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コスモスのリース①

魔宝飾の可能性を広げるのも、魔宝飾技師の仕事の一つだ。身につける装飾品としての魔宝飾以外の物の考案や研究を主な仕事にしている魔宝飾技師もいる。

それは部屋に飾るインテリアや小物だったり、アクセサリーでは無いがお守りとしての魔宝飾などなど。日々魔宝飾技師たちはオーダーに追われる傍ら追究を欠かしていないのだ。


元来装身具として誕生した魔宝飾は、魔宝飾技師たちの手によってその守備範囲を大きく広げることとなったのである。



❋❋



「失礼、この辺りで女性の魔宝飾技師を見なかったか?」


「いいや。こんな辺鄙なところに魔宝飾技師がいると思うかい?」


ここは王都シンシアンから遠く離れた小さな村。農産物を領主に献上することで経済を回している。アーロンは虱潰しにあらゆる村や集落を訪れて回り、『フィアルカ』を探し求めた。


道中は野生動物や破落戸がいて危険だろうと、女王から強力な魔除けの魔宝飾を授かり、お陰で夜の道でも安全に行動することができた。こんなものがあっては色々と成り立たなくなるものもあるだろうが、この魔除けの魔宝飾は王国に二つしかない。アーロンが女王から授かる前は、女王が二つとも所有していた。女王が城外に出たときに何も起こらないよう、『フィアルカ』が未知の鉱石を削り磨き上げて作った渾身の一作だった。一つは常に持ってもらい、一つは予備として。アーロンが渡されたのは予備のものだ。


「魔宝飾技師は常に未知の素材を求めています。田舎ならば、そういったものが見つかりそうなので、いやしないかなと」


「残念だけど、魔宝飾技師は見たこともないね。アンタ、どうして魔宝飾技師を探してるんだい?」


「……それは言えません」


女王直々の命令を、王都から離れた田舎の人間とはいえ誰に通じているかわからない。気軽に話すわけにもいかない。アーロンは話しかけた年配の女性に失礼しますと頭を下げてからため息をついた。


ここも駄目だ。


アーロンは手にしている王国の地図を広げ、今いる村の箇所に木炭でばつ印を付けた。地図には幾つものばつ印が付いていた。アーロンが自力で回った証拠である。地図を丸め、リュックサックに仕舞い込む。ふと腹の虫が鳴った。これは腹ごしらえをせねばなとアーロンは困り顔をする。この村の特産品を使った食事処があるのは把握していた。そこで食事をしてから安価な宿に泊まろうと、これからの計画を立てた。



❋❋



「まあ……奥様との仲が」


「えぇ……妻とは結婚して数年経つのですが、最近はすれ違い気味でして」


ヴィオラはアトリエを訪れた男性と会話をしていた。それを物陰から恨めしそうにバトラが見つめているが、ヴィオラはわかっていてスルーしていた。これは仕事であってプライベートの付き合いではない。そんなに嫌悪感を滲ませてはこちらの仕事に支障が出てしまう。しびれを切らし、あっちに行っててと手をシッシと動かす。バトラは不満げに唇を尖らせてプライベートルームに消えた。


「それで、どんな魔宝飾をお望みで?」


「また恋人同士だった頃のようになりたいとも……夫婦として家庭を幸せで満たしたいとも思っています」


「それではコスモスがお勧めです。コスモスの花言葉は家庭の幸福……きっと今のお二人を導いてくれるでしょう」


「コスモスを、どのようにしてくださりますか?」


「そうですね……少し失礼します」


ヴィオラは一度席を立ち、プライベートルームに戻った。そこではやはりバトラがロッキングチェアでゆらゆらと揺れていた。


「家庭不和?を何とかしたいって言ってるけどさ、あの人。アンタと会ってるところ見られたらもっとヤバいことになりそうだよ?」


「私は仕事をしてるだけよ。恋人も作る気無いし、結婚する気も無いし」


本棚をガサゴソと漁り、目的の物を見つけたヴィオラはそのスケッチブックを持ってアトリエへと戻った。


「おまたせしました。これを見てください」


「……これ、全部ヴィオラさんがお考えになった魔宝飾ですか?」

 

「えぇ」


テーブルの上に広げられたスケッチブックには、あらゆる魔宝飾のデザインスケッチが描かれていた。木炭で描かれたスケッチはどれも繊細で緻密で、技巧が光るデザインだ。


「全て私のオリジナルです。他の魔宝飾技師が考えたものと被らないようにするのは、大変でした」


「魔宝飾技師の方々は新しい魔宝飾を作り出す研究もされていると聞いていましたが……これだけのデザインを考えられるとは……!」


「いえ、ただこの仕事が好きなだけです」


感嘆する男性にヴィオラは微笑んだ。


「確か花を使ったデザインは……あ、ここのページです。これですね、コスモスのリースです」


「魔宝飾なのにリース……ですか」


「はい。新しいものを作り出したくて」


「では……これをお願いしてもよろしいですか?」


「お任せください!」



グッドハーブニング!如月霜子です!今回もお読みくださりありがとうございます!


いやぁ、幸せな結婚、憧れちゃいますよねぇ。私も好きな人はいるのですが画面から出てきてくれないんですよねぇ。おかしいなぁ……。

けど結婚はゴールじゃないんですよね。新しい人生のスタート。まあ結婚してないんですけどね、ハッハッ


素敵な方と出会えるように、私も素敵な人間でいられたらなぁと思います。


それではまた明日!

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