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テック・クエスト  作者: 岡山
8/8

宿にて

「なん、だよこれ」

血だらけの部屋、横たわった女性、謎の音。

テックはそんな状況を見て、思わず呟いた。

別の物語ならば、今頃、廊下の角でニヤリと笑う人がいそうな状況である。

テックは部屋の状況を頭の中で整理し始める。

(この服装、この宿の人か。腹辺りから血が出てるな。だが、この血の量は…)

テックはその瞬間、戸の陰に隠れた。

すると、

シュッという音と共に何かが伸びてきて、先程いた場所の床に穴が空いた。

(あれは、タコ足?)

その伸びた何かを見て、テックはそう感じた。少し色が紫のようで、吸盤は小さく、数は多いが確かにタコ足だ。

(うねうねと色々な方へ動いている。もしかして俺の居場所を見つけられてないのか?)

と、そこで廊下の先の階段から男が降りてきた。

「ふぅー、いやー、飲んだ飲ん…」

男は初めは恍惚とした表情を浮かべていたが、

そのタコ足を見た途端、顔が驚愕の色に染まった。

「な、なんだそれ、おいあんた、大丈夫か?」

次の瞬間、タコ足がその男の方へ先端を向けた。

「は?おい、待っ…」

「馬鹿逃げろ!」

タコ足はそのまま恐ろしい速度で男へ近づき、

そのからだを貫いてしまった。

「が、はぁ…」男はそんな声を漏らして後ろに倒れてしまった。

「おっさん!」

テックが近寄ろうとした時、タコ足が恐ろしい速さで戻ってきた。

「やっべ?!」

テックは目の端で逃げられそうな場所をみつけ、足に力を入れた。

だが、

タコ足は、再び元の場所でうねうねし出しただけで、特に何もしてこない。

(何だ?襲ってこない?まあまあでかい声出しちまったが。)

いつまで待ってもタコ足は動かない。

(少しずつなら動けるか?中の女の人や、あのおっさんも心配だ。)

テックは、壁に背をつけ、タコ足を見ながら少しずつ男の方へ行った。

(おっさん大丈夫かな?)

そーっと男に触れてみる。

(ん?何だ?傷口から血が出てない?!こんな穴空いてんのにどうなってんだ?!)

テックはその男の空いた腹に試しに手を入れてみる。

(ん?なんだ?吸盤かこれ?)

男の傷には、上から下まで吸盤のようなものがついていた。その吸盤にさえぎられ、血が出て来てない。

(吸盤を取り付け、出血を抑えた?でもなんで…)

テックがそう考えながら振り向いた時、タコ足が部屋に戻ろうとしていた。

(だー、やべぇ、逃がすか!おっさん大丈夫だろうし。)

テックはさっきの部屋まで走った。

(あの女の人をどこかに連れていく気だ。まずい。)

テックは先程の部屋の前に立ち、部屋を見て見た。するとそこには

「さーて、仕事仕事。あ、お客様どうなさいましたか?」

そのようなことを呟きながら質問をしてきた、

先程の倒れていた女がいた。


「は?」

テックは思わず頭に疑問符を浮かべた。

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