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テック・クエスト  作者: 岡山
1/8

少年たちの始まり

ここは、ファー。

緑色の草原から、灼熱の砂漠、極寒の氷河。

普通の海から、水が全て酸の海、山を登る滝。

ただの人間から、半魔、獣人、龍人。

共存するはずのないもの達が、共存する大陸

それがファー

これは、そこで生まれ、育ち、生きる少年の話




足は震え、顔から汗が溢れ、彼の特徴的な灰色の髪の色素が更に薄まるような感覚を覚えながら、少年テックはそれでも体に力を入れ、自分が求めている存在が来るのを待っている。「来るか、来るか…来るならなるべく早くしてくれ。」

軽い苛立ちすら感じ始めた頃、とうとうそれは現れた。「来た!入れ入れ」テックは、それが自分の仕掛けた落とし穴に入るのを待つ。

すると、


ドスン!


という音ともにそいつは、一瞬で穴に落ちてった。

「いよっしゃー!かかったかかった。」

テックは、落とし穴まで近づき、中の様子を見た。

「うっしゃ、当たりだ。」

中にいたのは、頭の角から、足の爪まで、緑色の鹿だった。

「ふうー助かった。回復薬きれる前に見つけられてよかった。んじゃ早速。」

そう言うとテックは、鹿の角を、少しばかり貰い、穴から出してやった。

「びっくりさせて悪かったな、これでしばらくは、大丈夫だから、帰っていいぞ。」

そう言われた鹿は何故か留まり、こちらを見ている。

「な、なんだよ。帰っていいんだぞ。もしかして、なんか欲しいのか?今何も無いんだが。」

鹿は、後ろを向いた。

「あっ、察した。怒ってるんだな、いやー、ほんと悪かっ…」



ドゴーン



「ったくあの鹿、角くらいでケチケチすんなよ。切られてもすぐ治るくせに。」

テックは、おでこに残った爪痕を触りながら、友人である、獣人族のリュウに話した。ライオンのたてがみのようにピンと立った髪が特徴的な少年だ。

「いや、お前が悪いだろ、回復薬買う金無いからって、それで済ませるか?普通。」

「悪かったとは、思ってるけどよ。ただ俺は、嫌がらせに暴力で返した何にもならんだろってことをな…」

「はいはい、言い訳しない。それより、外早く行こうぜ。」

「へいへい」




テック達のいるこの世界について話そう。

まず、この街は、ファーの北側に位置するウォールという街だ。街の南側以外は全て岩の壁に囲まれているため、この名前が、ついた普通の街だ。目立って珍しいものも無ければ、有名な観光地もない、ただの街だ。

この大陸ファーでは、70年ほど前に最後の魔王が倒れ、それ以来、魔王と呼ばれるものも、

勇者と呼ばれるものもいなくなった。そして、20年ほど前、魔王の再誕は、この先絶対にないという結果が出され、剣士や武闘家、魔法使いなど、魔王のいた時代に活躍した職業の人間は、どこかの国の護衛に着いたり、学校の体育の授業などで護身術を教えたり、道場をもって技を残したり、人の役に立つ魔法を開発したりと、別の方法で皆の役に立っている。

しかし、冒険者や旅芸人、商人などの職業は、そのままの形で今も残り、人々の役に立っている。ちなみに、テックとリュウは、冒険者である。




「おりゃ」テックの短剣が、巨大な牛のような魔物に刺さる。

グェ、魔物はそんな声を上げ、気絶してしまった。

「よし、今日はこんぐらいにしとくか。」

あの後、外に出たテックはリュウと一旦別れ、

この草原でモンスターを気絶させては肉や角を貰い、気絶させては貰いという作業を繰り返していた。

テックは、ここら辺のモンスターとは、

戦いまくったため、弱点なども熟知していた。

テックは、巨大な牛の魔物から、少しばかり肉を貰い、満足感に浸りながら、呟いた。

「さて、リュウの方は、もう済んだかな?」

テックは、リュウの様子を見に行ってみた。


「とうちゃーく、さーて、リュウはどこだ?」

そこは、テックが作業をしていた場所とは、

異なり、荒野のような場所だった。

リュウはここで、サソリ型の魔物を倒して、そいつの素材を街で売るんだと言っていた。テックは、少し大きな岩を見つけて、周りを見た。


見渡してみると、リュウは、少し先の岩にもたれていた。

(あいつ、寝てんのか?ったく、自分の目的を忘れて寝ちまうとは、けしからんなー)

