第25話 勃発、ラップバトル!
衝撃の真実が明かされたあげく、ある意味フケてると言われた私は目の前が真っ暗になり、ベッドに寝込んでいた。
二人は街に他のアイドル勢力がどうなっているのか偵察に向かった。
しかしまさかフィーネが私より年上だったとは。
だけどさ、しょうがない。
どうしようもない。
あんなの分かりようもない。
あ、そうそう私たちの共通点が分かった。
全員【スカイウォーオンライン】を遊んでいた。
だけれど二人は所謂エンジョイ勢、ガチ勢の私ほどはやってないようだ。
だからこそ私のアバターを知らなかったのか。
そして私たちそれぞれのチートは【私、肉体】【フィーネ、黒壇死告槌】【祀、心眼】というわけか。
しかし祀の心眼は心強い。
相手の手の内が丸分りというアドバンテージは大きいからね。
この世界が終わったら恐らく次は普通に戦う世界だろうし、祀の能力は凄く活きてくると思う。
まあ心が読めても体がついてこれなければ意味がないんだけれどもね。
そんなことを考えながらぼーとしていると、扉が急に開けられる。
一体何なんだ? 不思議に思い体を上げれば二人だ。
「なに? 何かあった」
「フカ、大変だよ!」
「ラップブームが始まってるんだよ!」
「はい?」
まさかの出来事だ。
私たちがラップアイドルとして活動したせいか、空前絶後のラップブームがポッフンで発生していた。
私がライブが終わったあとにちょくちょくラップ教授をしていたのが原因かもしれない。
だってラップを愛してくれる人が増えると考えると嬉しくてつい。
「いや悪いとは言ってないからさ。それにこれのお陰でアイドル同士のラップバトルが見たいって話が上がってるんだよ!」
なんだって?
ラップバトルがなぜ?
というかやり方わかっているんだろうか。
ラップバトル、それはフリースタイルラップで互いを罵り合い、その中での揚げ足取り……つまりアンサーが面白かったり優れていた方に票を入れ、票が多いものが勝者になる戦い。
ラップが流行りだした今からフリースタイルを出来る人なんてそうそういないと思うけど……。
そんなことを思っていると、急に外からたのもーと声が聞こえた。
なんだと思い外を見ると、なんとアイドルグループの一つである【moon night】だ。
そこそこ上のアイドルで、多分私たちより上にいる。
そんなアイドルが何のよう?
不思議がりながら私たちは宿の外に出る。
すると向こうのリーダーのステラ・アイルが私を指差して言った。
「ラップという音楽で勝負よ !最近流行ってるみたいだけど、王道アイドルに勝てないこと教えてあげるわ!」
と、突然勝負を吹っ掛けてきた。
私たちが最近目立ってきたのが気に入らないんだろうね。
だから私たちの土台で潰そうとしてると。
別にいいけど、ラップバトルは普通にラップするより当たり前だけど大変だよ?
出来るのかな……それだけが不安であった。
取り敢えずめんどくさいけど、ここで逃げるのもあれだし、野次馬も集まってきてるし。
仕方ないから相手してあげるか。
私はマイクを片手に前に出た。
「で、相手はリーダーさんでいいの?」
「勿論よ! リーダー対決と行こうじゃない!」
「じゃあマイク持ってる? スピーカは私が持ってるからここで出来るよ」
そう言うと流石にちょっと驚いたのか、マイクを取り出す。
てっきり場所を移してやるものかと思ってたらしい。
だって移すまでもなさそうだ。
失礼だけど、私の相手になれるとは思えない。
それにそう簡単にラップを使いこなせるものじゃないって言うのは、経験上わかってるしね。
「それじゃあ先攻はあげるよ、どうぞ?」
「舐めてくれるわね、行くわよ」
そう言うと私はビートを流しつつ、聴きの体勢に入った。
見上げるような長身女子
一撃で倒す武器なら所持
私はステラ、いずれトップアイドルになる女
全てのアイドルの女王さ
クールぶってるの丸分り
内心既にビビりまくり
大きいだけの唐変木
私の前でむなしく敗北
ふむふむ、歌う分には問題ないかな?
あんまり響いてこないディスだなぁ。
なら大人げないけど、全力でやらせてもらおうかな。
なめられるのも嫌だしね。
マイクをしっかり握り、歌い始める。
一撃撃破、わあ素敵だ
出来るわけがない話だ
私がトップアイドルの座を奪い取る
貴女は適当に作られたオードブル
つまり安っぽい踏み台、すぐにDie、さっさと次にいきたい
貴女は負けるしかない
こんな雑魚は速く潰してさっさと眠りたい
こんなものかな、さてどんな反撃が来るか。
少し期待しながらまた聴きに入る。
窮鼠猫を噛む、東洋の言葉
この状況と同様のことさ
雑魚と一緒にしないで欲しいわ
ファンからの声援で湧くこの気持ちは
油断してる貴女を倒す武器になるわ
どんな剣よりも鋭い言葉で
魔王みたいな貴女を倒して
英雄として凱旋するのよ、そう今すぐによ
んーディスがほしいな。
慣れすぎかな、私が。
ディスよりも自分が凄いということしか伝えてこない。
それもいいけれど、ならこういう返しで仕留めてあげようか。
魔王、誉め言葉ありがとう
だけどディスが足りない
相手をほとんど貶していない
それじゃあ強さが伝わってこない
ところで忠告、パットがずれてる
ファンに偽乳既にばれてる
騙した結果、恥を晒してる
偽らない私を真似てみる?
「ちょ、はっ?! 貴女何てことを!!」
急いで自分の胸を確認するステラ。
やっぱり本当にパットだったんだ。
いや、彼女の回りを調べてるとパット使用の話が出ててね。
しかもファンから出るもんだから、ほぼ確定かなと思って。
ラップバトルで相手を罵るには相手を知る必要があるしね。
まあ今回は偶然知っただけなんだけど。
なんにしても、おなじ貧乳として大きくしたいという気持ちはわかるけど、パットするとバレると恥ずかしいよ?
ありのままでいいじゃないか。
それに野次馬からもパットでも好きだよって声が上がってるし、まあいいじゃない。
「良くないわよ!! くぅぅ!! 覚えてなさい!!」
そんな良くある言葉を残して彼女たちは去っていった。
しっかりとリーダーバトルというのは守ってくれるんだね。
敵討ちに来ると思ってたよ。
まあ面倒だからないならいいけど。
「……フィーネ、腐華には絶対口喧嘩はしないでおこう?」
「ですね……」
そんな声が聞こえた気がしたが、特に気にすることなく、私は宿に戻るのであった。