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グースのイヤーフック③

真珠一つをとっても、その色味や光沢は違う。真っ白なもの、ほんのり色づいているもの……その中でもヴィオラは真っ白なものを選んだ。相手が家禽であろうと心を寄せているデイジーには純粋な心を持ち続けてほしい。そんな願いを込めて。


羽根の根元に金具を付け、そこに穴を開けていた真珠を通す。それを羽根の枚数だけ……六つ作り、耳に沿う形をしたイヤーフックの輪っかの部分に通してプライヤーで曲げた。イヤーフックの上の部分を摘んでゆらゆらと揺らす。太陽の光に翳すと羽根が透け、真珠はキラキラと輝いた。


「ふふ、我ながらいい出来ね」


「へぇ、見せてよ」


ずい、とバトラが体を寄せる。完成した魔宝飾をまじまじと見つめ、「へぇ〜」と感嘆の声を上げた。


「やるじゃん。めっちゃ綺麗」


「でしょ?」


ヴィオラは得意げに笑ってみせた。


「渡すのが楽しみだわ」



❋❋



「アーロン、アーロンはおるか」


王都シンシアンの中央に位置する王城。女王は一人の人物を探して廊下を彷徨い歩いていた。赤いカーペットが敷かれ、壁には何十枚もの絵画が木の額縁に飾られている。そんな中を一人、歩いていた。人を呼ぶ声が廊下に静かに響く。


「はい、女王陛下、ここに」


「おぉアーロン、そこにおったか」


女王は目的の人物を見つけてほっと胸を撫で下ろした。


アーロン・クロッシェンヌは宮廷付きの魔宝飾技師だ。長く淡い金髪を両肩に垂らし、エメラルドとサファイアの頭飾りを着けてている。床に引きずるほど長い袖と裾の服は金糸で縁取られ、神聖な雰囲気すら感じられる。中性的な美しい顔つきがそう思わせるのかもしれない。


「アーロン、実は良い報せがある」


「良い報せ、ですか」


アーロンは跪き、頭を下げたまま女王の言葉に耳を傾けた。いつになく女王は機嫌が良かった。アーロンはそのことを不思議に、というよりかは不可解に思った。女王は腹心の友を失ってから情緒が不安定だったからだ。


「我が友が、見つかったやもしれぬ」


「陛下のご友人……と言いますと、まさか、」


思わずアーロンは顔を上げる。女王は穏やかに微笑んでいた。


「そう。そなたの良きライバルでもあった、あの女だ」


「しかし彼女は行方不明になったのでは……」


「不思議なものでのう。彼女が手掛けたと思われる魔宝飾を着けた者を見かけた」


女王は彼女の魔宝飾を一番近いところで見てきた。見間違えるはずがないだろう。だが、王都から逃げ出した彼女が、王都にいる人間に魔宝飾を作るはずがない。疑問点は多く残っていた。


「近くで見せてもろうたが、間違いない。あれは彼女が作ったものだ」


「左様でございますか」


女王はこくりと頷く。やはりその表情は嬉しそうだ。


「アーロン、そなたには彼女を探してほしい。私と同じくらい、彼女の魔宝飾を見てきたそなたならきっと彼女を見つけられるはずだろう」


「そうなると宮廷魔宝飾技師の役職は、誰が……?」


宮廷付きの魔宝飾技師は、女王や主要な王族の魔宝飾を作るという重要な仕事を任されている。そう簡単に後任を決められるものでもない。『彼女』の後任であったアーロンはそれをよく知っていた。


「そなたの後任はじきに決める。それよりも妾は彼女に戻ってきてもらいたいのだ。そして再び、宮廷付きになってもらいたい……」


「陛下の御心中、お察し致します」


「彼女を必ず、妾の元へ連れてきておくれ」


「しかと、心得ました」


「下がってよろしい、準備にあたれ」


女王の命を受け、アーロンは一礼してからその場から立ち去った。女王は首から下げられているロケットペンダントをカチリと開く。そこには少女時代の女王と、すみれ色の髪をした同じ年頃の少女が写った写真が仕舞い込まれていた。


「フィアルカ……何故私の前からいなくなってしまったの……?」


そう言うと、女王は涙を流した。



グッドハーブニング!如月霜子です!今回もお読み下さりありがとうございます。今回はちょっと短めですね。毎日更新するのも結構大変なんですよ(笑)


新キャラがこの章にきて二人も出てきましたね。グースのイヤーフック①ではシンシア王国の女王が、今回は宮廷付きの魔宝飾技師のアーロンが、そして謎の失踪を遂げたというアーロンの前任である「フィアルカ」……。果たしてヴィオラの過去にどう絡んでいくのでしょうか。


また明日ですが、誠に勝手ながら更新をお休みさせていただきます。一日だけですので、明後日はまた更新します。


それではまた明後日!

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