テックは、そう考えながら、近付いてみた。

「おい、リュウ、寝るのは家でにしろよ、お前最近何時まで…は?」

テックは、一瞬きょとんとしてしまった。そして、今度は、身体中から汗が出るのを感じた。

リュウが肩から脇腹まで大きく肉が裂け、血が出ていたのだ。

テックは慌てて声を上げる。

「な、何があった!?大丈夫か?!待、待ってろ、今、薬を…」 その時、リュウに当てていた手になにか着いた。


(な、なんだよ。)

それは明らかに人の血だった。


(うおっ。って何びびってんだリュウの血に決まってんだろ。

それより早く血を止めなきゃ。)


だが、テックはそこで疑問を抱いた。

(あれ、リュウは岩にもたれてるから、俺よりも低い位置にいる。なのに血は俺の上から降ってきた。ん?てことはこの血は?)


テックは嫌な予感を覚えながら、ゆっくり顔を上げた。そして、


「わあああああぁぁぁぁ!!!!!」

大声で叫んでしまった。


そこには、大量の人間や魔物の死体が「茨」のようなものに巻かれ、刺され、貫かれていた。

さっきまで見えなかったのに、何故か今は、見えている。


(なんだよこれ、一体何が…)


テックは意味がわからくなったが、「茨」を端から端まで見てるうちに気づいた。


「茨」の先に、変な模様が体についた犬のような奴がいたのだ。

最初、テックは他の死体同様、ツタに捕まってしまった犬かと思った。だが、違った。


その犬は「茨」の上を自由に行き来し、犬が

テックの方を見た時、周りにあった「茨」も一緒にこちらを向いたのだ。


(こいつ、魔物か?こんなやつはこの辺にいないはずだが、別の地方から来たとかか?)



そいつは、テックをじっと見つめている。そして、急に口を開き、

「お前、アイラという少女を知っているか?」話しかけてきた。

テックは意味がわからなくった。

有り得ない。犬は人間語は喋らない。

テックの中の「常識」ではそのはずだ。

その魔物は続ける。

「知っているのかと聞いている。答えろ。」

「し、知らねぇよ、誰だよそいつ。」

「…そうか、ふむ、そうか。」

次の瞬間、化け物の目が不自然に光った。

( …ん?なんか、やばい気がする。)

テックは、嫌な予感を覚え、身をかがめた。

すると、


シュッ

という音ともに、テックの頭上を、鋭利なものが飛んでいった。あのまま立っていれば切られていた。


(や、やっぱりか。)

テックの嫌な予感は、しっかり当たった。


「な、何すんだよ!?危うく死ぬところだったぞ!」

「殺そうとして何が悪い?お前はここにいる

死体達が、何かしら罪を犯したから、こうなったと思うのか?こいつらはお前と同じように「知らん」と言ったから殺したんだ。」

「ひっでぇな、俺既にお前、嫌いだ。」

「嫌いだからなんだ?これから死ぬ奴が何を

思おうが興味ないわ」



次の瞬間、また魔物の目が光った。

「やっべ!」


テックは慌ててリュウを背におぶって、走り出した。すると、


シュッ、シュッっという音が背中の方で何度もなった。

その度に、テック達の後ろに抉られたような爪痕が、いくつも残った。

あの魔物も岩の上をジャンプしてこっちに向かっている。その度に、そいつが着いた岩から

あの「茨」と大量の死体が生えてくる、よく見ると、死体の量やその顔は岩によって違う。

(こいつ、何人殺してきたんだ。)

テックは、かなり頭にきたが、前を向いて

全速力で走った。


その時、


ゴフッ


という音が、リュウの口から出た。

テックは驚き、足を止めた。


(しまった、全速力で走ってたから、傷口を何度も叩いちまってた。)

テックは、そう考えた途端、走りを遅くしようとしたが、魔物の攻撃で無理矢理全力にさせられてしまった。

(やべぇ、どうする?リュウは獣人だから、人間よりは体の中も外も硬いし、生命力もある。だが、いつまでもこれじゃ、本当に危ない。ていうか、俺も現在進行形でまぁまぁ危ない。)

