第24話 親睦会と衝撃の真実
私たちがアイドル【DRAGON SOUL】として活動し始めてからかなりたった。
流石にそう簡単にトップアイドルへの挑戦権を手に入れられることなんてない。
それでも下手なアイドルよりも人気を手にいれて、可愛さに媚びないアイドルとして評価されていた。
それなりに媚びてるつもりだったのだが、恐らく私がいつも男装やかっこよさを重視した衣装を着ているせいかもしれない。
だってどうあがいてもこの長身には可愛い系は向かないのだ。
それに自分で言うのもあれだが、私は美形の顔だ。
お姉さんとかそういう系。
私が生まれる前にあったと言う女子だけの劇団、高塚なら間違いなく男役として選ばれるタイプだ。
だからこそ男女関係なく私の人気はかなりあった。
男子はフィーネ、女子は祀が人気一番だから私はどっちもどっちという感じだが。
特にフィーネの人気は、可愛らしさもあってか凄まじい。
もう親衛隊ができていたりする。
たしかフィーネちゃんを守り隊だったか?
それに対して私なんて鎖お姉さまに踏まれ隊とか、守られ隊だよ?
なんか泣けてくるね。
そういう意味ではまだ親衛隊ができていない祀が心配だ。
無論変なものができるかもしれないという意味で。
そんなことを考えながら祀とゲームをしていた。
今日は活動する予定はなく、祀との友好を強めようと考えたものだ。
思えば祀はフィーネほどまだ付き合いがない。
絡みやすく友達として一緒にいやすい雰囲気を放ってる祀だけど、こういう親睦は深めておいて損はないと思ったんだ。
というわけでアズラエルには黙って持ってきた格闘ゲームを対戦していた。
勿論祀はチートの心眼を使わないことを約束してる。
それされたら勝てないからね。
「食らえライジングアッパー!」
「昇竜見てから小足余裕、はい運送するよ」
「ちょっ、あんた、待って!?」
逆に言えばチートなしなら、生粋のヘヴィゲーマーの私がそうそう負けるわけない。
フィーネがぱちぱちと手を叩き歓声を上げてくれる。
それに私はVサインで答える。
「くぅー本当に強いね腐華、ゲーマー歴何年よ?」
「ラップより長いよ。物心ついた頃からやってるから、大体5歳だと仮定して12年か」
本当に、気がついたらゲームに没頭していたんだよね。
最も幸せな記憶として私に焼き付いているから、忘れるわけなんてないしね。
「へぇ、そう考えると腐華は17歳なんだ。アタシより一つ上なんだね」
「ん? というと祀は16?」
「そうそう! ちなみに死因はベタなトラックだよ」
自分の死因をそんな嬉々として語るものじゃないと思うけど。
ん? 何故かフィーネの顔が青い。
気分でも悪いのだろうか。
祀は気付いてないのか、そんなフィーネにこんな質問をした。
「そう言えばフィーネって幾つ? まあアタシらよりは年下だろうけど!」
ケラケラと笑いながら聞く。
何だかんだ私も気になってた質問だ。
けれどフィーネの青い顔が気になる、大丈夫なんだろうか。
祀の質問を聞いて、フィーネは口を数回パクパクさせたのちに、俯きながら答えた。
「……歳です」
「ん? ゴメン聞こえなかったからもう一回」
「……その、2、29です……」
……ん? 何だって?
私、耳がおかしくなったのかな?
今明らかに変な数字が聞こえた気がした。
聞き間違いだろう。
だってこんな低身長で、保護欲がわくような見た目で、幼い言動で。
え? え? え?
「もう一回言って?」
「2、29歳独身の社畜です!!」
その言葉に、私と祀の顔が笑顔で固まった気がした。
「「うぇえええええええええええええええ!?!???」」
「え、マジで? え? えぇ?!」
祀の動揺は良く分かった、私も今凄く動揺している。
フィーネが29? え、このこれで?! あの言動で?!
困惑を隠せない。
誰だってそうだろう、年下だと思ってた可愛い幼女のような子が自分より年上だと知ったらこうなるだろう。
「えっと、私小さい頃からずっとこんな感じで……それでキモいって良く言われてて……マツリさんはともかくフカは本気で年上だと思ってたですけど」
フィーネも年齢暴露に動揺していたようだ。
だから顔が青かったのか。
「うぅ、成人としての威厳が……」
「いや、それより私は幾つに見えたのフィーネ……さん?」
「フィーネでいいです……えっと、30代後半」
……その言葉はどんな鋭い刃物よりも、私の心をスパリと切り裂いた。
しばらくの間、私は体育館座りで部屋の隅っこで絶望していたという。
いやさ、望んで得た体だけどさ、30代後半はないよ。
その後、へこんだ私を励ますため、皆色々したらしいか良く覚えてない。
年齢話はデリケートだから止めよう、それを私は教訓にした。