第19話 次の世界、その名もリミックスダンジョン
フィーネにラップを教え続けて数週間たった。
かなりぎこちなかった最初の頃に比べて、フロウやライムがしっかりしてきている。
教えることには自信はなかったけど、フィーネの覚えがいいから安心できる。
もうそろそろ私とフリースタイルで殴りあってみようと考えられるほどだ。
うかうかしてると抜かれるかもね。
まあ流石に年単位で経験の差があるから、そうそう抜かれるわけないとは思ってるけどさ。
自分への戒めとして、そう思わなきゃ。
そうして今日もフィーネにラップを教えようと、彼女と一緒に甲板に上がった。
すると彼は居たのだ。
「エンジョイしてますね。鎖腐華様、フィーネ様」
アズラエル、秘書や依頼報告をしてくれる神の使い。
ハリボテのような羽が相変わらず気になる。
「まあね、依頼やっときた?」
「はい。非常にお待たせして申し訳ありませんでした」
そう申し訳なさそうに話すアズラエル。
いやいや依頼が遅かったのは神のせいでアズラエルのせいではないから、謝るのはアズラエルじゃないと思うけど。
そう言ってもアズラエルは謝るだろうから言わないけど。
「それはさておいて、依頼は?」
「そうでした、それではお話しします」
そう言ってアズラエルは説明を始めた。
次向かう世界は音楽が力になる世界【リミックスダンジョン】というらしい。
そこの頂点にいるアイドル【沢城雪菜】が今回のターゲット。
ファンを洗脳で獲得し、逆らうものを力や金でねじ伏せて来たらしく、このままでは音楽の多様性が消えてしまうという。
それはリミックスダンジョンの破滅を表し、沢城雪菜は世界を緩やかに滅ぼそうとしているらしい。
だったら殺す前に説明すればいいじゃないか、このままだと世界が滅ぶと。
私はそんな意見をしたが、どうやらすでに当人の神が説明したらしい。
そんなの関係ないが返答。
世界が滅んでも構わない、今の地位と名声を失いたくないと言うことらしい。
気持ちはわからなくもない。
私もゲームか世界かといわれたらゲームを選択するし、そのせいで見知らぬ人が何人死のうが知ったことじゃないし。
で、もう殺すしかないとなったわけか。
好き勝手しろといったのは神なのに世界が危なくなったら排除か。
人のこと言えないけど勝手すぎない?
まあいいかどうでも。
私ののんびりゲームライフが懸かっているんだ、悪いがやらせて貰おう。
顔も早速見せてもらい、スクショをとって保存する。
さてこれで顔は大丈夫。
後はリミックスダンジョンの通過をある程度もらって、後は出発の準備をするだけだ。
「さあいこうフィーネ」
「うん、フカ!」
互いに頷き、私は操舵室へ向かった。
そうして操舵室で向かう世界の座標を入力、エンジンをスタートさせた。
コールドWARが起動し、向かう先はリミックスダンジョン。
待ち受けるのはアイドル女王。
少しの期待と気だるさを胸に、私たちは新たな世界へと向かった。