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グースのイヤーフック④

「こんにちは」


「あ!ヴィオラさん!」


「完成した魔宝飾を届けに来ました」


晴れた日の昼下り、ヴィオラはテラン村を訪れた。受注を受けていた魔宝飾が完成したのであちこちに届けて回っていたのだ。ヴィオラの隣には大量の荷物を抱えたバトラが立っていた。ヴィオラはバトラが持っている荷物の中から、白い紙で包まれた箱を一つ選んだ。


「はい、デイジー。貴女のクララよ」


「!ありがとう!ヴィオラさん!」


開けていい?と箱を受け取ったデイジーはワクワクうずうずして、早く中身を確認したいようであった。もちろんとヴィオラが頷くとデイジーは包み紙を丁寧に解き、蓋を開けた。


「わぁ〜!!きれい!」


箱を開けると、緩衝材として詰められた綿の上にデイジーの耳にぴったりと合うように作られたイヤーフックが二つ仕舞われていた。デイジーはイヤーフックを指で摘むと目の前まで持ってきた。ふわふわと羽根が揺れ、真珠がキラキラと輝いている。


「着けてもいい?」


「えぇ。着けてあげるわ」


ヴィオラはデイジーからイヤーフックを受け取ると、耳にそっと乗せた。そして落ちないようにフックを耳に沿うように軽く曲げる。するとデイジーの耳元が一気に彩られた。ヴィオラは手鏡をデイジーに渡して、見てご覧なさいと微笑む。


「……!クララ……!」


「?どうしたのデイジー」


「クララ!クララよ!」


ヴィオラも手鏡を覗き込む。するとデイジーの肩元には真っ白いロングドレスを着た、銀髪の美少女がにこやかな表情をして佇んでいた。ヴィオラはハッとしてデイジー本人の背後を見たが、そこには誰もいない。バトラの方を見ると、彼は微笑んでいた。


「ねぇヴィオラさん。どうしてクララが手鏡の中に見えるの?どうしてどこにもいないのに手鏡に見えるの?」


ヴィオラは膝を曲げ、デイジーと同じ視線に立つ。そして手鏡を握るデイジーの手を包み込むようにヴィオラが手を重ねた。


「デイジーあのね、鏡は真実を映し出すのよ」


「しんじつ?」


「そう。本当のことよ」


ヴィオラが手鏡に映る少女に向かって手を振ると、少女も手を振り返してきた。戸惑いながらデイジーも手を振る。するとヴィオラが手を振ったときよりも明るく、嬉しそうに無邪気に飛び跳ねながら手を振った。


「どうなってるの?クララは鏡の中にしかいないの?」


「今はね。……デイジー、クララは精霊になったのよ」


「せいれい?魔宝飾に宿るっていう?」


「そうよ。クララは可哀想に出荷されてしまったけど、羽根だけが残っていた。だからクララの心が羽根に宿ったのでしょうね。そして、魔宝飾になったことでクララは精霊になったのよ」


「クララは、いきてるの?」


「そういうことになるわね」


ヴィオラが肯定すると、デイジーの瞳からポロポロと涙が溢れ出した。笑顔が消えてただただ涙が流れてくる。袖で涙を拭っても拭っても涙は止まらない。手鏡の中の精霊になったクララは心配そうにそんなデイジーを見つめていた。


「ひっ……うぇっ……クララぁ……クララぁ……!クララ、生きてたんだね……!」


「クララはいつかきっと、貴女の前に現れるわ。私のバトラも長い時を経てから現れたの。だから待ち続けてあげて?」


ヴィオラはデイジーを抱きしめた。デイジーは「うん、うん、」と泣きながら頷いた。





グッドハーブニング!如月霜子です!今回もお読みくださりありがとうございます!


昨日更新が無かったのにも関わらず、見てくださった方がいらっしゃるようでとても嬉しいです!これに慢心せず、今日からもまた毎日更新していきます!


私はペットなどを飼ったことが無いのですが、その代わりにぬいぐるみをたくさん持っています。そんなぬいぐるみたちが動き出して自分を見守ってくれたらいいなぁと小さい頃から思っていて、この話ができました。


次回からはまた別の人がやってきます。そろそろ男性かな……。そして「フィアルカ」を探すアーロンのことも……。


それではまた明日!

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