(早く、どうにかしないと)

テックが頭を悩ませていると、少し先に小さな岩が見えた。

(そうだ、あそこに身を隠せば。)

後ろを見ると、犬とまぁまぁ距離を取れた。あの犬は、岩の上を跳んでいるだけなのであまり早くない。

テックは、その岩に滑り込むように入り、ポーチの中から、緊急用の医療セットを取りだした。

(あまり頼りたくはないが、仕方ない。)

テックはそう考えると、熱くなったコテを傷口につけて止血した


「ハァハァ、とりあえず血は止まったな。

リュウ大丈夫かな?」

「あ、あぁ何とか」

「リュウ!目が覚めたのか?」

「さっきから起きてたよ、何となく状況はわかってる。んで、早速だが。お前、なんで逃げてんだ?」

「は?な、何言ってんだよ。」

「何ってお前見たことない魔物とか見つけると、よく戦い挑むじゃん、あいつとは?」

「ば、バカ!戦うわけねえだろ、さっさと街に行かないと、俺らやべぇんだぞ!」

「街に?何言ってんだよ、街に着くまでにどんだけの距離あると思ってるんだ?お前だけならまだしも、俺もいるんだ、帰れるのかよ。ちゃんと考えろよ」

「考えたよ!あいつの技は、俺なら避けれるから、そのままお前抱えて走る。町に近づけば、誰かしらに会える確率は上がる。そいつらに助けてもらえばいい。それでいいだろ。」

「誰かに助けてもらえないかもしれない。誰かいたとしても、あいつを倒せるくらい強くないかもしれない。俺達を見捨てるかもしれない。あいつがまだ全然本気じゃなくて、街に連れてった途端に本気を出して街を壊すくらい強くなるかもしれない。欠点だらけじゃないか。」

「だーもう!うるせーな!血少なくなってんのになんでそんな頭回るんだよお前は!お前そんなに言うなら、俺の策以上にいいのあるんだろうな!」

「お前の策以上かはわからんがある、お前が戦えばいい。」

「だから、何でだよ!俺は戦わねぇって!」

「いいから聞け。俺の作戦はこうだ。まず、お前がアイツとやり合う、俺は戦えないからお前一人でだ。お前1人であいつに勝つ。終わり。」

「作戦かそれ?!まずの後に終わりが来るの初めて見たぞ!てか、それなら俺のと同じくらい悪い方の「もしも」考えられるだろ!」

「だから、言った。以上かは分からないと。どの道俺らは自分たちの力で全てを解決するのは無理になった、どんな方法でもな。だから、俺はお前に任せる。どんな方法がいいか、選んでくれ。どの方法でも動くのはお前だからな」

「はぁ?俺一人にそんなきつい事決めさせんのか?せめてお前も…」

そこでテックの声は止まった。

リュウが目を閉じ、頭を下げていたのだ。

「頼む」

リュウは静かにそう言った。

「はぁ、わかったよ。何言っても文句言うなよ。」

テックは無言になり、考えた。

(どうする?正解なんかない、後は全部俺の判断だ。残りの体力、アイテムの残量、全部思い出して考えろ。)

ほんの数秒のはずが、何十分にも感じられた。

そして、いよいよ結論を出した。


「やってやるよ。よくよく考えれば、俺ら何もしてねぇのにこんなダメージ負わせて、すげーイライラさせること言うやつから、なんで俺らが逃げなきゃなんねぇんだ。ムカつく、やってやる。」

「そうこなくっちゃな。」



その時、岩から「茨」が生えできた。

「テック、ほら向こうから来てくれたぞ」

「あぁ、変な所だけ気遣いしっかり出来てる。そういう所もムカつく」


「何の話をしているんだ?何かは知らんが、

まぁ、終わりだな」犬は、

岩の上から、話しかけてきた。


「そりゃ、こっちのセリフだアホ犬、初対面で失礼しまくったり、死体見せつけてドヤ顔してる奴が、何を偉っそうにしてんだ」



「頭きた、ぶった切ってやる、このアホ犬」

テックは腰から短剣を抜き、犬と対峙した。




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