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天才少女は好奇心旺盛  作者: よる
第一章
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婚約者の存在

体に大きな衝撃、薄れていく思考の中私は何を考えていたっけ?どうでもいいことばかりだった気がする。


あぁ、これ完全に大腿骨顆部骨折してるわ。鎖骨もやってる。仕方ないわよね、交通事故で骨折しやすい部位なんだから。


そういえば研究室に置いている検体は誰が跡を継ぐのかしら?実験動物たちも......


まったく、準備もしてないのにいきなり死ぬなんて合理的じゃないわ。













こんなときに、思い出す”人”がいないなんて私の人生も寂しいものね......








—————————————————————————




「お前とは結婚できない!!婚約破棄を申し出る!!!」


遠のいていた意識が、突然の大声によって呼び止められる。しかも聴き慣れない単語までおまけ付きで。


億劫ではあったけどその声に従って目を開けると、そこに広がっていたのはおおよそ不可解な景色であった。


さっきまで事故の痛みで走馬灯を見ていたと思ったら、目に入るのは私の顔の前に突き出された人差し指。


目の前にはサラサラとした金髪に、青い瞳の小さな男の子が立っていておそらく私を指差していた。


「おい!聞いてるのか!?お前とは婚約破棄すると言ったんだ!」


どうやら先ほどの発言は彼から発せられたらしい。勝気に結ばれた口からはその通り気の強い言葉が飛び出している。その発言と相まって彼の青い瞳はきつく吊り上がっている。


金髪と黒髪のちがい、それは主に”メラニン”という成分の量の差だとされている。メラニンには紫外線を防ぐ効果があるとされ、日光を浴びるほどその防御反応としてメラニンが発生し肌や髪が黒く染まる。そのため日に当たる量が多い地域ほど、メラニンの量が多く黒い人種が増えるのだ。


その反対に日照時間の少ない北の地域は、メラニンの分泌量が少なく金やブランドといった白に近い髪になる。瞳の色が違うのも同じ原理である。遺伝や食生活の違いという説もあるがまぁそこは割愛させてもらう。


つまり、目の前に立つ少年の髪と瞳の色が天然物であると仮定すれば、ここは”ニホン”ではなく別の地域ということになる。


この間1秒、どうやら私の脳はこの不思議なシチュエーションを冷静に分析しある一つの結論にたどり着いた。


“私はあの事故で死に、まったく異なる世界に生まれ変わってしまった”





.......。


馬鹿馬鹿しい、まったく現実的ではない。自分で出した結論だが何とも科学的根拠に欠けた話である。そもそも私は輪廻転生を信じていないし、タイムマシンだって原理は証明されていてもいまだに実行されていないのだから。


じゃあこれは夢??


それこそありえない。夢とは、断片的な記憶の繋ぎ合わせである。つまり自分がこれまでに経験してきたものを睡眠中に脳が呼び起こし、ランダムに見ているに過ぎない。私はこんな世界を経験したことはないし、ファンタジー小説だって読んだことがないのだ。



「おい!!!何か言え!!」


おっと、考え込んでいて目の前のことを忘れていた。


「えっと...あなた誰?」


私にとっては当たり前の疑問、自分が死んだと思ったらいきなり違う世界にいて婚約破棄なんて意味わからないことを告げられて。しかも指差し。


「あと、人のこと指差さないで。不愉快。」


とりあえず思ったことを発言する。しかしこの言葉を聞いた途端、目の前の子の目はさらに釣り上がった。しかもワナワナと体を震わせている。私何か悪いことでも言ったかしら?


「おおおお前!!!誰に向かって口を聞いてるんだ!?俺はバチェスター領侯爵家長男のアルベルト・ミレー・バチェスターだぞ!?俺より下の爵位のくせに生意気なことを!!そもそもお前とは政略結婚であってそれを我慢してお前をめとってやるというのに、少しは恩を感じたらどうなんだ??挙げ句の果てに俺に向かって誰などと...!しばらく会いに来なかったから忘れたとは、薄情な女だ!!」


間に発言するまもなく、目の前の男の子-アルベルトは捲し立てるとはぁはぁと肩で息をし始めた。


丁寧な自己紹介と説明ありがとう。アルベルトのおかげで今の状況は何となく把握できたわ。爵位で地位が成り立っているってことはここはヨーロッパと同じってことかしら?


私は彼と婚約していたけど、今婚約破棄を申し込まれている途中。その理由は分からないけれど、彼より爵位が下である以上は騒がない方が賢明ね。


「失礼しました、こちらも急に婚約破棄されて困惑しまして。理由を伺っても?」


「ふんっ、他に好きな女ができた。それだけだ!!」


得意顔にそう答えたアルベルトの顔は真っ赤に染まっている。好きな人...その気持ちはよく分からないけれど、どうやら本気らしいわ。どう見ても小学生くらいなのに婚約といい好きな子といい随分ませてるのね。


「そうですか、では今後は弁護士をはさんで協議しましょう。それでは。」


「べ、べんごし...???」


何だか面倒臭いわ。非合理的なことは好きではない。


私は逆に困惑し始めた元婚約者を置き去りにして、その場を去った。








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