と微笑む。そろそろとオルコットは用意してもらった椅子に座った。
「じゃあさっそくだけど、このネックレスをリメイクさせてもらうわ。……本当にいいのね?」
「はい。もちろんです、よろしくおねがいします」
ヴィオラはピンクトパーズが飾られている台座のツメ部分を器具を用いて器用に、ピンクトパーズを傷つけないようにそっと反らしていく。全てのツメ部分を反らし終わったとき、大粒のピンクトパーズが自由の身となった。
「素敵……クッションカットね」
「くっしょんかっと?」
「長方形だけど角が丸い、クッションみたいな形にカットする方法よ。これを半分にしてしまうなんてもったいないわね……」
名残惜しそうにヴィオラはピンクトパーズを見つめた。太陽の光を取り込んで、反射し、ピンクの輝きがその場に広がった。
「どんなカットにするんですか?」
「運命の人に渡すペアリングをお望みなのよね?」
「は、はい!そうです!」
「それならデザイン画と少し変わるけれど、ハートシェイプカットはどうかしら?名前の通り、ハートの形にカットしたものよ」
「はーと……。それでリメイクしてください!」
そこからヴィオラの作業が始まった。クッションカットされたピンクトパーズを二つに割ると、細かい宝石の粒が作業机に飛び散った。その片割れを手に取ると、カットが始まった。オルコットは息を呑んでその様子をじっと見つめている。一面が砕けた長方形になっていたものが正方形に、正方形が少しずつ削り取られてハートの形へと変わっていく。
「……すごい」
ようやっとオルコットが絞り出した声がこれだった。長い時間をかけ、ようやく一つ目のカットが終わったときにはもう夕方になっていた。
「はー、今日はここまでかしらねぇ。オルコットさん、もう暗くなるからお帰りなさい。宿は取ってあるでしょう?」
伸びをしながらヴィオラは尋ねた。オルコットは頷き、ヴィオラに礼を言って家から出ていった。
グッドハーブニング!!如月霜子です!今回もお読みくださりありがとうございます!!
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これからも頑張って更新していくので、どうぞよろしくおねがいします。
それではまた明日!バーイ!