第20話 新しい仲間、祀六花
リミックスダンジョンの一番人の集まってる国の首都ポッフンに、早速フィーネと私は訪れていた。
街は日も落ちて空は星一杯なのに、どんぱち賑やかだ。
ランプ式の街頭が光輝き、人々が楽しく踊っている。
よくみれば亜人のような人たちもいるね。
ここからでも歌声が聞こえてくる。
町並みはいかにもファンタジーな感じなだけ少し異様な光景だ。
祭りかなにかと思うけど、この世界の説明を聞いた限りだと何時もこうなんだろうね。
さて沢城雪菜を探さないと。
多分歌の聞こえる方に何かしらいるはずだ。
私たちは歌の聞こえる方へ歩みを進めた。
たどり着くとそこにはドでかい木で作られたステージがあった。
その上には、明らか世界観が違っているアイドル染みた服装の女子が歌い踊っていた。
恐らくあれだろう。
インヴェクションはギリギリまで出さない。
いきなり武器を持った人がステージに現れたらパニックだろうからね。
しかしあっさり見つかったな。
これは早く帰れそうだ……そんなことを思っていると、目の前に一人の女性が現れた。
白い髪に褐色の肌、身長は162センチほどかな。
活発ですと言いたげに元気でイタズラ子のような笑顔で立ちふさがった。
「いきなり王手とはいかないよ鎖さん」
名乗ってないのに私の名前を当てる謎の女性。
なぜ名前をと聞こうとすると、路地裏に来いと言わんばかりに指でクイクイとしながら進んでいく。
仕方なくついていき、誰もいない路地裏にフィーネと二人では入る。
誰もいないことを再三確認して、そこでようやく謎の女性は立ち止まった。
「申し遅れたね、アタシは【祀六花】先に潜入していたお二人の仲間、と言ったところかな?」
そういって、名刺のようなものを差し出してくる。
確かにそこには祀六花と書かれていたし、上には保証人アズラエルともあった。
アズラエルの名前が出てきて少し安心するけど、アズラエル……先客がいるなら説明してほしかったな。
「それで、王手できない理由ってなんですか?」
フィーネが私の感じた疑問を聞いてくれる。
それを待ってたかのように祀は話し出す。
当然だけどステージ周辺には腕のある警備がいるし、会場で仕留めようものならパニックは確定。
あげく犯罪者として見られると。
沢城雪菜はこの世界の伝説的アイドルだから、まあ当然殺せばそれくらいはするだろうね。
でも仕留めたらこの世界から離れるし、関係無い感じするけど。
「それがこの世界の住民は異世界があることを認知していてね、一部の他世界とも繋がりがあるんだ。それで犯罪者と見られたら、仮にこの世界と繋がりのある世界で他の転生者を仕留めなければならなくなったときすごい動きづらいでしょ?」
……表情に感情がでないことには自信があったんだけど、そんな私の心を見透かしたように、祀は話してきた。
「ふふーん、アタシのチートは心眼。大まかだけど人の心が読めるんだよね!」
自慢げに説明する祀。
なるほどそれでか。
それじゃあ私しゃべらなくてもいいよね?
読み取ってくれるなら。
「いや大まからだから察するまでが限界だから。流石にずっと黙られると辛いかな」
あぁ、そうかい。
流石に神と同等レベルじゃないのか。
少しだけ残念に思いつつ、次の説明を教えてくれと考えてみる。
これだけ明確に考えれば伝わるはず。
「……あの、話すの放棄しないでくれます?能力使うと若干疲れるデメリットもあるから話して、お願い」
切実な感じでお願いしてくる。
チートなのにそんなデメリットもあるのか。
それは果たしてチートと呼べるのだろうか?
いやゲームでもチートしたらBANされたり、ゲームが壊れるデメリットがあるし、デメリットのないチートはないのが普通か。
そう考えたら私やフィーネにもデメリットあるのか。
私の場合解毒薬で攻撃をほぼ無力化できるし、フィーネだったら紙体力になるし。
まあそんなことはどうでもいいんだ。
で、沢城雪菜を仕留めるにはどうしたらいいのか教えてもらわないと。
「というわけで教えて」
「話し聞いてた? ……もういいや。はいはいわかりましたよっと」
若干諦めた様子で祀は話し出した。
用は犯罪者に見られなければいいということ。
化けなきゃ犯罪じゃないという名言があるように、暗殺ならいけるらしい。
暗殺、対象を物理的もしくは社会的に抹殺すること。
今回は神の依頼である以上物理的であることは必須。
それにチートが洗脳系であることから、社会的に殺しても復活してくる可能性もある。
しかし暗殺しようにもプライベートが謎に包まれている沢城雪菜を見つけ出すのは困難。
ステージで奴を迎え撃つしかないということ。
しかしステージには同じアイドルしか乗ることができない。
この辺りで予想ができていたけど、そういうことらしい。
アイドルになれと言うことだろう。
アイドルになってステージで奴と歌で戦い勝つことで、奴の地位をまず奪う。
その後ステージから去っていく奴を追い、人目のつかない場所で始末する。
そんな流れらしい。
「別にアイドルとして勝つ必要はないけどね。問題は奴と戦うことができるほどのアイドルになる必要があることだけど」
今祀が言った通りだ。
そもそもアイドルの経験もない私たちがトップアイドルと並べる実力を得られるのかと言うことだ。
「残念ながら地道にやってくしかないね」
まあそうだろうね。
面倒だなぁ、そんなことを思っているとふと視線に写るフィーネの顔。
すっごいキラキラしてる。
「私、アイドルって昔憧れてたんです。沢山の人から支えられて、一人とは皆無で、それでいて誰かを支えることができる。それって素敵だなって」
そう語るフィーネは嬉しそうだった。
目的は違えど今回アイドルになれることが嬉しいのだろうか。
しかし一人とは皆無?
フィーネは一人に悪い思い出があるのだろうか?
そんなことを思いつつ、とりあえずの方針は固まった。
私たちはまずトップアイドルの沢城雪菜に並ぶアイドルになることを決めるのであった。